守る場所
指名変更
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放課後の教員室は、日中の喧騒が嘘のように静まり返っていた。
筆を走らせる音、紙を繰る音――
その一つひとつの小さな動作さえ、互いに探る“間”として慎重に扱われているように思えた。
咲は、窓際の机に座って報告書をまとめていた。
その姿に、誰も声をかけてはこないが……ときおり感じる視線が、それとなく彼女を測っている。
(……ここでも試されてる)
当たり前だと分かっていた。
けれど、だからといって慣れたわけでも、楽になったわけでもない。
「くノ一教室はどうだい?」
その硬さを和らげるように、老婆の姿の山本シナが、にこやかに声をかけた。
「初日は緊張していたようですが……今日は、少しだけ顔を上げる子がいました」
咲の答えに、シナは微笑みを浮かべた。
「それはいいことだねぇ。……焦らなくていいんだよ。あの子たちは、ちゃんと見てるから。先生が笑える日を、ゆっくり待ってる」
その言葉に、咲の背中から少しだけ力が抜けた。
しかし。
「まぁ、とはいえ油断は禁物でしょうな」
静かに挟み込むような声。
安藤夏之丞が書類をめくりながら、鼻先で笑った。
「山田先生の推薦とはいえ、“どんな方”か、実際に見てみないことにはね。……学園としての信用に関わりますので。誰かさんみたいに」
その視線がわずかに土井半助の方へ向く。
一瞬の沈黙の後、土井はさらりと声を返した。
「誰であっても、教師としての務めを果たしていれば、それで充分だと私は思います」
口調は穏やかで柔らかい。
だが、そこには静かに咲を庇う響きがあった。
「特に、初めての環境で教えるというのは難しいことです。……少しでも慣れていただけるよう、私たちも協力できれば…と」
土井の言葉は誰も否定できず、誰も傷つけない。
だが、その言葉の裏には、確かな立場表明があった。
(……この人は、敵じゃない)
そう思ったとたん、咲の胸の奥で、ひとつ小さな錘が外れた気がした。
「そうそう。あんまり構えすぎちゃ、肩が凝るわよ」
シナが穏やかに続けた。
「子どもたちは敏いからねぇ。先生の顔や背中を、よく見てる。……でも、先生の声も、ちゃんと聞いてるよ」
「……ありがとうございます」
咲は深く頭を下げた。
この教員室で初めて“受け止められた”気がしていた。