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クリスマスにまつわる小話 2本

「ま、マンカス!」

珍しく声を上げて汗だくで飛び込んできた黒猫を見て目を見開く。
腕には、昨日の夜こっそり寝床に忍び込み枕元に置いておいたクリスマスプレゼントが抱えられている。

俺の予想では俺の膝の上で喜んでいるシラバブのように嬉しさいっぱいで教会に飛び込んでくるかと思っていただけに、この反応は思わず頭を抱えた。

そうだった、この子はクリスマスを知らないんだった。

「な、なんか、起きたら知らないものが置いてあって…な、なんだろうコレ、ど、どうしたらいい…!?」

ミストはプレゼントを抱えながら半泣きでパニック状態になっている。
なんともクリスマスの朝には不似合いな光景だった。

…さて、昨日に引き続きミストに対して軽率な行動をとってしまったわけだが……どうする。
まさかシラバブがいる前でサンタは自分だと言ってしまうわけには行かない。
だがそうなるとミストは得体の知れぬものが自分と寝床に置かれていた事に恐怖を抱いてしまう。
そしてなにより、時間をかけてようやく夜に安心して眠れるようになったというのに……また前のような浅い眠りを繰り返して疲弊するミストは見たくない。


どうする、考えろ…考えるんだ…マンカストラップ……

「あー!ミストお兄ちゃんにもプレゼントが届いたんだねー!」

その声にハッとした。
シラバブが膝から降りてタタタとミストの方へ走り出す。

「プレゼント…?」

怪訝そうにミストはシラバブの言葉を繰り返した。

「クリスマスプレゼントだよ!サンタさんからの!」

「さんた…さん…?」

笑顔いっぱいのシラバブに毒気を抜かれたのか、不思議そうに言葉を繰り返す。
シラバブは楽しそうにミストに抱きついた。
ミストはシラバブを抱きとめたが、バランスを崩して尻餅をついた。

「そうだよ!バブもいい子にしてたからサンタさんが来たの!」

ほら!といって先程自分が付けてやった髪留めをミストに見せる。
一ヶ月も前からバブのために選んだそれは、バブにとてもよく似合っていた。

「…その髪留めを貰ったの…?その…えと…」

「サンタさん!…もしかして、ミストお兄ちゃんはサンタさん知らないの?」

シラバブの言葉にぐっとミストに力が入るのが分かった。
でも、すぐに力を抜いてへにゃりと困ったように笑った。

「…うん、僕…サンタさん分からない。クリスマスもよく分からないんだ。」

それを聞いたバブはミストのようすなどつゆ知らず目を輝かせた。

「じゃあ!バブが教えてあげる!」

それを聞いてフッと笑みがこぼれた。
なんだ、心配なんて、何もいらなかったじゃないか。

バブの嬉しそうな様子を見てミストは目を見開いて、そしてクスッと笑った。

「うん、僕にクリスマスこと、たくさん教えて。」

どうやら俺の出番はなさそうだな。


外ではまだ雪が降り続いていて、外にたてられたクリスマスツリーには少し雪が積もっていた。
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