花を知らぬ者
指名変更
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「任務報告、承る」
床に正座した緋華の前に、数人の上忍と記録官が並ぶ。
その中央――緋華の直属の上官であり、部隊を束ねる男・焔(ほむら)が、静かに座していた。
場の空気は、冷ややかに張り詰めている。
「標的は予定より早く拠点を離れた可能性がある。現地では取引相手と見られる商人との接触のみを確認。交戦には至らず、状況を鑑み、現場での処理は見送った」
緋華は表情を崩さず、決められた文言を並べた。
淡々と、何の躊躇もなく。――外見上は。
「緋華」
記録官よりも先に、焔が口を開いた。
「お前にしては、随分と“判断”が甘いな」
声は低く、熱を感じさせない。
その男の名に似合わず、炎のような激情ではなく、静かに焼け焦がす炭火のような温度を持つ声だった。
「……現場には民の気配があり、殺害による影響を鑑みました。それ以上の追跡は、成功率が著しく低く、任務達成と判断するには危険と判断しました」
「危険、ね」
焔はその言葉を咀嚼するように繰り返した。
「お前は、任務の達成のためなら“己の肉を切らせて骨を断つ”ほどの冷徹さを持っていたはずだが、なぜ今回は?」
「……判断です。個人的な感情ではありません」
「感情であってもなくてもいい」
焔が静かに立ち上がる。
「俺が求めているのは、“結果”だけだ。
緋華――お前は“完璧な刃”としてここにいる。それ以上でも、それ以下でもない」
目が合った。
焔の眼差しは冷たく澄んでいた。
そして、その奥には――緋華自身がかつて信じてきた、“正しさ”が映っていた。
緋華は深く頭を下げた。
「心得ております」
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報告の場を離れたあと、静まり返った廊下の隅で、緋華は足を止めた。
「……完璧な刃」
その言葉は、かつて誇りだった。
“人間”を捨ててでも手に入れた、唯一の価値。
それなのに今、その言葉が、なぜか胸を刺す。
痛い。
私は、ただの鈍った刀になったのか?
それとも……もう、“刃”ではいられないのか
答えは出ない。
出せるはずもない。
胸の奥に、まだ残っている。
あの子どもの声と、小さな手の記憶が――。