守る場所
指名変更
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土井side
朝の廊下には、まだ少しひんやりとした空気が残っていた。
資料を手に教員室へ戻る途中、角を曲がったところで――
咲の姿が見えた。
(……ああ)
声をかけるべきか迷う間もなく、目が合った。
「……おはようございます」
自然な声のつもりだった。
けれど――
「っ……おはようございますっ」
返ってきた声には、どこか張りつめたような気配があった。
視線を逸らす仕草。浅くなる呼吸。
(……え?)
すれ違いざま、彼女の背中が、わずかにぎこちなく揺れる。
それは、意識していなければ気づかないほどの変化――けれど、確かに感じ取ってしまった。
(咲先生……?)
その場で足を止める。
振り返ることはしなかった。
ただ、静かに考える。
いつもなら――もっと自然に挨拶を交わしていたはずだ。
軽く笑って返してくれたり、昨日の授業のことをぽつりと話してくれたり。
それが、今日は――
(……緊張していた?)
私に、だろうか。
それとも何か他の理由か。
歩き出しながらも、心のどこかが落ち着かなかった。
ほんの数日前、夜に長屋で話したあの時間。
「好きって、どういうことなんでしょうか」と問いかけられた、あのときの声の震え。
そして、「土井先生にしか相談できなくて」と、少し照れたように笑った表情――
(……まさか)
あり得ない。そう思う。
けれど、あのときの言葉が記憶のどこかに引っかかっている。
彼女が今日、私を避けたように見えたのが、もし……と考えかけて、かぶりを振った。
(……何を期待しているんだ、私は)
それでも――
彼女の声が、ほんの少し揺れたこと。
そのことが、なぜか嫌ではなかった。
そして、そんな自分がいることを、静かに受け止めるしかなかった。