守る場所
指名変更
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授業が終わり、生徒たちが騒がしく教室を出ていく中、土井半助は静かに片付けを始めていた。
チョークを黒板の溝に戻しながら、ふと後方に目をやると咲が教室から外を見て立っていた。
「咲さん」
土井の声に、咲は振り返る。
「……お疲れさまでした。見学……ありがとうございました」
「いや、こちらこそ。変わらず騒がしい連中で、驚かれたかもしれませんね」
咲は少しだけ微笑んだ。
「でも、不思議ですね。あんなに賑やかなのに、騒がしく感じなかったんです。むしろ……」
「むしろ?」
「……温かかった」
その言葉に、土井は少しだけ目を細める。
「……ああ、そう感じてもらえたなら、嬉しいです」
一拍の間があったあと、土井は静かに言葉を継いだ。
「さっきの“蛍火の術”……実は、あれを教えるのには少し迷いがあったんです」
「……どうしてですか?」
黒板に残る陣の図を見つめながら、土井は答える。
「この術は、相手に見つかることを前提とした行動を取ります。
……情報を運ぶ者が敵に囚われる。あるいは、自ら捕まる。それでも、口にするのは“偽りの言葉”。
……味方を守るために、自分の存在を“捨てる”術です」
その声は静かで、どこまでも深かった。
「私の知る限り、この術を使って戻ってこなかった仲間は、両手では足りません」
その言葉に、咲は思い出していた。
かつての部下。
偽情報を持たせ、あえて敵に見つかるよう仕向けた少年。
命を捨てる覚悟を持っていた少女。
彼女達は守るためだと信じていたのか。
けれどそのたび、咲の手の中から確かに“命”はこぼれていった。
「……この術で、たくさんの人が死にました」
咲の声はかすれていた。
「自分の命を“使われる”ために生まれてきたのかと、そんな顔で逝った子も……いた」
土井はその言葉に、そっと目を伏せた。
しばらくの間沈黙が流れる。土井が口を開く。
「……あなたも、重いものを抱えてきたんですね」
そして、少しの間を置いてから、こう続けた。
「“同じだ”なんて、軽々しく言えません。ただ……」
彼女が見せた、痛みの奥にあるもの。
それは、土井自身が心の奥にずっと抱えてきたものに、どこか似ていた。
「もし、あなたがこれから“人として教える側”に立つなら──その痛みは、決して無駄にはなりませんよ」
咲は何も答えなかった。
けれど、心の奥底で何かが、わずかに、静かに動いた気がした。