守る場所
指名変更
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「土井先生、ありがとうございます」
そう声をかけたあと、彼は一瞬だけ、こちらを見た気がした。
けれど――何も言わず、小さく頷くだけで、そのまま背を向けていった。
(……あれ?)
ほんのわずか。
胸の奥に、引っかかるような感覚が残った。
言葉にできるほど明確ではない。
ただ確かに、いつもの彼の背中が、今日は少し遠くに感じられた。
「咲さん?」
「……あ、ごめん。少し考え事をしてて」
「疲れてるなら、食事……一緒にどうですか?
ちょうど今日、しんべヱくんが“いなり寿司の日”だって張り切ってたので」
「そうなの? でも……ごめん。もう少しだけ、やっておきたい仕事があって」
「……そうですか。無理はしないでくださいね」
「ありがとう。利吉も、ちゃんと食べて帰ってね」
笑顔でそう返しながらも、心のどこかではまだ、土井の背中を引きずっていた。
(……怒ってたわけじゃない。でも…)
声も、歩き方も、いつもと同じはずなのに、どこか少し違っていた。
“距離”があった。
彼の静けさの奥にいつも感じていた“温度”が、今日は不意に遠のいていた。
「私……何か、変なこと言ったかな……」
小さく漏らしたその声に、隣を歩いていた利吉がふと、驚いたようにこちらを見た。
「……いま、なにか?」
「ううん、なんでもないよ」
そう答えて、歩き出す。
その瞬間、初夏の風がひとつ、咲の髪をやわらかくかすめていった。
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自室に戻り、帳簿に目を通しながら、咲は同じ行を何度も読み返していた。
(……気にしすぎかな)
けれど、胸の奥に残ったさざ波は、どうしても静まってくれなかった。