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なんだか喉が痛いなと思っていたら、とうとう声が出なくなった。
といっても深刻な病気ではなく、ただ風邪を引いただけだ。残業続きで、知らず知らずのうちに疲れが溜まっていたのかもしれない。
幸い熱は出ていないので、いつも通り出勤できそうだと思ったが……、同じ過ちを繰り返すわけにはいかない。今回は「医者の指示」をきちんと守り、私は数日間の休暇を取った。
そして今日は、レイが看病しに来てくれる日だ。
「もうすぐ着く」というメッセージが届いてから、私は玄関で待機していた。インターホンの音が聞こえた瞬間にドアを開けると、予想通り、レイは不意を突かれたようだった。
「体調はどうかと聞く予定だったが、その様子なら大丈夫そうだな」
返事をしようと口を開きかけたところで、声が出せないことを思い出す。私は慌ててスマホを取り出し、メモ帳アプリに文字を打ち込んだ。
『たくさん寝たおかげでだいぶ良くなったよ。喉の調子はまだ悪いけど』
彼は画面に表示されている文章を目で追った後、私に視線を移した。
「食欲はあるか?」
その質問なら、声を出さなくても簡単に返事ができる。勢いよく頷くと、レイはスーパーの袋を持ち上げて微笑んだ。
机の上には、レイが作ってくれたお粥と卵スープが並んでいる。何となく甘えたくなってレイの顔を見上げると、なぜか彼は首を横に振った。
「唐辛子に含まれるカプサイシンは粘膜を刺激し、喉の痛みを悪化させる。腹が減っているのはわかるが、しばらく火鍋は控えた方がいい」
『レイシェフの料理にクレームをつけたわけじゃないよ!』
そこまで食い意地が張っていると思われていたのは心外だ。仕方なく自分で食べようと手を伸ばしたが、既にスプーンはレイの手中にあった。
「わかっている。……ほら、口を開けろ」
彼はスープをひとさじすくい取ると、口元に近づけてきた。私の「要求」を理解しているくせに、さっきはわざと意地悪をしたのだ。眉間にしわを寄せて怒ったふりをしながら、しぶしぶ口を開く。
「……」
レイが作ったスープは、ここ数日アイスの食べすぎで冷えていた私の体を温めてくれた。卵はふわふわしているし、とろみがついているから飲み込みやすい。そして何より——彼みたいに優しい味がした。
『この料理を作ったシェフを呼んでくれる?』
「レイシェフは今忙しいから、代わりにレイが聞こう」
彼に覗かれないようスマホの画面を手で隠しながら、こそこそと文字を入力する。それから「髭をたくわえた厳格な老紳士」になりきって大真面目な表情を作り、画面に映るメッセージを見せた。
『今まで飲んだスープの中で一番おいしい!』
レイに夕食を食べさせてもらう中で、私はあることに気がついた。自分が立てた仮説を検証するため、机の上に視線を向けてみる。
「水が飲みたいのか?」
仮説はコンマ二秒で立証された。スマホを使って筆談するまでもなく、表情の変化や些細な仕草から、彼は私が求めていることを瞬時に察してくれる。
……喋っていないのに、どうしてわかるのだろう?
