ヴィルケイss
……ちょっとした贈り物ならいざ知らず、誕生日のプレゼントっていうのは悩むものなのよ。何を手に取ってもしっくりこない。いえ、こないってことはないんだけど、あれも良いこれも良いで決定打に欠ける。そしてアタシって自分で言うのもなんだけど、財力だけはあるからとりあえず買ってしまったりして、今、途方に暮れてるってわけ。寮の自室がプレゼントボックスの山!綺麗にラッピングされた箱が全ての机と椅子の上、ドレッサーやカウチの上にまで所狭しと置いてあるからアタシの居場所はベッドだけ。子供が見たら目を輝かせそうな色取り取りのこの惨状を前に、鏡に映るアタシは死んだ魚の目をしてるのよね。
ケイトの誕生日は明日……どうしよう。
付き合って初めての誕生日。いきなりガッカリされたくはないし、これを理由に別れるなんてことになりたくない。ダサいものは贈れないけれど、高価なものを当てにされるのも悲しいわよね。そもそも以前アタシのジュエリーをあげようとした時に「金目当てだと思ってるの?馬鹿にしないで」って怒られたのを肝に銘じてる。だからこそ困ってるのよね。アタシって何を買ってプレゼントすればかっこいいの?
……こんな思考がダサいわよね。この部屋がもうダサいわけだし。相手が喜ぶものが分からないからって、かっこつけに走るなんて我ながら見るに堪えないわ。
カウチの一番上にあった手のひらサイズのオレンジの箱を手に取って蓋を開ける。中にはタイピンが収まっていた。もうどの箱に何が入ってるのかも朧げ。このタイピンは緑の石がケイトの眼みたいで綺麗だったから買ったものだわ。その下の箱も開けるとこっちにはニットの帽子が入ってる。最近寒かったからあの子の耳が冷えないようにって用意した。あっちの机の赤い箱、思い出した。普段履いてる靴の底が擦り減ってきたって嘆いてたから選んだ物だったわね。
この部屋はアタシだ。アタシの脳内そのもの。ケイトのことばかり考えて行動してケイトの為に準備されたプレゼントに埋もれた愛の部屋。なんて、聞こえが良いように言ってみてもただの散らかった部屋よね。
はーもう、やめやめ。考えを中断して一旦トレーニングに出ましょう。
立ち上がって黒いウェアに着替えたところで部屋のドアがノックされた。ボールルームで十七時に待ち合わせてるルークが呼びに来たんだわ。時刻は十六時五十分、現地で待ち合わせでも良いじゃないと思いつつ「どうぞ」と応えると、扉を開けたのは我が寮の副寮長ではなかった。
「ヴィルくん、明日さ……おわっ!?」
話しながら入ってきたケイトはアタシの部屋に入るなり目を見開いて固まった。そうよね、わかるわ、その気持ち。何なの?この部屋!?ってアタシも思ってるもの。しかしケイトはふっといつものにこやかな表情に戻ってドアを閉めてアタシに近付く。
「ヴィルくん、明日ね……」
「聞かないの?この箱の山のこと」
聞かれない方が都合が良いのに気になってしまうのは仕方ないわよね。だって、この子の性格上何気なしに聞いてきそうなのに、何故こんなにもバツが悪そうな顔をしてるのかしら。
「あー……ファンの子たちからのプレゼント?いつもは実家に送られるでしょ?わざわざこの部屋に集めたのはオレへのプレゼントとして横流ししようとしてるってこと?」
「そんなことしない!!」
驚いた。アタシがそんなケチな男に見えてるの?人からもらったものをあげるくらい、アンタのことをどうでもいい存在だと思ってるって?ショックだわ。だってアタシ、部屋がこんなに埋まるまでケイトのことだけを考えていたのに。
「全部、アンタの為に買ったものよ……」
視界が揺れる。何だか悲しくて怒りがこみ上げるのに怒れもしない。アタシの気持ちの行き場がなくなってしまったみたいで足が重くて、ベッドに腰掛けた。ケイトは途端におろおろして勢いよくアタシの頭を抱える。
「ごめんね!こんなに買うなんて思わなくて!本当に失礼なこと言った。ごめんなさい」
「……いいの。だって一つに決められずにこんなに迷ってるなんてバカらしいじゃない。誤解されるような状況がおかしいのよ」
「そんなことない!いっぱい悩んでくれたんでしょ?これだけ、オレのこと好きって思ってくれたってことでしょ?プレゼントの数だけヴィルくんの好きって気持ちなんだよね。凄く嬉しいよ。どうもありがとう」
そうよ、好きが溢れて止まらない。この先ずっとそうなんだと思うわ。永遠なんて無いとわかってるけど、それでも今この瞬間は一生彼を好きだと信じてる。だから悲しくなるし、笑顔一つで嬉しくなる。アタシってチョロい。ケイトの腰に腕を回して抱き着くと、ケイトは腕の力をより一層込めてアタシのおでこに頬ずりした。
「今年は一つだけ貰うね」
「一つだけ?全部貰ってよ」
「ダメ。毎年一つずつ。誕生日プレゼントはもう買わなくて良いよ。この中から毎年一つ必ずちょうだい」
「寿命が先に尽きるでしょうけど……」
「えへへ」
はにかむこの子の欲望が透けて見えた。アンタもこの先ずっとアタシと一緒に居たいって思ってくれてるってことよね。何十年も先の未来に、年齢にそぐわない幼稚なプレゼントを嬉しそうに抱えるケイトが見られるならこんなに嬉しいことはないわ。そのお願い聞き入れてあげましょう。
あら?これってプロポーズじゃない?いいわ。アタシの誕生日にアタシからもプロポーズをしてあげる。その時にはとびっきりの贈り物を抱えきれないほど準備するわ。だって、誕生日プレゼント以外はノーカウントだものね?
