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カン、カン、と、上へ上がるごとに、この誰もいない静かな階段に音が響く。少しずつ上へ上がっていく度、自分の死がそこまで迫ってきていることを自覚する。
理由は色々あれど僕はもう疲れてしまったから。今からここから飛び降りようと思う。誰にも邪魔されないようにわざわざ授業を抜け出して、この屋上を選んだ。
重い鉄のドアを開けると、ひんやりとした外の空気が一気に中に入り込んで身震いをする。生憎、上着は教室に置いてきてしまったため薄着で来たことを後悔する。まあそんなことはすぐに関係なくなるのだが。
屋上には誰もいない。…はずなのに人影がひとつ、フェンスの前に佇んでいた。
その正体はすぐにわかった。こちらに気づくとすぐに声をかけてきた。かなり小柄でよく通る声を持つ少女。それは紛れもなく僕の親友であり片思いの相手であるロコルヤだった。
驚いた。普段は真面目に授業を受けているロコルヤが屋上で僕を待ち構えているなんて思ってもいなかった。何よりなんで今日僕がここで自殺することを知っていたんだ?
驚きと戸惑いで何も言えなかった僕に、ロコルヤはいつも通りの調子で話しかけてきた。
rk「お、やっぱり来たか。Broooock。」
Br「な、なんでここに…」
rk「なんでって…親友だからに決まってるだろ!」
Br「僕を止めに来たの?」
rk「…今日はちょっとBroooockに話したいことがあってね」
rk「少しだけ時間貰ってもいいかな?」
Br「まあ、少しだけなら」
渋々そう返事を返すと、ぱあっと嬉しそうな顔をして話し始めた。
rk「本日お伝えしたいのは、とっても大事な君のこと!…まあ出会った日は覚えてないけど…」
Br「小学校の始業式じゃない?」
rk「ああ、そうだ。あの日たまたま隣になってそこで出会ったんだったね。でも君のことはなんでも知ってるつもりだよ!」
rk「では先ず手始めに、君の長所について語るとしよう!君の長所はメリハリをつけているところ。普段はふざけてばっかでも、ここぞと言う時はしっかりやってくれるよね!でも厨二病がちょっと抜けない…まあ面白いけどね!」
Br「ええ?そう?」
rk「まあまあ厨二病は置いといて…Broooockさ、今から飛び降りるんでしょ」
Br「…そうだよ。」
rk「やっぱりそうか…私の予想通りだ」
Br「…」
rk「君が飛び降りるのならば、私は笑って一緒に飛び降りるよ」
絶対に止められると思っていた僕は、ロコルヤの口から出た予想外な言葉に呆気にとられた。
Br「えっ…!?」
Br「な、なんでそんなこと…」
rk「止めてくれるとでも思ったか!私たちの絆を見くびるなよ〜」
素直に自分の疑問をぶつけると、ロコルヤはくすくすといたずらっ子ののように笑って答えた
rk「そしてさ、2人で手を繋いで落ちていこうよ。地面めがけてピースしちゃったり!良くない!?」
今から飛び降りようとしてる人の発言とは思えないほどキラキラした顔で話すロコルヤはとても可愛らしく、何故か涙が出てしまいそうになった。
rk「ほら、飛び降りるんでしょ?手、繋ごう」
ロコルヤはにこにこしながらこちらに手を出す。その姿が太陽に重なってとても眩しかった。
目の前に差し出された細い指を絡めて、しっかりと手を繋ぐ。絶対に離れないように。
いざ飛び降りようとフェンスの前に立つと、ここに来て恐怖で足が震えて立ちすくんでしまった。いよいよ〝死〟を目の前に感じ、何も出来なくなってしまった。
rk「ふっ、もしかして怖いの?」
Br「いや…そんなことないし!」
rk「あ、そう?でもなんか忘れてる気がするんだよなー…あっ!」
はっと何かに気づいたように顔を上げると、困ったように頼み込んできた。
rk「そうだ忘れてた!見たいテレビがあったんだ!前録画し忘れたけど再放送になったあのドラマ!やっぱり飛ぶの後でにしない?次見逃したら再再放送なんていつやるかわかんないんだよ〜」
こんな時にそんなことを考えてるなんて本当に呑気だ。本当に…
Br「はあ…しょうがないなぁ」
ロコルヤの言う通り、ここから飛び降りるのはまた今度にしよう。頼まれてしまったのだから。
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前回の自殺未遂からちょうど一週間。同じ、午後の五時間目。また重い屋上のドアを開けると、前と同じように君がいた。
僕の姿を見ると、また笑顔で話し始めた。これから飛び降りることを忘れさせるような他愛もない会話。
rk「Broooockに会ってから全部おかしくなっちゃったよ」
Br「っ…それはどういう意味?」
rk「そりゃあ、占いなんか信じてなかったのにBroooockがあまりにも占いを信じてるから私までのめりこんじゃったし…」
Br「ああー…まあ、そんなこともあったね」
rk「あとはなんか変な音楽とか、変な漫画ばっかり勧められたなあ…周りに知ってる人、誰もいなかったよ。」
Br「まあマイナーなのが多いからねw」
rk「人の人生左右しておいて…ふざけんな覚えてろこのやろ~」
Br「えぇ~w」
