守る場所
指名変更
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朝の山田家には、静かな緊張感が流れていた。
支度を終えた咲が縁側に立つと、利吉がすでに庭に出ていた。
背を向けたまま、「行きましょう」とだけ言う。
その一言に、咲 は深く息を吸って頷いた。
春の風が吹く中、ふたりは並んで歩き出した。
—
忍術学園の門の前で、咲の足が止まる。
初めて見る建物。
整った石畳。
門の奥からは子どもたちの元気な声が聞こえてきた。
足元には、淡いピンクと紫の小さな花が風に揺れている。
(……本当に、始まるんだ)
「……やっぱり、少し緊張する」
ぽつりと漏らすと、隣の利吉が小さく笑った。
「当然です。誰でも、初めての場所は緊張しますよ」
「……そう、だよね」
でも、それでもここへ来ると決めたのは自分だ。
逃げずに、過去から目を逸らさずに、“守る側”へ踏み出すために。
咲は一歩、門の中へと足を踏み入れた。
—
門をくぐると柔らかい雰囲気の事務員が現れ、入門表の記入を求めてきた。
その後案内されたのは、学園長室だった。
「ようこそ。緋華……いや、今は“咲”殿か」
学園長は、すべてを知っているような声音でそう言った。
その瞳には探る色はなく、ただ穏やかな光が宿っていた。
「今日から、くノ一教室の実技担当としてよろしく頼む。困ったことがあれば、いつでも声をかけてほしい」
「……ありがとうございます」
咲は深く頭を下げた。
その姿勢のまま、心の中で小さく呟いた。
(大丈夫。できる。……やるって、決めたんだから)
—
挨拶を終えて廊下を出ると、前に現れたのは落ち着いた雰囲気を纏った男だった。
利吉が一歩前に出て、自然に頭を下げる。
「土井先生、お久しぶりです」
男──土井半助は柔らかい笑みを浮かべ、まず利吉に目を向けた。
「利吉くん、久しぶりだね」
土井の視線が、静かに咲へと向けられる。
「今日から、こちらに?」
「……はい。咲です」
その名を名乗った瞬間、土井の表情が一瞬揺れた気がした。
けれどすぐに、優しく穏やかな口調が返ってくる。
「私は土井半助と申します。一年は組の教科担当です。どうぞ、よろしくお願いします」
「……よろしくお願いします」
言葉のやり取りは簡潔だったが、どこか目が離せない気配を感じた。
「教員の中では、私が一番年下になりますし……たぶん、歳も近いと思います。
何か困ったことがあれば、遠慮なく言ってくださいね」
そのやわらかい口調に、咲は少しだけ緊張を解かれた。
—
教室の扉の前に立ったとき、子どもたちの笑い声が漏れ聞こえた。
その声の中に、ふいに“ひな”の面影がよぎる。
喉の奥が詰まりそうになった。
でも、もう目をそらさないと決めた。
扉に手をかける。
春の光が差し込むその先へ、咲 は静かに足を踏み入れた。