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指名変更
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「今日は、は組の授業を見に行くんだって?」
朝、廊下ですれ違った伝蔵が声をかけてきた。
「……はい。教室の空き時間に、見学をとのことでしたので」
「は組は騒がしい奴らだが、いい子たちだよ」
伝蔵は、ふっと目を細める。
「半助の授業を見るのも悪くない。まあ、何が起きるかは……覚悟しておくといい」
そう言って笑った伝蔵の口調に、冗談とも本気ともつかない響きがあった。
咲は一礼しながらも、小さく息を吐く。
⸻
廊下を歩く2つの足音が、次第に教室へと近づいていく。
「……花の匂いがする」
咲がふと立ち止まり、天井を見上げた。
「はは、やっぱり気づいてましたか。あれが“一年は組”の歓迎の仕方ですよ」
土井も目を細めて同じ方向を見る。
梁のあたりには、目立たないように吊られた小袋。
まるで風に舞うように、わずかに揺れていた。
(花びら、か。……誰が考えたかは知らないが)
“傷つける罠”ではない。
それが、ほんの少しだけ咲の中にある緊張を和らげた。
「行きましょう。……せっかくの歓迎ですし」
土井の言葉に、咲は小さく頷く。
扉に手をかけ、引き戸をそっと開けた瞬間――
「ぱっ!」
ふわり、と。
頭上から春風のように花びらが舞い降りた。
ピンク、白、淡い黄色。
色とりどりの小さな花びらが、咲の周囲をくるくると踊る。
そして次の瞬間。
「ようこそ、咲先生!!」
教室中から、一年は組の少年たちの元気な声が重なった。
「は組へ、歓迎いたしますっ!」
「これ、僕たちの“歓迎の儀式”なんです!」
「花びら、集めるの大変だったんすよ!」
「大成功!!」
どっと沸く教室に、土井が口元を押さえて笑う。
「いや、これは……見事だな」
咲はしばらく何も言えず、その場に立ち尽くした。
驚きではない。
警戒でも、動揺でもない。
ただ、ただ――その“まっすぐな歓迎”に、言葉を探していた。
(これは、罠ではない。心からの……)
ひとつだけ、花びらが咲の髪にとまる。
それを土井がそっと指で取った。
「……まったく。お前たちはどこまでも元気だな」
「それが一年は組ってやつです!」
乱太郎が胸を張って言い、後ろでしんべヱがにこにこしながら「ねー」と頷く。
「あぁ…せっかく…集めた花びらが…」
泣きながら床に落ちた花びらをかき集めるきり丸
咲はようやく、ほんのわずかに目を細めた。
それだけで、少年たちはまた一斉にざわめく。
「い、今……笑った?」
「見たか!?」
「ほ、ほほが動いた!」
それは、教室に咲いた春の一瞬。
けれど確かに――氷が少しだけ、音を立てて解けたような、そんな風景だった。