専用コメディアン
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「あはは!」
私の笑い声を聞いて、流れるようにキーボードを叩いていたレイの手が止まる。私は口元を手で押さえながら、恐る恐る彼の様子をうかがった。
「ごめん、仕事の邪魔しちゃった?」
「いや。ちょうど今、メールの確認を終えたところだ」
レイがパソコンを閉じる。どうやら「レイ先生」の時間はこれで終わりのようだ。私はスマホを持ったまま、ソファの上に飛び乗った。
「じゃあレイも見てよ、このショート動画。すごく面白いんだから」
面白いものを見た時、好きな人と共有したくなるのは当然のことだ。私はうきうきとした気分で再生ボタンをタップした。
「……ふふっ」
さっき見たばかりなのに、やっぱり同じところで笑ってしまう。肩を震わせながら、私は彼の顔をこっそりと覗き見て——その表情が微動だにしていないのを確認した。
「……」
真一文字に引き結ばれたレイの唇を見つめている内に、ある疑問が思い浮かぶ。私は動画の再生を止め、スマホを置いた。
「ふと思ったんだけど、あなたって大爆笑することはあるの?」
「……笑う時くらいはある」
「あなたのは『微笑み』でしょ? 大爆笑っていうのは、私がいつもしてるみたいな笑い方だよ」
レイが私の顔をじっと見下ろす。何か面白い光景でも想像したのか、彼の口元が微かに緩んだ。
「つまり、お前がコメディ映画を観ている時のような笑い方のことを指しているのか? なら、ない」
「やっぱり」
レイの返答は予想通りだった。しかし、前人未踏の領域に挑戦したくなるのが人間の性だ。私は胸の前で手を組み、わざとらしく甘えた声を出した。
「レイ先生がお腹を抱えて笑うところ、見てみたいなぁ。ちょっと笑ってみてくれる?」
「断る」
レイは膝の上に置かれている私のスマホを一瞥した。
「誰かさんは、私のショート動画を撮るつもりのようだからな」
「ふん……」
私の企みは、どうやら彼にはお見通しだったみたいだ。
だからといって、このまま何もせず引き下がる訳にはいかない。少し考えた後、私は両手で顔を覆い、下を向いた。
「どうした?」
「目にゴミが入っちゃったみたい。いたた……」
「擦ろうとするな。見せてみろ」
レイの指先が優しく髪をかき分け、額に触れる。彼が顔を覗き込んだ瞬間、私は自分の頬を両手で思いきり押しつぶした。
「……」
「……何をしている?」
「今ちょっと笑いそうになったでしょ」
「気のせいだろう」
レイはそう言って誤魔化したが、目に見えてわかるほど口角が上がっている。ただ、私が披露した渾身の変顔は、彼を「爆笑」させるまでには至らなかったらしい。
「……私だけが変な顔を晒すのは不公平だよ!」
私は手を伸ばし、レイの顔をもみくちゃにした。シャープな印象を与える見た目に反して、彼の頬は……意外と柔らかい。
「ふ、ふふっ……面白い顔……」
「立場が逆転している気がするのだが」
「じゃあ最終手段を使わせてもらうけど、いいの?」
彼の顔を解放した後、威嚇するように両手を上げてみせる。
最終手段という名の物理攻撃——「くすぐり」だ。
手始めに、私はレイの脇腹に指を滑らせた。不意を突くことに成功したと思ったが、彼は一瞬身じろぎしただけで、顔色ひとつ変えない。
「そこは私の弱点ではない」
「それなら、あなたの体を隅々まで調べさせてもらうよ」
太腿、腰、脇の下……私はレイのあらゆる場所に「攻撃」を仕掛けたが、彼の表情が崩れることはなかった。
だけど、私は依然として余裕を保っていた。彼の耳が赤くなっていることに気づいていたからだ。
「『くすぐりに強いレイ先生』の弱点は一体どこにあるのかな?」
白々しい言葉と共に、首筋を指でくすぐる。レイの唇の隙間から、抑えきれなかった吐息が微かに漏れた。
勝利を確信した次の瞬間——いきなり腕を引っ張られ、私は彼の体の上に倒れ込んだ。
「ずるい!」
「反撃しないと誰が言った?」
レイの胸に手をついて起き上がり、彼を睨みつける。どの角度から「攻撃」されても防御できるよう、私は即座に臨戦態勢をとった。
ところが、彼の口から出てきたのは意外な言葉だった。
