束の間の憩い
指名変更
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朝が、やさしかった。
鳥の声に目を覚ますと、囲炉裏の湯がもうぐらぐらと音を立てている。
味噌の香り、炊き立ての米の匂い、遠くで薪を割る音。
「おはようございます、咲さん」
「……おはようございます」
まだ少しだけ、返す声がぎこちない。
けれど、もうその名前を呼ばれるのに抵抗はなかった。
⸻
畑での作業も、炊事の手伝いも、どれも初めてのことばかりだった。
最初は動きも硬く、手つきも不慣れだったが、
ひなはそんなこと気にせずに、泥のついた大根を自慢げに見せてきた。
「咲ちゃん、これ、あたしがひっぱったの!」
「すごい。……立派ね」
その一言だけで、ひなは顔をくしゃっと笑顔に変えた。
それが、うれしかった。
自分の言葉が、誰かを喜ばせることもあるのだと――
ずっと忘れていた。
⸻
「咲ちゃん、きょうも、あしたも、ずっとここにいてね」
何気なく言われたその言葉が、
胸の奥にそっと染みこんだ。
(“ずっと”なんて、言われたのはいつぶりだろう)
守りたくなる。
この時間も、この子も。
誰にも壊されてほしくないと、そう思った。
⸻
その夜、洗濯物を取り込むために家の外に出たとき、
ふと、足が止まった。
風が止んでいた。
音も、ない。
焚き火の残り香すら、どこか違って感じる。
何も見えない。
何も聞こえない。
なのに、肌の奥がひやりと冷たくなる感覚だけが、そこにあった。
(……気のせい?)
自分にそう言い聞かせて、家の中に戻った。
だが、扉を閉めたあとも、背筋の冷たさだけが残っていた。
⸻
翌朝。
ひなは元気に畑を走り回っていた。
おかあさんは味噌を溶き、おとうさんは薪を割っていた。
何も変わらない。
何も、おかしいことなんてない。
だけど咲の中に、昨日感じた“気配”が、ずっと消えずに残っていた。