束の間の憩い
指名変更
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蒼蓮の警告から二日ほど経った。
朝の空気に、どこか鋭さが混じっていた。
焚き火の煙が、妙に遠くまで立ちのぼった。
咲は、そのひとつひとつに心がざわつくのを感じていた。
(また来るかもしれない)
あの気配――
あの目――
あの声――
“鈍っていないか”
“まだ使えるか”
ただそれを測るために現れた蒼蓮の姿が、頭から離れなかった。
⸻
「咲ちゃん、お団子作ろうよ」
ひなが無邪気に笑う。
その顔を見るたび、胸の奥が締めつけられた。
守りたかった。
もっと一緒にいたかった。
でも、それはもう許されないと思った。
私がここにいる限り、この家族はまた狙われる。
蒼蓮は一度手を引いたかに見えたが、それは“一時的な猶予”に過ぎない。
次は――
確実に、奪いにくる。
⸻
その夜、囲炉裏の火を見つめながら、おかあさんが言った。
「咲さん、明日からしばらく町に出るつもりはある?」
「……え?」
「ここに来た日から思ってたの。あなた、風の匂いが忍びと似てるのよ。
悪い意味じゃないの。……でも、何かを背負ってる目をしてたから」
咲は言葉が出なかった。
おかあさんはにこりと笑って、火に薪を足した。
「あなたがここに来てくれて、家の中が明るくなった。
でも、それ以上に――
私たちは、あなたに無事でいてほしいの」
それは、静かな“気づいていた”の言葉だった。
⸻
翌朝、咲はひなを抱きしめた。
「咲ちゃん、どこ行くの?」
「少しだけ、遠くに行くの」
「……やだ」
「でも、戻ってくるから」
「ほんと?」
「……うん」
答えた声が震えていたのは、自分でもわかった。
けれど、その小さな背中をそっと離して、咲は玄関を出た。
おとうさんは何も言わず、荷を背負うのを手伝ってくれた。
おかあさんは、焼いた干し魚を布に包んで渡してくれた。
「気をつけてね、咲さん」
最後に呼ばれたその声が、胸に刺さった。
⸻
こうして、咲は村を離れた。
この場所を守るために。
この穏やかな日々が、二度と踏みにじられないように。
何も起こらずに、彼らが生きていてくれるようにと――
祈るように、静かに歩き出した。