束の間の憩い
指名変更
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「おねえちゃんって、ほんとはなんていうの?」
縁側でひなが、ぽつんと聞いた。
目の前には、ひなが作った小さなお団子と、おまけの梅干し。
どちらもころころ転がらないように、皿の端に寄せられていた。
「わたしね、ひなっていうの。おかあさんが春に生まれたからつけてくれたんだって」
彼女は小さく頷いた。
ひなは構わず、嬉しそうに続ける。
「おねえちゃんにも、きっとそういうのあるでしょ。いい名前、もらってるんだよね?」
問いかけに返す言葉はすぐには出てこなかった。
(名前……)
長く使っていなかった。
くノ一として生き始めてからは使っていなかった名。
誰かがやさしい声でそう呼んでくれた記憶は、随分と昔のことのように感じていた。
でも。
「……咲」
ようやく声に出したその名は、思っていたよりも、ちゃんと口になじんだ。
両親がつけてくれた、大切な名前だった。
ひなはぱあっと目を輝かせた。
「咲ちゃん、かあ。ぴったり!
ねえ、咲ちゃんは、どんなお花がすき?」
そう聞かれて、答えられずに笑ってしまった。
笑った自分に、少し驚いた。
こんなふうに誰かに呼ばれて、
名前を返して、
そこに笑いがある。
ただそれだけのことで、
こんなにも自分が“人間”としてここにいる気がするなんて――
忘れていた。
いや、捨ててきた。
でも、今、確かにここに戻ってきた。
「ありがとう、ひな」
そう言うと、ひなはにこにこしながら「えへへ」と照れた。
春の名前を持つ少女に、
私は、自分の名を思い出させてもらった。
⸻
その夜、自分の胸に手を当てて、もう一度呟いた。
「……私は、咲」
呼ぶ声も、呼ばれる声も、まだ少しこそばゆい。
でも、それが、あたたかかった。