守る場所
指名変更
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夕陽が校舎の影を長く伸ばし始めた頃、私は職員室へ向かって廊下を歩いていた。
夕方の学園には、昼間の喧騒とは異なる穏やかさがある。
風が足元をすり抜け、ほんの少しだけ、肩の力が抜けたそのとき――
「咲先生ーっ!!」
背後から、弾むような声が飛び込んできた。
振り返ると、乱太郎、きり丸、しんべヱの三人が笑顔で駆けてくるのが見えた。
「どうしたの? そんなに急いで……」
「テスト、返ってきました! 僕、20点も取れました!」
乱太郎が両手で「2」と「0」を作って、得意げに見せてくる。
「オレも!」「僕もちゃんと書けたよ!」
きり丸としんべヱも口々に報告し、どこか誇らしげに胸を張る。
「……それは、すごいじゃない。よく頑張ったわね」
思わず、笑みがこぼれた。
心の底から、嬉しかった。
「先生が教えてくれたおかげです!」
「うん! “勘で選んじゃダメ”って言ってたの、ちゃんと思い出したよ!」
「ぼく、寝ないで最後まで書いたもん!」
三人の言葉に、なんだかくすぐったいような気持ちになる。
私はそっと首を横に振った。
「違うわ。それは、自分たちが頑張ったから。私じゃない」
「えへへ……でも、嬉しいですっ」
その素直な笑顔に、胸の奥がふわりと揺れた。
(……みんな、本当に頑張ったんだな)
点数だけを見れば、決して高得点とは言えない。
けれどそれは、彼らにとって“本気で取り組んだ証”だったのだ。
思い返すのは、あの放課後の教室。
笑い合いながらも、真剣な眼差しで問題に向かっていた姿。
彼らは今、自分の背丈で、精一杯に“何かを掴もう”としている。
(……私も)
心のどこかが静かにざわめく。
(私も……もう逃げてばかりじゃいられないかもしれない)
誰かに教えるということ、誰かに関わるということ。
そして――“伝える”ということ。
目の前の子どもたちが、勇気を出して前に進もうとしている姿を見て、
私は胸の奥に、小さな決意の種のようなものを感じていた。
「私も……もう少しだけ、前に出てみよう」
そう、そっと呟いたそのとき。
ふと、遠く廊下の陰から、誰かの視線を感じた。
そっと目を向けると、そこには土井先生の姿があった。
私は胸の奥で、ひとつだけ、静かに息を整える。
大きく変わることはできないかもしれない。
それでも――この子たちが教えてくれた。
“できないなりに、やってみること”。
それが、きっと最初の一歩なのだと。