山田家での生活
指名変更
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「……忘れないでください」
利吉の言葉が静かに空気へ溶ける、その直後——
「ごほん」
乾いた咳払いが背後から響いた。
ふたりが肩を揃えて振り返ると、廊下の柱の陰から伝蔵が姿を現す。
腕を組み、無表情のようで、どこか口元に含みがある。
「ずいぶん静かだと思えば、朝から濃い話をしていたようだな」
利吉が慌てて姿勢を正し
咲も思わず背を伸ばす。
「まあいい。ちょうど話したいことがあった」
伝蔵はそう言って、ふたりを促すように居間へと向かった。
⸻
湯呑を並べ、茶の香りが静かに広がる。
伝蔵は一口啜ると、まっすぐ咲に視線を向けた。
「……忍術学園という場所がある。聞いたことはないだろうが、忍の初歩を子どもたちに教える特殊な育成機関だ」
「忍……術、学園……?」
咲は眉をひそめた。
「今、そこのくノ一教室で実技を教えられる者を探している。」
そこで、利吉が静かに口を開いた。
「……私から、咲さんのことを話しました」
伝蔵はそれを受け、少しだけ頷いた。
「おまえさんのことは詳しくは知らん。ただ、利吉が“任せたい”と言うなら、それだけで十分だ」
湯呑を置き、腕を組み直す。
「刃としての動き、判断。それも確かに大事だ。だが、それだけならいくらでも替えはきく」
伝蔵の声音が、少しだけ低くなる。
「本当に教えられる者とは、“何を守るためにその技を持ったか”を知っている人間だ。ずっと奪う側にいたなら、今度は守る側に立つのもいい。
その手で誰かを育てるっていうのはな……意外と悪くないもんだ」
視線は変わらず、咲の目を見ていた。
「無理に答えを出す必要はない。ただ――選ぶのは、おまえさんだ」
その隣で、利吉が小さくうなずいた。
「……私は、あなたがどんな選択をしても支えます」
湯呑を手にしたまま、咲は小さく息を吸った。
伝えられた信頼と、差し出された道。
まだ決めるには、少し時間がほしい。
けれど、確かに何かが、胸の奥でゆっくりと動き始めていた。