談笑していると、急にロコルヤの表情が変わった。
rk「…今日も飛び降りるの?」
Br「…うん」
rk「そっか」
心なしか少し悲しそうな表情を見せたように感じた。しかし次に瞬きをする頃にはもういつもの笑顔に戻っていたから多分気のせいなんだろう。
rk「…Broooockが飛び降りるのなら私は君よりも先に飛び降りる!!」
そう言うと運動神経のいいロコルヤは少し離れたフェンスに向かって駆けて行き、颯爽と登って上に座った。まるで背中に羽が生えているかのように。
Br「ちょっと…危ないって!!」
Br「早く降りなよ」
rk「説得されて素直に降りるとでも思ったか!!私の馬鹿さを甘く見るな~!!」
フェンスに座ってとても楽しそうにけらけら笑っている。強い風が吹いたらあっという間に落ちてってしまいそうではらはらする。心臓に悪い…
Br「はあ…」
rk「あ、そういえば見た?今週のあの漫画」
Br「見たよ!主人公があの敵を倒すシーンはかっこよかったな~」
rk「え!?何それ私まだ見てないんですけど!!」
Br「あ」
rk「…」
ほっぺを膨らませてそっぽを向くというよく漫画で見るような典型的な拗ね方をするロコルヤ。可愛すぎるこの生き物。
Br「ごめんって~拗ねんなよ~」
rk「あーあー次出んのいつだっけ…」
Br「えーっと…来週の火曜日?」
rk「じゃあ、それ出るまで許しません!!怒った!!」
Br「え~」
そうして、また僕の自殺は延期になった。
しょうがない。また今度にしよう。
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いつか僕らは答え合わせするのかな。
死ぬ前に一度、君に僕の気持ちを伝えてみたかった。でも、きっと君は僕を恋愛対象とは見てないだろうから。どうせなら親友という関係のまま何もなく死んでいきたい。
君は素敵な人だから、きっと素敵な相手を見つけて幸せに暮らすだろう。本当は君の恋人として隣にいられる未来を望んでいた。
でも、そんな未来は忘れるまで秘めたまま…
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また今日もいつもの時間、いつもの場所。
今日はロコルヤと僕と、そして数匹の雀がいる。小さな雀の群れを見つけたロコルヤは、雀を観客として出迎えていた。
rk「さあさあレディース・エン・ジェントルメン!これよりお目にかけますは、一世一代の大舞台!長くてもどうぞごゆっくり♪」
芝居掛かった言い方をしながら、ロコルヤは屋上の端に立つ。その様子はとても滑稽だが、どこか神秘的で思わず息を飲む。
ゆっくりとフェンスの上に登り、下を見下ろしている。その姿は、今にも落ちてしまいそうで怖い。
ふと、目が合った。
すると、彼女は優しく微笑んだ。
rk「…じゃあ、いこっか」
何も言わず無言でうなずくと、またこの間と同じように手をつないで、彼女と同じようにフェンスの上に座って向かい合う。
下をのぞくと、グラウンドに体育の授業をしている生徒たちが見える。誰もこちらには気づいていないようで、こんなに寒い冬でも汗を流しながら楽しそうにサッカーをしている。
今この瞬間だけは、冷たい風の音と、雀のさえずりしか聞こえない。まるでこの世界には、雀と僕ら二人だけになってしまったかのような沈黙がしばらく続いた。
その長いように感じた沈黙を最初に破ったのはロコルヤだった。
rk「…次に私たちが出会う世界でもこんなふうになれたらいいね」
こんなふうに…か。僕は親友じゃなくて恋人が良かったけど、確かに君と過ごす日々だけは本当に楽しかった。次に出会う世界がどんな世界かはわからないが、せめて…
Br「生まれ変わったら何になるか、本で占ってみようか?」
rk「お、それいいね!」
パラパラ、と本をめくる。よくある誕生日でわかる簡単な占いだ。結果は…
rk「Broooockが玉ねぎで、私がタイヤ…?」
Br「えぇwwwwなにこれww」
rk「今死んだらこれになっちゃうの!?やだやだ!!」
Br「うん…wこれは確かに嫌だね」
rk「やっぱり…飛ぶの後でにしない?」
Br「ふっ…そうだね!そうしよう!」
フェンスの上から飛び降りて、振り返ってロコルヤに手を差し出す。
Br「じゃあ、ほんとのほんとーに飛べる日目指してもうちょっとだけ一緒にいませんか?」
ちょっとプロポーズっぽくしたかったけど、やっぱり人を愛す資格がない僕にそんな約束はできないから。普通に手を伸ばしてせめて最期まで一緒にいられるように。
rk「喜んで!」
するとロコルヤはうれしそうに笑って叫ぶ。フェンスの上からジャンプして僕の胸に飛び込んできた。まさか飛び込んでくると思わなかったので「ぐえっ」と情けない声は出してしまったが、小さくて愛おしい彼女の体はしっかり受け止め、強く抱きしめた。
勢いに負けてそのまま地面に倒れこむ。背中は打ってしまったが今僕はとても幸せだ。
このままこの時間が過ぎてくれればいいのに。と叶わない願いをのせて、雀たちが大空へ飛び立っていった。
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