守る場所
指名変更
この小説の夢小説設定1章はくノ一「緋華」で統一しています。
2章以降入力していただいたお名前になります。ご了承ください
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
部屋の灯を落とすと、あたりは静寂に包まれた。
忍術学園の宿舎――今日から自分の居場所となる場所。
戸を閉めた瞬間、背負っていた緊張がひとつずつ崩れていく。
(……終わった)
くノ一教室での、初めての授業。
反発も、混乱もなかった。
ただ、生徒たちの瞳にあったのは、静かな警戒。
誰も言葉にしなかったが、彼女たちはこちらを“測って”いた。
この教師が敵か、味方か。
信じていいか、否か――
(当然だ)
そう思うのに、心は妙なざらつきを残していた。
「先生」と呼ばれるたび、身体が微かに反応してしまう。
命令を下す者ではなく、命令を受ける側だった頃の記憶が、まだ消えていない。
(……やっぱり私に、子どもを教える資格なんて…)
声には出さなかった。
出せば崩れてしまいそうだった。
教える側に立ったはずなのに、あの教室ではずっと自分が“見られていた”。
じっと、無言の問いかけを向けられ続けていた。
(私を試しているのは、あの子たちだけじゃない。私自身も――)
ふと、利吉の顔が思い浮かぶ。
彼が言ってくれた言葉が、まだ背中に残っていた。
(……どうして、あんな風に言えるんだろう)
信じてくれる人がいることは、救いのはずだった。けれどそれが、まだ怖かった。
“変わろうとしている”ことを、誰かに見られることの脆さ。
まだ形にならない自分を、掬い上げられてしまうような怖さ。
布団に身体を預けたが、瞼はすぐには閉じなかった。
初めての授業で呼ばれたその名を、心の中で繰り返す。
忍としての名前ではない、自分の本当の名前。
そう呼ばれたのは、いったいどれくらいぶりだったか――
夜の空気が静かに部屋を満たす。
やがて、遠くで梟の鳴き声が聞こえた。
咲はそっと目を閉じた。
今夜だけは、自分を“許す”ことにした。
教師としての初日が、ようやく終わった。