守る場所
指名変更
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教室の扉を開けると、空気がぴんと張っていた。
何十もの視線が一斉に向けられる。
それは無垢な好奇心ではなく、観察と警戒の混じった視線。
教室の空気は、子どもたちの年齢よりずっと重く、静かだった。
(……そうだよね。すぐに打ち解けられるなんて、思ってない)
咲はゆっくりと歩を進め、教壇の前に立つ。
「今日から、このくノ一教室で実技授業を担当する咲です」
名乗る声に、いくつかの瞳が揺れた。
だが、すぐに沈黙が戻る。
「……“咲先生”って呼べばいいのかしら?」
教室の中央あたりから、軽やかで上品な声が響く。
声の主は、ウェーブがかったロングヘアに大きなピンクのリボンを結んだ少女だった。
背筋をまっすぐに保ち、目だけは鋭く、まるで咲の返答を値踏みするかのようだった。
「ええ、それで構わないわ」
咲が静かに返すと、少女はにっこり微笑んだ。
「ユキです。……先生って、怒ると怖いタイプですか?」
(……探ってる)
単なる冗談ではない。
教室の空気を一度和らげてみせる一方で、咲の“境界線”を見極めようとする、賢い間合い。
その場をつなぐように、別の声が続いた。
「ユキ、さっきから挑発っぽいよ」
やや低めの声と落ち着いた口調。
黒髪をすっきりと結い上げた少女が、教室の隅から立ち上がる。
「トモミです。……強くなるために来ました。実技、期待してます」
その目には、真っ直ぐな信頼ではなく、まだ“見極めよう”という強さがあった。
「構えから教えてくれるんですよね?」
「もちろん。今日の最初の課題よ」
咲がそう応じると、前列から柔らかな声が響く。
「私も、がんばります」
小柄な体格、丸い輪郭と落ち着いた仕草。
話しているのは、おシゲ──大川シゲだった。
他のふたりのような強さではなく、けれど芯のある穏やかな声。
「おシゲです。先生、これからよろしくお願いします」
「……よろしくね、みんな」
咲の挨拶に、ほんの少しだけ空気が和らいだように感じた。
—
「今日は、まず基本の立ち姿から始めます」
そう言って咲が姿勢を正すと、トモミがすぐに同じ構えを取る。
ユキも、その姿勢を一瞥したのち、ゆっくりと模倣した。
おシゲはそのふたりを見ながら、しっかりと体を整えた。
(……ちゃんと見てくれている)
子どもたちは、まだ咲を「先生」として迎えたわけではない。
けれど、最初の一歩を、互いに踏み出しつつあった。
「覚えるためじゃなく、使えるようになる。そのつもりで、やっていきましょう」
教室に、小さくうなずく気配が広がる。
新たな関係が始まった春の午後。
咲は、胸の奥でほんの少しだけ、その温度を感じていた。