守る場所
指名変更
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朝、教室に入った瞬間。
空気が変わるのがわかる。
緊張が走るでもなく、ざわめきが生まれるでもない。
ただ、静かに、確実に――「視線」が集まっていた。
(今日も、“観察”されてる)
それは警戒でも、敵意でもない。
ただ、測るような目。
目の前の教師が、どんな人間なのか。
言葉の隙、動きの癖、呼吸の速さまで、じっと見ている。
(……懐かしいな)
咲自身もそうだった。
かつて、上官の顔色と呼吸を読むことで命を繋いでいた。
任務中の緊張ではなく、“日常の中に潜む危機”を見抜く術。
(子どもって、よく見てる)
そんなことを思いながら、教壇に立つ。
ユキがぴしっと背筋を伸ばしながら、ちらりと視線を送ってきた。
その仕草は堂々としていて、ある種の貴族的な余裕さえある。だが、その実、彼女は誰よりも教室の空気に敏感だ。
トモミは無言のまま真面目に型を取っていたが、咲の指導が少しでも他の子と違えば、すぐにそれを見抜いて動きを修正する。
その観察眼と柔らかさは、見た目以上に強かで、芯がある。
そしておシゲは、今日も変わらず静かに微笑んでいた。
だが、その笑みの裏には、咲の動きひとつひとつを“やんわりと記憶する”冷静さがある。
彼女の気配が変われば、教室全体の空気すら変わるほどに。
(油断はできないな……)
「次。八本の型。トモミ、先頭」
指示を出すと、トモミがすぐに立ち、他の生徒たちも何の反応もなくそれに続く。
整然としている。だが、それは“緊張感が取れた”わけではない。
彼女たちはまだ、咲を“先生”とは認めていない。
呼ばれた名は“咲先生”でも、その言葉にある距離ははっきりしている。
敬意というより、まだ“様子見”の響き。
咲は構わなかった。
むしろ、そういう間合いに慣れていた。
時間をかけて向き合っていくしかない。
それが、教える側に立った自分にできること。
(近づきすぎてはいけない。けど、離れすぎても届かない)
その距離感を、今はまだ測っている最中だった。
教室に張り詰めた静けさの中、少女たちの足音と声だけが響いていた