手渡されたマグカップで水を飲みながら、私はレイの顔をじっと見つめた。だいぶ慣れてきたとはいえ、油断すると今でも彼の「感情表現」を見逃すことがある。現に今、眉が一ミリだけ動いた。
「何か言いたそうな顔をしているな」
ようやくメモ帳アプリの出番だ。私はスマホのスリープモードを解除し、彼に質問を投げかけた。
『やっぱりお医者さんにとって、察しの良さは「必須スキル」なの?』
「医者に求められる能力は、医療に関する専門知識や技術だけではない。一人一人の患者と向き合いコミュニケーションを取るためには、当然そのような『スキル』も必要になる。……だが、それは医療現場に限った話だ」
優しい眼差しがこちらに向けられる。マグカップを机に置いた後、レイはお粥を私の口元に運んだ。
「今は医者ではなく、レイの『必須スキル』を使っている」
そこまで言われてしまうと、彼の「スキル」がどこまで通用するのか気になってくる。最後の一口を食べ終わったところで、私はレイに提案した。
『じゃあこの後、ゲームをしない?』
といっても深刻な病気ではなく、ただ風邪を引いただけだ。残業続きで、知らず知らずのうちに疲れが溜まっていたのかもしれない。
幸い熱は出ていないので、いつも通り出勤できそうだと思ったが……、同じ過ちを繰り返すわけにはいかない。今回は「医者の指示」をきちんと守り、私は数日間の休暇を取った。
そして今日は、レイが看病しに来てくれる日だ。
「もうすぐ着く」というメッセージが届いてから、私は玄関で待機していた。インターホンの音が聞こえた瞬間にドアを開けると、予想通り、レイは不意を突かれたようだった。
「体調はどうかと聞く予定だったが、その様子なら大丈夫そうだな」
返事をしようと口を開きかけたところで、声が出せないことを思い出す。私は慌ててスマホを取り出し、メモ帳アプリに文字を打ち込んだ。
『たくさん寝たおかげでだいぶ良くなったよ。喉の調子はまだ悪いけど』
彼は画面に表示されている文章を目で追った後、私に視線を移した。
「食欲はあるか?」
その質問なら、声を出さなくても簡単に返事ができる。勢いよく頷くと、レイはスーパーの袋を持ち上げて微笑んだ。
机の上には、レイが作ってくれたお粥と卵スープが並んでいる。何となく甘えたくなってレイの顔を見上げると、なぜか彼は首を横に振った。
「唐辛子に含まれるカプサイシンは粘膜を刺激し、喉の痛みを悪化させる。腹が減っているのはわかるが、しばらく火鍋は控えた方がいい」
『レイシェフの料理にクレームをつけたわけじゃないよ!』
そこまで食い意地が張っていると思われていたのは心外だ。仕方なく自分で食べようと手を伸ばしたが、既にスプーンはレイの手中にあった。
「わかっている。……ほら、口を開けろ」
彼はスープをひとさじすくい取ると、口元に近づけてきた。私の「要求」を理解しているくせに、さっきはわざと意地悪をしたのだ。眉間にしわを寄せて怒ったふりをしながら、しぶしぶ口を開く。
「……」
レイが作ったスープは、ここ数日アイスの食べすぎで冷えていた私の体を温めてくれた。卵はふわふわしているし、とろみがついているから飲み込みやすい。そして何より——彼みたいに優しい味がした。
『この料理を作ったシェフを呼んでくれる?』
「レイシェフは今忙しいから、代わりにレイが聞こう」
彼に覗かれないようスマホの画面を手で隠しながら、こそこそと文字を入力する。それから「髭をたくわえた厳格な老紳士」になりきって大真面目な表情を作り、画面に映るメッセージを見せた。
『今まで飲んだスープの中で一番おいしい!』
レイに夕食を食べさせてもらう中で、私はあることに気がついた。自分が立てた仮説を検証するため、机の上に視線を向けてみる。
「水が飲みたいのか?」
仮説はコンマ二秒で立証された。スマホを使って筆談するまでもなく、表情の変化や些細な仕草から、彼は私が求めていることを瞬時に察してくれる。
……喋っていないのに、どうしてわかるのだろう?
手渡されたマグカップで水を飲みながら、私はレイの顔をじっと見つめた。だいぶ慣れてきたとはいえ、油断すると今でも彼の「感情表現」を見逃すことがある。現に今、眉が一ミリだけ動いた。
「何か言いたそうな顔をしているな」
ようやくメモ帳アプリの出番だ。私はスマホのスリープモードを解除し、彼に質問を投げかけた。
『やっぱりお医者さんにとって、察しの良さは「必須スキル」なの?』
「医者に求められる能力は、医療に関する専門知識や技術だけではない。一人一人の患者と向き合いコミュニケーションを取るためには、当然そのような『スキル』も必要になる。……だが、それは医療現場に限った話だ」
優しい眼差しがこちらに向けられる。マグカップを机に置いた後、レイはお粥を私の口元に運んだ。
「今は医者ではなく、レイの『必須スキル』を使っている」
そこまで言われてしまうと、彼の「スキル」がどこまで通用するのか気になってくる。最後の一口を食べ終わったところで、私はレイに提案した。
『じゃあこの後、ゲームをしない?』
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