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クリスマスにまつわる小話 2本

「クリスマスって、なに?」

しばし時が止まった
ような気がした。

目の前の黒猫はそんな俺の様子を見て本当に何も知らない様子で首を傾げる。

可愛い。
いや、そうじゃない。問題はそこじゃない。

「ミスト…本当にクリスマスを知らないのか?」

そう言うと黒猫はしゅんと耳を垂れた。

「うん…知らない…。…変、だよね…僕…。」

それを聞いてハッとする。
この猫は他と違う事を何よりも恐れるのだった。
それを思い出し頭を撫でてやる。

「いや、全く変じゃないぞ。」

自分の発言がそういう意図を含んでいない事を示すように明るい声で。

「…ほんと?」

こちらを上目遣いで見る。
いつもの瞳よりほんのり潤んでいるのは気のせいでは無いだろう。
自分はなんて軽率だったんだ。
過去にどれだけ辛い思いをしたのかはわからないが、それでもこの群れに来た時のミストの様子を思い返せば辛さは自分の想像を遥かに超えるのだろう。

「ああ、本当さ。」

できる限りの優しい声で語りかける。

「誰だって知らないことはある。俺だって、いっぱいある。」

そういうとミストの瞳に光が灯る。

「マンカスも…?」

「ああ。知らないことも分からないことも数え切れないほどあるよ。」

ミストはこちらをじっと見て次の言葉を待っているようだ。

「だけど、それは恥ずかしい事じゃない、おかしなことでもない。当たり前のことなんだ。」

そう言い切ったところでなんだか少し恥ずかしくなって、ミストをひょいと持ち上げて胡座をかいている上にちょこんと座らせた。
後ろから抱きしめる形で座らせたミストは身動ぎを少ししてそのままじっと座っていた。

「知らないなら、教えてもらえばいいんだ。誰でもいい。オールドデュトロノミーでも、ジェニエニドッツでも、ランパスでもジェリーロラムでも、誰でもいい。俺だってもちろん教えてやる。」

そういうとミストはポスっと俺に体を投げた。

「…ありがとう、マンカス。」

どうやらすっかり落ち着いたようで、そう言ったのはいつもの大人しくて大人びたミストフェリーズだった。

「そうだ、クリスマスには毎年ジェニエニドッツがご馳走を作ってくれて、それを皆で食べるんだ。明日、一緒に行こうか。」

「へぇ、それは楽しみだね。」

外はしんしんと雪が降っていて、まだまだやみそうにはなかった。

明日は、ホワイトクリスマスだな。
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