束の間の憩い
指名変更
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----利吉視点----
任務を共にするようになって、数ヶ月が経った。
互いに手の内を語るわけでもない。
けれど、戦いの流れ、動きの癖、呼吸のリズム―
それらが少しずつ噛み合っていったのは、言葉以上の信頼が積み重なっていたからだろう。
咲は過去を語らない。
語ろうともしない。
それでも、“今”の彼女と歩けることに、不思議と満たされるものがあった。
必要以上の会話はない。
だが、沈黙が不快に感じたことはなかった。
だから、任務の帰りに立ち寄る山中の茶屋も、ふたりにとっては“当たり前の寄り道”になっていた。
この日も、いつもと同じはずだった。
湯を頼み、団子をひとつ。
外の風が心地よくて、ふと目を閉じる。
咲は黙ったまま、けれどどこか柔らかい空気をまとっていた。
その空気が、ふとした一言で壊れるまでは――
⸻
「……そういえば聞いたか? 南の村、燃えたって話」
隣の卓から飛び込んできたその言葉に、
利吉はまず男たちの方を見た。
隣の咲へと視線を移す。
その瞬間、気づいた。
咲のまつげが、かすかに揺れていた。
手元に置かれた湯呑みが、まだ湯気を立てているのに、彼女の手はそこに伸びなかった。
「火事って話だったけど、どうも人の仕業らしい。
女も子どもも……全部やられたって」
男たちの会話が続く間、咲の呼吸が浅くなっていくのが分かった。
声は出さずとも、彼女の中で何かが崩れている。
それが、痛いほど伝わってきた。
「咲さん……?」
思わず声をかけると、彼女は一瞬だけこちらを見た。
その瞳の奥にあったのは―
―不安、後悔、そして恐れ。
「……少し、行きたい場所があるの」
「何か……ありましたか?」
「……わからない。けれど……確かめずにはいられない」
言葉は抑えていた。
でも、それは“壊れそうな何か”を必死に繋ぎとめているような声音だった。
彼女が席を立つ。
空気がわずかに揺れる。
「先に戻っていて」
利吉は反射的に立ち上がろうとしたが、彼女は静かに首を振った。
「お願い。ひとりで行きたいの」
その目を見て、無理に止めるべきではないと理解した。
けれど、それでも内心では叫びたいほどの違和感があった。
それでも、ただ静かにうなずいた。