守る場所
指名変更
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朝の訓練所に、軽い緊張と高揚が混ざった空気が漂っていた。
「それじゃあ今日は、体術の基本――“間合いの詰め方”をやるわ」
そう告げる咲の声に、くノ一教室の生徒たちが一斉に背筋を伸ばす。
彼女の言葉は静かだが、どこか鋭くて、冗談が通じない空気を纏っていた。
(……まだ、少し怖がられてるか)
そんな空気を感じながら、咲は一本の苦無を手に取ると、訓練所の端にある木へと正確に投げた。
「お手本を見せるわ。利吉、お願い」
名前を呼ばれたその瞬間、訓練所の空気がぱっと弾けた。
「えっ、利吉さん!?」
「きゃー!来てたの!?」
「今日来るなんて聞いてないっ!」
小さな歓声と笑い声が飛び交い、くノ一たちの顔に一気に明るさが広がる。
利吉は訓練所の隅で静かに立っていたが、呼ばれると柔らかく頷きながら前へ出てくる。
「承知しました、咲先生」
「呼ばなくていい」
「はい、すみません」
そんなやり取りに、また生徒たちの笑いがこぼれた。
(……この空気。悪くない)
咲は軽く足を開いて構えた。
利吉も、それに倣う。
「武器はなしでいくわ。接触時の体重移動と、崩しのタイミングを見せるから、よく見てて」
そして、静かに始まる。
互いに間合いを計るように、ゆっくりと近づき、気配を読み合いながら、一歩ずつ詰める。
動き出したのは、ほんの一瞬の隙だった。
咲が踏み込んだ瞬間、利吉は体を傾け、受け止めるように流す。
次の瞬間には、咲の手が利吉の襟元を掴み、肩越しに投げようとする。
だが、利吉がうまく重心をずらし、着地と同時に反撃を試みる。
小柄な体と細い手足。
けれどそこには、鋭さと、鋼のような芯があった。
「……すご……」
「先生、こんなに動けたんだ……」
「二人とも本気でやってる……!」
少女たちは口を開いたまま、目を見張っていた。
やがて、組手が収束し、互いに距離をとる。
小さく頷き合うと、ふたりは静かに構えを解いた。
「……以上。今の動きを参考にしてもらうけど、いちばん大切なのは“目”。
相手の動き、気配、自分の動き。
すべてを見落とさないこと。分かった?」
「はーいっ!」
明るく返事が返る。
笑顔を浮かべたくなるような、まっすぐな声だった。
(……少しは近づけるかもしれない)
咲はそんな感覚を覚えていた。