山田家での生活
指名変更
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湯呑を置いたあとも、咲の手のひらにはまだ、温もりが残っていた。
あの瞬間の距離、息づかい、手のかたち。
一つひとつが胸の奥に焼きついて
今も心拍だけが落ち着いてくれない。
(……これは?鼓動が変だ)
そう思えば思うほど、何を意識しているのかすらわからなくなっていく。
目の端で、利吉が縁側から庭を見ているのがわかった。
動かないその横顔が、なぜか今日はやけにまぶしかった。
⸻
「今日は……もう少し歩いてみようと思って」
そう言ったのは、ほんの気まぐれだったのに。
「はい、行きましょう。付き添います」
その返事がすぐに返ってきたことで、咲の心臓はまた、静かに鳴った。
並んで歩く。
それだけのことなのに、どうしてこんなに足音が気になるんだろう。
利吉の歩幅に合わせるたびに、
無意識に呼吸のリズムまで揃っていくのが分かる。
「……さっきの、びっくりした」
「何がですか?」
「手。……あんなふうに、普通に支えられたら、びっくりするでしょ」
「驚かせてしまってすみません。でも、あなたが倒れる姿は見たくありませんから」
さらりと。けれど、迷いのない言葉だった。
そのまま横を向けなかった。
まぶしいのは太陽のせいじゃない。
それは分かっていたけれど、どうしても顔を見られなかった。
⸻
庭を一周して戻るまで、二人はあまり言葉を交わさなかった。
けれど、互いの足音と気配だけで、妙に安心できる何かがあった。
縁側に戻りかけたとき、
足を止めた咲に、利吉が少しだけ顔を向けた。
「……どうかしましたか?」
「ううん、ちょっと……鼓動の癖が変だっただけ」
「……鼓動の癖、ですか」
「気にしないで」
咲はそれだけ言って、すぐに目をそらした。
気づかないふりをしてほしかった。
でも、ほんの少し――気づいてほしいとも思っていた。