守る場所
指名変更
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職員室には、すでに数名の教師が集まっていた。報告を聞いた途端、室内の空気がぴりつく。
「……襲撃? それも、実習中に?」
厚着の低い声が室内に響く。
「乱入してきた者の所属や目的は?」
「不明です。ただ……狙いは私だったと思われます」
その答えに、ざわめきが起きる。
「狙われるような理由があるのかね、君には?」
そう問うたのは、安藤だった。
その言い方には、明らかに“探る”意図が滲んでいた。
咲は、沈黙のまま視線を伏せた。
伝蔵は腕を組み、無言で彼女を見つめている。
「……つまり……その……敵は、追いきれなかった……ということで……よろしいのでしょうか……」
弱々しい声が沈んだ空気を割る。
斜堂影麿だった。
やや伏し目がちに、手元の帳面をなぞりながら、遠回しに問いかけるような口調。
「はい。敵の目的が不明であったため、追おうとした私を土井先生が止めてくれました。」
咲の返答は簡潔だった。だがその背筋は、ぴんと張り詰めていた。
「はい。私の判断です」
隣に立つ土井がはっきりと口を添える。
「生徒を最優先に」と言外に込めた意志が、その声に滲んでいた。
「……そうですか……しかし……ええと……それで本当に……よかったのでしょうか……」
斜堂の湿ったような声は、否定とは違う。だが、信頼があるとも言い難かった。
「今回、軽傷で済んだのは……結果に過ぎない。
戦うべき場所と、子どもを守る場所とをきちんと区別できているのか?」
そう口を開いたのは、厚着太逸だった。
腕を組み、険しい顔で咲を見据える。
「……はい。深く反省しております」
咲はすぐに頭を下げた。反論はない。
(すべて事実だ。私が招いたこと……)
だが、そこで静かな声が割り込んだ。
「厚着先生、斜堂先生。
少なくとも咲先生の判断が、生徒を守ったことは間違いありません」
口を開いたのは土井だった。
その声には重みがあり、場の空気を一度で変える力があった。
「私も同意です」
今度は、山本シナがすっと言葉を重ねる。
咲に向けられた視線には、明確な信頼があった。
「今回の対応は、教員として、私が見ても的確でした。子どもたちの怪我が最小限で済んだのは、咲先生の行動が冷静だったからこそです」
その柔らかくも毅然とした声に、咲は胸が詰まりそうになった。
「……ありがとうございます」
心からそう口にするしかなかった。
だが、その瞬間にも、斜堂は再びぽつりと呟く。
「……とはいえ……生徒たちは……怯えていたようにも……見受けられましたが……」
「それは……」
咲の言葉を遮り、土井が続ける。
「それでも、失われた命はひとつもなかった。
咲先生がそこにいたからこそ、守れた現実があります。それ以上、何を責められるんでしょうか」
静かながらも揺るぎない声に、場の空気が再び引き締まった。
斜堂は目を伏せ、しばらく何も言わなかった。
咲は、その言葉にすら救われる思いだった。たとえ疑われても、完全に拒まれたわけではない――それだけで、ほんの少しだけ呼吸がしやすくなった気がした。