山田家での生活
指名変更
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朝食を終えても、胸の奥に残る熱は消えなかった。
言葉にしなくても、お互いに昨夜のことを意識しているのがわかる。
無理に笑えば嘘になるし、沈黙すれば気持ちが漏れてしまいそうで——
咲は、ひとり庭に出た。
朝の風が頬を撫でる。少し冷たくて、でも心地よかった。
縁側に腰を下ろすと、足元に落ちた葉が一枚、風に揺れて転がった。
「……失礼します」
気配とともに、隣に座った利吉の声。
肩がわずかに跳ねた。
気づかれたくなくて、何気ないふりで小さく息を吸う。
二人の間に流れる空気が、昨日までと確かに違っていた。
「朝は、冷えますね」
「……うん」
言葉は交わしたのに、視線は交わらない。
そのとき、ひときわ強い風が吹いた。
咲の髪がふわりと舞い、頬にかかる。
次の瞬間——
「……失礼」
利吉の手が、迷いもなく伸びてきた。
優しく、けれど確かに。
彼の指先が、咲の髪をそっと払った。
頬に触れたその指先が、かすかに熱を残す。
「……え?」
驚いて見上げたとき、目が合った。
まっすぐに。逃げることなく。
「……風で、乱れていましたので」
低く、落ち着いた声。けれどその瞳は、揺れていた。
目をそらしたのは咲のほうだった。
顔が火照る。心臓の音が、耳の奥でやけにうるさい。
「昨日の話。……母が言ったことは、冗談として済ませてもらって構いません」
利吉の声が、少しだけ近くなる。
「でも——」
そこで言葉が止まった。
時間が伸びるような感覚。
朝の静けさが、鼓動をさらに大きく響かせる。
「……もし、あなたが“そうであってもいい”と思うなら」
静かに、けれどはっきりと。彼は言った。
「私も、それでも構わないと思っています」
咲の呼吸が止まりそうになる。
言葉の意味を脳が理解するよりも先に、感情が押し寄せる。
「……りき、ち……?」
やっとの思いで声を出すと、彼の視線がゆっくりと咲の目を見た。
「驚かせてしまってすみません。
ですが、これは本心です」
「……なんで、そんな、普通に……」
「普通じゃありません。だからこそ、今、伝えたかったんです」
手が動いた。咲の手のすぐ近くに、彼の指先が触れたか触れないかの距離に伸びる。
けれど、それ以上は来ない。
「……忘れないでください」