まほやく短編
Name Cange
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ミスラは今日も眠れなかった。
奇妙な傷のせいで眠れない日々が続き、いつも朝方は不機嫌な事が多いが、今日はいつにも増して機嫌が悪い。
その原因は分からない。
ミスラ本人ですら、なぜ自分がこんなにもイライラしているのか気がついていないのだから、他人が分かるはずもない。
「ミスラちゃん、どうしたんじゃ?」
「何かあったんかのう?」
スノウとホワイトも不思議そうに見ている。
他の魔法使いたちはとばっちりを受けたくないからと、ミスラに話しかける者はいない。
そんな中、ミスラを見つけるや否や笑顔で近づく強者が一人いた。
「ミスラさんおはようございます」
「…はあ。おはようございます、ルチル」
「何だか元気がないですね?」
「そうですか」
「何か嫌なことでもあったんですか?」
「いえ。特には」
そっけなく返答するミスラに対して、怯むことなくルチルはミスラに話しかける。
ミスラは鬱陶しがることもないが、ちゃんと話す気もないようだった。
「もしかして、なまえさんと何かありました?」
ぴく、とミスラの肩がほんの少し反応した。
ルチルは基本的に穏やかでふわっとしている性格だが、しっかり者で他人をよく見ている。
広間に来る前に見かけたなまえもまた、ミスラ同様元気がなかったのを見逃していなかったルチルは直感的にそう思ったのだった。
「…大嫌い、と言われました」
「え?なまえさんに、ですか?」
「はい」
「何か嫌われるようなことしたんですか?」
「…昨日なまえのベッドで寝ました。怒ってたけど、それですかね?」
「また勝手に人の部屋に入ったんですか?」
以前も賢者の部屋に勝手に入った事があり、その時もルチルに怒られたのだった。
「ちゃんと了承を得てからじゃないとダメですよ」
「分かりました」
「ほんと、ミスラさんはぼんやりさんなんだから。なまえさんにごめんなさいして許してもらいましょうね」
はい、と素直に頷くミスラと笑顔のルチル。
朝食を取りながら様子を伺っていた他の魔法使いたちは安堵の溜め息を吐いていた。
そこに丁度良いタイミングでなまえがやってくる。
「あ、ミスラさん。ほら!」
「…」
ルチルに背中を押されて、ミスラはゆっくりなまえに近づく。
『ミスラさん…?』
「昨日は、すみませんでした。俺が悪かったです」
『え?』
「だってあなた、俺のこと大嫌いって言ったじゃないですか」
『あ…聞こえてたんですか』
「謝ったので、訂正してください」
『…本当に悪いと思ってます?』
なまえの問いに、ミスラは宙を見つめ始める。
これはマズイと思ったルチルは、慌ててミスラに向かって口をパクパクさせる。
こちらに気づいたミスラに、ジェスチャーで謝るような動きをしてみたものの、特に何の反応も示さずになまえに向き直った。
「…正直、何が悪いのか良く分かりませんけど、でもあなたは嫌だったんですよね。嫌なことをしたなら謝ります」
『ふふ、ミスラさんってほんと変な人だなあ』
「喧嘩売ってます?」
『とんでもない。ちゃんと謝ってくれたので許します。そして大嫌いって言ったのも訂正します。大好きですよ。』
「はあ、どうも」
返事は素っ気なかったが、大好きと言われて先ほどまで感じていたイライラがすっと消えていることに気づいたミスラは、目の前で穏やかに笑っている少女を不思議そうに見つめる。
どうして、彼女の一言一言にこんなにも気持ちが揺らぐのか。
その理由に気づくのは、まだ先になりそうだ。
おわり
奇妙な傷のせいで眠れない日々が続き、いつも朝方は不機嫌な事が多いが、今日はいつにも増して機嫌が悪い。
その原因は分からない。
ミスラ本人ですら、なぜ自分がこんなにもイライラしているのか気がついていないのだから、他人が分かるはずもない。
「ミスラちゃん、どうしたんじゃ?」
「何かあったんかのう?」
スノウとホワイトも不思議そうに見ている。
他の魔法使いたちはとばっちりを受けたくないからと、ミスラに話しかける者はいない。
そんな中、ミスラを見つけるや否や笑顔で近づく強者が一人いた。
「ミスラさんおはようございます」
「…はあ。おはようございます、ルチル」
「何だか元気がないですね?」
「そうですか」
「何か嫌なことでもあったんですか?」
「いえ。特には」
そっけなく返答するミスラに対して、怯むことなくルチルはミスラに話しかける。
ミスラは鬱陶しがることもないが、ちゃんと話す気もないようだった。
「もしかして、なまえさんと何かありました?」
ぴく、とミスラの肩がほんの少し反応した。
ルチルは基本的に穏やかでふわっとしている性格だが、しっかり者で他人をよく見ている。
広間に来る前に見かけたなまえもまた、ミスラ同様元気がなかったのを見逃していなかったルチルは直感的にそう思ったのだった。
「…大嫌い、と言われました」
「え?なまえさんに、ですか?」
「はい」
「何か嫌われるようなことしたんですか?」
「…昨日なまえのベッドで寝ました。怒ってたけど、それですかね?」
「また勝手に人の部屋に入ったんですか?」
以前も賢者の部屋に勝手に入った事があり、その時もルチルに怒られたのだった。
「ちゃんと了承を得てからじゃないとダメですよ」
「分かりました」
「ほんと、ミスラさんはぼんやりさんなんだから。なまえさんにごめんなさいして許してもらいましょうね」
はい、と素直に頷くミスラと笑顔のルチル。
朝食を取りながら様子を伺っていた他の魔法使いたちは安堵の溜め息を吐いていた。
そこに丁度良いタイミングでなまえがやってくる。
「あ、ミスラさん。ほら!」
「…」
ルチルに背中を押されて、ミスラはゆっくりなまえに近づく。
『ミスラさん…?』
「昨日は、すみませんでした。俺が悪かったです」
『え?』
「だってあなた、俺のこと大嫌いって言ったじゃないですか」
『あ…聞こえてたんですか』
「謝ったので、訂正してください」
『…本当に悪いと思ってます?』
なまえの問いに、ミスラは宙を見つめ始める。
これはマズイと思ったルチルは、慌ててミスラに向かって口をパクパクさせる。
こちらに気づいたミスラに、ジェスチャーで謝るような動きをしてみたものの、特に何の反応も示さずになまえに向き直った。
「…正直、何が悪いのか良く分かりませんけど、でもあなたは嫌だったんですよね。嫌なことをしたなら謝ります」
『ふふ、ミスラさんってほんと変な人だなあ』
「喧嘩売ってます?」
『とんでもない。ちゃんと謝ってくれたので許します。そして大嫌いって言ったのも訂正します。大好きですよ。』
「はあ、どうも」
返事は素っ気なかったが、大好きと言われて先ほどまで感じていたイライラがすっと消えていることに気づいたミスラは、目の前で穏やかに笑っている少女を不思議そうに見つめる。
どうして、彼女の一言一言にこんなにも気持ちが揺らぐのか。
その理由に気づくのは、まだ先になりそうだ。
おわり