束の間の憩い
指名変更
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「……起きたみたいよ」
静かな声がした。
次に、ふわりと視界に影が差した。
女の人だった。
穏やかな目をして、布を絞った手をそっと額に当ててきた。
「熱、少し引いてきたわね」
声がやわらかくて、それだけで胸が苦しくなる気がした。
どこだろう。誰だろう。
どうして――私は、生きている?
「無理に起きなくていいよ。お水、少し飲める?」
声をかけられても、うまく反応ができなかった。
喉は渇いていた。
体は重かった。
でも、それより何より“ここが安全だ”という感覚が不思議なほど重くのしかかってきた。
逃げなくていい。
誰も、殺そうとしていない。
誰も、私を“見張っていない”。
そのことが、なぜか涙になりそうだった。
⸻
少しだけ眠って、目を覚ました頃。
今度は、小さな声が聞こえた。
「おかあさん、このひと、ねてるの?」
そっと布団の端をつかんで覗き込んでいる、小さな女の子がいた。
五つか六つくらい。
顔は少し日焼けしていて、目が大きかった。
「ねえ、おねえちゃん、なまえあるの?」
問いかけられて、一瞬、息が止まった。
名前。
そういえば、城を出てから一度も“誰かに名を呼ばれていない”。
思わず、何かを返そうとしたが声が出なかった。
それでも少女は屈託なく笑った。
「わたし、ひな。ひなっていうの。
おねえちゃんも、なまえ、あったらおしえてね」
そして、何事もなかったかのように、畳の上で布切れと棒きれを並べはじめた。
その小さな背中を見ながら、胸の奥でなにかが揺れた。
名を、呼ばれるということ。
名を、持つということ。
誰かに「人」として覚えられるということ。
刃ではない、自分の居場所がここにあるかもしれない。
⸻
この家の人たちは、名前も過去も問わなかった。
ただ、助けてくれた。
あたためてくれた。
布団を貸してくれて、湯気の立つ味噌汁をくれた。
それが、何よりこたえた。
⸻
ここで、しばらく生きよう。
そう思った。
“忍び”としてではなく
“人”として。