ケイトの誕生日は明日……どうしよう。
付き合って初めての誕生日。いきなりガッカリされたくはないし、これを理由に別れるなんてことになりたくない。ダサいものは贈れないけれど、高価なものを当てにされるのも悲しいわよね。そもそも以前アタシのジュエリーをあげようとした時に「金目当てだと思ってるの?馬鹿にしないで」って怒られたのを肝に銘じてる。だからこそ困ってるのよね。アタシって何を買ってプレゼントすればかっこいいの?
……こんな思考がダサいわよね。この部屋がもうダサいわけだし。相手が喜ぶものが分からないからって、かっこつけに走るなんて我ながら見るに堪えないわ。
カウチの一番上にあった手のひらサイズのオレンジの箱を手に取って蓋を開ける。中にはタイピンが収まっていた。もうどの箱に何が入ってるのかも朧げ。このタイピンは緑の石がケイトの眼みたいで綺麗だったから買ったものだわ。その下の箱も開けるとこっちにはニットの帽子が入ってる。最近寒かったからあの子の耳が冷えないようにって用意した。あっちの机の赤い箱、思い出した。普段履いてる靴の底が擦り減ってきたって嘆いてたから選んだ物だったわね。
この部屋はアタシだ。アタシの脳内そのもの。ケイトのことばかり考えて行動してケイトの為に準備されたプレゼントに埋もれた愛の部屋。なんて、聞こえが良いように言ってみてもただの散らかった部屋よね。
はーもう、やめやめ。考えを中断して一旦トレーニングに出ましょう。
立ち上がって黒いウェアに着替えたところで部屋のドアがノックされた。ボールルームで十七時に待ち合わせてるルークが呼びに来たんだわ。時刻は十六時五十分、現地で待ち合わせでも良いじゃないと思いつつ「どうぞ」と応えると、扉を開けたのは我が寮の副寮長ではなかった。
「ヴィルくん、明日さ……おわっ!?」
話しながら入ってきたケイトはアタシの部屋に入るなり目を見開いて固まった。そうよね、わかるわ、その気持ち。何なの?この部屋!?ってアタシも思ってるもの。しかしケイトはふっといつものにこやかな表情に戻ってドアを閉めてアタシに近付く。
「ヴィルくん、明日ね……」
「聞かないの?この箱の山のこと」
聞かれない方が都合が良いのに気になってしまうのは仕方ないわよね。だって、この子の性格上何気なしに聞いてきそうなのに、何故こんなにもバツが悪そうな顔をしてるのかしら。
「あー……ファンの子たちからのプレゼント?いつもは実家に送られるでしょ?わざわざこの部屋に集めたのはオレへのプレゼントとして横流ししようとしてるってこと?」
「そんなことしない!!」
驚いた。アタシがそんなケチな男に見えてるの?人からもらったものをあげるくらい、アンタのことをどうでもいい存在だと思ってるって?ショックだわ。だってアタシ、部屋がこんなに埋まるまでケイトのことだけを考えていたのに。
「全部、アンタの為に買ったものよ……」
視界が揺れる。何だか悲しくて怒りがこみ上げるのに怒れもしない。アタシの気持ちの行き場がなくなってしまったみたいで足が重くて、ベッドに腰掛けた。ケイトは途端におろおろして勢いよくアタシの頭を抱える。
「ごめんね!こんなに買うなんて思わなくて!本当に失礼なこと言った。ごめんなさい」
「……いいの。だって一つに決められずにこんなに迷ってるなんてバカらしいじゃない。誤解されるような状況がおかしいのよ」
「そんなことない!いっぱい悩んでくれたんでしょ?これだけ、オレのこと好きって思ってくれたってことでしょ?プレゼントの数だけヴィルくんの好きって気持ちなんだよね。凄く嬉しいよ。どうもありがとう」
そうよ、好きが溢れて止まらない。この先ずっとそうなんだと思うわ。永遠なんて無いとわかってるけど、それでも今この瞬間は一生彼を好きだと信じてる。だから悲しくなるし、笑顔一つで嬉しくなる。アタシってチョロい。ケイトの腰に腕を回して抱き着くと、ケイトは腕の力をより一層込めてアタシのおでこに頬ずりした。
「今年は一つだけ貰うね」
「一つだけ?全部貰ってよ」
「ダメ。毎年一つずつ。誕生日プレゼントはもう買わなくて良いよ。この中から毎年一つ必ずちょうだい」
「寿命が先に尽きるでしょうけど……」
「えへへ」
はにかむこの子の欲望が透けて見えた。アンタもこの先ずっとアタシと一緒に居たいって思ってくれてるってことよね。何十年も先の未来に、年齢にそぐわない幼稚なプレゼントを嬉しそうに抱えるケイトが見られるならこんなに嬉しいことはないわ。そのお願い聞き入れてあげましょう。
あら?これってプロポーズじゃない?いいわ。アタシの誕生日にアタシからもプロポーズをしてあげる。その時にはとびっきりの贈り物を抱えきれないほど準備するわ。だって、誕生日プレゼント以外はノーカウントだものね?
