花を知らぬ者
指名変更
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いつもように任務を終え、記録を出し終えた夜。
廊下の曲がり角を抜けた先、部隊の控室に戻ると、蒼蓮が先に座っていた。
無言で、机の上の地図を眺めている。
視線は地図の一点に釘付けになったまま、微動だにしない。
緋華が扉を閉める音にも、振り返ることはなかった。
「お前、近頃……数秒遅れるな」
唐突に、冷たい声が降ってきた。
緋華は立ち止まる。
「何の話」
「殺気の消し方。
昔はもっと綺麗だった。今は、滲んでる」
ただの観察。
何の感情も込められていない。
「……理由は?」
問いかけではない。説明を求める調子でもない。
ただ、“答えを聞いても聞かなくてもいい”という前提の音。
「ないわけじゃない。でも、話すつもりもない」
緋華がそう返すと、蒼蓮はようやく顔を上げた。
「ああ。そういう顔だと思った」
それだけを言い、また視線を地図に戻す。
「壊れ始めた刃は、切れ味よりも先に光を失う。
今のお前は、刃として美しくない」
それは、皮肉でも怒りでもなかった。
ただ、淡々とした評価だった。
緋華は一歩、机に近づく。
「……“刃”で測るの、いつまで続ける気?」
「俺たちは“刃”以外になったことがない。
それ以外で生きていく方法を、教えられていない」
蒼蓮の声は平坦だった。
「刃であることをやめた者に、残るのは鉄くずだけだ」
沈黙。
緋華はそれ以上何も言わず、机の上の任務書だけを回収して、部屋を出た。
背後で蒼蓮が何かを言う気配はなかった。
それは、怒りでも拒絶でもない。
ただ、すでに“選別”を始めた者の冷淡さだった。