第3話
Name Cange
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万里が出ていってから一週間くらい過ぎた頃。
学校では学年が違う為そんなに会う機会もなく、とても寂しい毎日を送っている……はずもなく。
あれからというもの、本当に毎晩電話がかかってくるから恐ろしい。
出ないと更に面倒そうだから一応ちゃんと出るけど、ほとんどが愚痴だった。
ヤクザのおっさんが口うるさいとか朝練が面倒臭いとか。
そして一番話題に上がるのが"兵頭"という名前。
万里はこれまで負けたことがなかった故に、他人に執着することはなかった。
そんな万里が今、"兵頭"という人の話ばかりしている。
最初はどうなることかと不安だったけど、万里にとって良い方に変わっているなら私は嬉しいと思う。
「ねえねえ、摂津さん」
『?』
そんなある日、学校で移動教室の授業が終わって、教室に戻ろうとしてい時だった。
女子数名に名前を呼ばれたけど、誰一人として知らない顔だった。
「あのさ、これ…万里先輩に渡してほしいんだけど、お願いできるかな?」
『…』
なるほど、そういうことか。
万里に気がある女子はたくさんいる。
そしてその中には妹の私を利用して近づこうとする者もしばしばいる。
目の前の女子が渡してきたのは綺麗にラッピングされたお菓子と連絡先が書かれた紙。
『悪いけどそれはできない』
「え?」
『万里のことが好きなら本人に直接渡せばいいよ』
「それができないから頼んでるんでしょ?」
『何で?好きな相手に直接好きだと伝えれないなら好きになる意味なんてないと思うけど。本気で好きならもっと相手に誠実に向き合いなよ』
「なっ!妹だからって調子に乗って…!」
『本当のこと言っただけ。他人に頼る前に好きになってもらう努力でもしたら?』
「ちょっとあんた…!」
目の前の女が顔を真っ赤にさせ、私に掴みかかってこようとしたが、ある人物によって女は瞬時に体勢を戻した。
女の視線を追ってみると、気だるそうな雰囲気の男子生徒が私たちを見ていた。
「う、碓氷くん…!」
女は慌てたように髪を整え、今度は違う意味で顔を真っ赤に染めていた。
そして仲間を連れて走って逃げていってしまった。
なんなんだ、ただのミーハー女子かよ。断って正解だった。
そう心の中で悪態をつき、タメ息を漏らした。
「あんた、名前は?」
『…はい?』
「名前、何?」
『摂津なまえだけど』
「そう…」
『碓氷君、だっけ?』
「同じクラスなのに知らないのかよ」
『君、今私の名前聞いたばっかりだよね?』
碓氷君はどうやら私と同じクラスだったらしい。
確かによく見ると見たことある顔だ。
私は他人の顔と名前を覚えるのが苦手、というよりも興味がない。
名前を聞いてきたってことは碓氷君も同じような感じなのだろうか。
「さっきの言葉、良かった」
『はい?』
「本気で好きならもっと相手に誠実に向き合いなよ、ってやつ」
『聞いてたんだ』
「俺に寄ってくる全ての女に言ってほしい」
『まさかのそっち側目線』
確かに、見るからにモテそうな容姿をしてらっしゃる。
会話もそこそこに彼はフラッとどこかへ行ってしまった。
碓氷君はなんというか独特な雰囲気を纏っている。
クラスメイトの顔と名前を一度で覚えたのはこれが初めてだった。
つづく
学校では学年が違う為そんなに会う機会もなく、とても寂しい毎日を送っている……はずもなく。
あれからというもの、本当に毎晩電話がかかってくるから恐ろしい。
出ないと更に面倒そうだから一応ちゃんと出るけど、ほとんどが愚痴だった。
ヤクザのおっさんが口うるさいとか朝練が面倒臭いとか。
そして一番話題に上がるのが"兵頭"という名前。
万里はこれまで負けたことがなかった故に、他人に執着することはなかった。
そんな万里が今、"兵頭"という人の話ばかりしている。
最初はどうなることかと不安だったけど、万里にとって良い方に変わっているなら私は嬉しいと思う。
「ねえねえ、摂津さん」
『?』
そんなある日、学校で移動教室の授業が終わって、教室に戻ろうとしてい時だった。
女子数名に名前を呼ばれたけど、誰一人として知らない顔だった。
「あのさ、これ…万里先輩に渡してほしいんだけど、お願いできるかな?」
『…』
なるほど、そういうことか。
万里に気がある女子はたくさんいる。
そしてその中には妹の私を利用して近づこうとする者もしばしばいる。
目の前の女子が渡してきたのは綺麗にラッピングされたお菓子と連絡先が書かれた紙。
『悪いけどそれはできない』
「え?」
『万里のことが好きなら本人に直接渡せばいいよ』
「それができないから頼んでるんでしょ?」
『何で?好きな相手に直接好きだと伝えれないなら好きになる意味なんてないと思うけど。本気で好きならもっと相手に誠実に向き合いなよ』
「なっ!妹だからって調子に乗って…!」
『本当のこと言っただけ。他人に頼る前に好きになってもらう努力でもしたら?』
「ちょっとあんた…!」
目の前の女が顔を真っ赤にさせ、私に掴みかかってこようとしたが、ある人物によって女は瞬時に体勢を戻した。
女の視線を追ってみると、気だるそうな雰囲気の男子生徒が私たちを見ていた。
「う、碓氷くん…!」
女は慌てたように髪を整え、今度は違う意味で顔を真っ赤に染めていた。
そして仲間を連れて走って逃げていってしまった。
なんなんだ、ただのミーハー女子かよ。断って正解だった。
そう心の中で悪態をつき、タメ息を漏らした。
「あんた、名前は?」
『…はい?』
「名前、何?」
『摂津なまえだけど』
「そう…」
『碓氷君、だっけ?』
「同じクラスなのに知らないのかよ」
『君、今私の名前聞いたばっかりだよね?』
碓氷君はどうやら私と同じクラスだったらしい。
確かによく見ると見たことある顔だ。
私は他人の顔と名前を覚えるのが苦手、というよりも興味がない。
名前を聞いてきたってことは碓氷君も同じような感じなのだろうか。
「さっきの言葉、良かった」
『はい?』
「本気で好きならもっと相手に誠実に向き合いなよ、ってやつ」
『聞いてたんだ』
「俺に寄ってくる全ての女に言ってほしい」
『まさかのそっち側目線』
確かに、見るからにモテそうな容姿をしてらっしゃる。
会話もそこそこに彼はフラッとどこかへ行ってしまった。
碓氷君はなんというか独特な雰囲気を纏っている。
クラスメイトの顔と名前を一度で覚えたのはこれが初めてだった。
つづく