守る場所
指名変更
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朝の光が差し込むくノ一教室。
いつもと変わらぬ時間に始業の鐘が鳴っても、今日はどこか空気が固かった。
咲が教室に入ってきたとき、生徒たちは静かに席に着いていた。
ざわめきも、いつもの小さな笑い声も、どこか影をひそめている。
(昨日のこと……やっぱり引きずってる)
彼女達の小さな身体についている傷を見て、咲は胸の奥がぎゅっと痛んだ。
生徒たちの前に立ち、静かに口を開く。
「……授業の前に1つだけ。」
黒板の前に立つ咲に、全員の視線が向いた。
戸惑い、不安、わずかな緊張。それらが小さな瞳の奥に揺れている。
「昨日の実習中、思いがけないことが起きました。怖い思いをさせてしまって……本当に、ごめんなさい」
そう言って、咲はゆっくりと頭を下げた。
その沈黙は、たった数秒のことだったのに、何倍にも長く感じられた。
「……せんせー!」
最初に声を上げたのは、ユキだった。
「謝らないでよ!先生、わたしたちを守ってくれたじゃん!」
「そうです!先生が戦ってくれたから、わたしたち無事なんです!」
続いてトモミ、おシゲ、ソウコ、トモミ……次々に声が上がる。
「怖かったけど……先生の背中、すっごく頼もしかったです」
「先生が守ってくれてるって思ったら、ちゃんと逃げられました!」
「うん、先生が一番かっこよかった!」
突然の言葉の嵐に、咲はぽかんとした。
その瞬間――不意に、ひなの笑顔が心に浮かぶ。
(……ひな)
手を引いて、森を駆けた日。振り返った自分を見て、無邪気に笑ってくれたあの子。
(あの時も、私は守ろうとした。でも……間に合わなかった)
けれど今――
(今度は……間に合った)
咲はそっと目を伏せ、唇を噛みしめた。
教室に、ふわりと温かい空気が流れた。
ユキが照れ隠しのように笑い、おシゲが微笑んでこちらを見ている。
「……今日の授業、ちょっとだけ頑張ってみようかなって……思えたんです」
誰かがぽつりと言った。
「私も……!」
「わたしも!」
くノ一たちの声が、教室中に広がっていく。
咲はその中心で、目を細める。
(怖い思いをさせたはずなのに……)
心のどこかで、「私は教師に向いていない」と思っていた。
あの過去があるから、刃を振るったことがあるから、子どもたちに近づく資格なんてないと。
けれど、彼女たちはそんな咲のすべてを否定しなかった。
恐怖も、黙って立ち向かった姿も――まるごと見て、それでも前を向いてくれている。
「……ありがとう。本当に……ありがとう」
震える声でそう呟いたときだった。
「……今度は――」
ひときわ小さな声がした。
見ると、最後列でおずおずと立ち上がったのは、控えめな性格のソウコだった。
「次、変な忍びが来たら……私も、先生を守るから……」
「えっ……?」
咲が思わず聞き返すと、ソウコは赤くなった顔を隠すようにうつむいた。
「先生ばっかりじゃなくて私達も頑張るから……」
「そうそう!先生もちゃんと頼ってくださいね!」
今度はトモミが声を上げる。
「私たち、まだ半人前だけど……先生のこと守るから!」
「うん、ぜったい守るもん!」
ユキも笑ってそう言い、おシゲはこくこくと真剣に頷いていた。
咲はその場に立ち尽くしたまま、何も言えなかった。
私が守る立場なのに……
それでも、彼女たちは、私を“守りたい”って思ってくれた
……どうしてだろう。こんなに、胸があたたかいのに、少しだけ……苦しい
私は……また、大切なものを持ってしまった
それでも、もう逃げたくはなかった。
彼女たちがくれた信頼と笑顔を、今度こそ守り抜きたいと思った。
「……頼りにしてるわ」
咲がそう言うと、生徒たちの顔がぱっと明るくなった。
「じゃあ、授業始めるわよ。」
教室には、ようやく“春の気配”のような、柔らかな笑い声が戻ってきていた。
それと同時に、昨日、教員たちの目に宿っていた色が、まだ咲のなかに燻っていた。