山田家での生活
指名変更
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昼の山田家は、静かだった。
風が庭を渡り、縁側の簾を揺らす。
咲は茶の間に届いた一通の文を、手の中でしばらく見つめていた。
利吉は任務で朝から不在だった。
家の中に誰もいないというだけで、静寂がやけに身に染みる。
それでも、震える指先で封を開けた。
中には、忍術学園からの正式な採用通知。
ゆっくりと目を通し、胸の奥にじんとしたものが広がっていく。
「……来たんだ」
誰にも聞かれないように、小さく呟いたその声は、ほんの少しだけ滲んでいた。
___________
夜。遅くなって、ようやく玄関が開いた。
「ただいま戻りました」
その声に、咲は立ち上がって玄関へ向かう。
疲れた様子の利吉と目が合い、自然と口元が緩んだ。
「おかえり」
「ただいま。ちょっと遅くなりました」
「……ちょっと、縁側、いい?」
庭に面した静かな縁側。
ふたりで並んで腰を下ろすと、月の光が肩先に触れた。
「……今日、学園から文が届いた」
「……そうですか」
「採用されるって。……本当に、始まるんだね」
「……ええ。ついに、ですね」
しばらく沈黙が続いた。
虫の声。風の音。
けれど、どちらの心音だけが、近くに響いていた。
「私にできるかまだ心配だな…」
そして、ふいに利吉が呟いた。
「……もし教師が辛くなったら
いつでも“転職”できますよ……私の嫁に」
一瞬、時が止まったようだった。
鼓動が、ひとつ大きく跳ねる。
咲はわずかに目を見開き、横目で彼を見た。
利吉は、わずかに顔を赤らめながら、それでも視線を逸らさずにいた。
「……利吉の面接って、厳しそうだもんね」
「え……?」
「私なんか、落とされるかも」
言いながら、咲は文に目を落とした。
次の瞬間、
その手元に、そっと温かい手が重なった。
利吉の手が、文を押さえるように添えられていた。
指先が、咲の指にかすかに触れている。
「……あなたなら、即採用です」
真正面から返されたその言葉に、息が詰まりそうになった。
まっすぐな目に見つめられて、なぜか目を逸らしてしまう。
けれど、その手は——拒まなかった。
「……ふふ、ありがと」
夜風が吹き抜ける。
そのまま、ふたりは黙って月を見ていた。
文の下にある手の温もりが、咲の胸の奥に、じんわりと広がっていく。
——始まるんだ。
今度こそ、守るための生き方が。