「……私はいつでも、ナマエと過ごす時間を楽しいと思っている」
思いもよらない反撃に、一瞬口ごもる。手のひらに伝わる心臓の鼓動が、彼が言ったことの全てを証明しているようだった。
もしかすると、不満があるように思わせてしまったのだろうか。からかいすぎたことを少し反省しながら、素直な気持ちを彼に伝える。
「知ってるよ。あなたがどんな顔をしてても好きだから、もっと色んな一面を見てみたくなっただけ。でも……」
鼓動が速くなったことに気づいて、私は笑いながらレイの胸に耳を押し当てた。想像していたよりも騒がしくて、とても可愛い。
「『大爆笑』の代わりに、今日はこれで見逃してあげる」
ソファの上でひとしきりじゃれ合った後、私はひとつの心残りに言及した。
「やっぱり、変顔をもっと練習しようかな?」
本人は否定していたが、あの時の彼は明らかに「爆笑」一歩手前の状態だった。頬をつぶしたり伸ばしたりして試行錯誤する私を見て、レイは苦笑を浮かべた。
「私の『大爆笑』を見るために練習すると言うのなら、おすすめしない」
「どうして? まさか、まだ自分が笑ったことを認めないつもり?」
これは私の名誉に関わる問題だ。尋問しようと身を乗り出し、彼の顔を見上げる。
「確かに笑ったが——厳密に言うと、あの時私が笑ったのは面白かったからではない」
私の頬を軽くつまんで、レイは笑った。
「可愛かったからだ」
私の笑い声を聞いて、流れるようにキーボードを叩いていたレイの手が止まる。私は口元を手で押さえながら、恐る恐る彼の様子をうかがった。
「ごめん、仕事の邪魔しちゃった?」
「いや。ちょうど今、メールの確認を終えたところだ」
レイがパソコンを閉じる。どうやら「レイ先生」の時間はこれで終わりのようだ。私はスマホを持ったまま、ソファの上に飛び乗った。
「じゃあレイも見てよ、このショート動画。すごく面白いんだから」
面白いものを見た時、好きな人と共有したくなるのは当然のことだ。私はうきうきとした気分で再生ボタンをタップした。
「……ふふっ」
さっき見たばかりなのに、やっぱり同じところで笑ってしまう。肩を震わせながら、私は彼の顔をこっそりと覗き見て——その表情が微動だにしていないのを確認した。
「……」
真一文字に引き結ばれたレイの唇を見つめている内に、ある疑問が思い浮かぶ。私は動画の再生を止め、スマホを置いた。
「ふと思ったんだけど、あなたって大爆笑することはあるの?」
「……笑う時くらいはある」
「あなたのは『微笑み』でしょ? 大爆笑っていうのは、私がいつもしてるみたいな笑い方だよ」
レイが私の顔をじっと見下ろす。何か面白い光景でも想像したのか、彼の口元が微かに緩んだ。
「つまり、お前がコメディ映画を観ている時のような笑い方のことを指しているのか? なら、ない」
「やっぱり」
レイの返答は予想通りだった。しかし、前人未踏の領域に挑戦したくなるのが人間の性だ。私は胸の前で手を組み、わざとらしく甘えた声を出した。
「レイ先生がお腹を抱えて笑うところ、見てみたいなぁ。ちょっと笑ってみてくれる?」
「断る」
レイは膝の上に置かれている私のスマホを一瞥した。
「誰かさんは、私のショート動画を撮るつもりのようだからな」
「ふん……」
私の企みは、どうやら彼にはお見通しだったみたいだ。
だからといって、このまま何もせず引き下がる訳にはいかない。少し考えた後、私は両手で顔を覆い、下を向いた。
「どうした?」
「目にゴミが入っちゃったみたい。いたた……」
「擦ろうとするな。見せてみろ」
レイの指先が優しく髪をかき分け、額に触れる。彼が顔を覗き込んだ瞬間、私は自分の頬を両手で思いきり押しつぶした。
「……」
「……何をしている?」
「今ちょっと笑いそうになったでしょ」
「気のせいだろう」
レイはそう言って誤魔化したが、目に見えてわかるほど口角が上がっている。ただ、私が披露した渾身の変顔は、彼を「爆笑」させるまでには至らなかったらしい。
「……私だけが変な顔を晒すのは不公平だよ!」
私は手を伸ばし、レイの顔をもみくちゃにした。シャープな印象を与える見た目に反して、彼の頬は……意外と柔らかい。
「ふ、ふふっ……面白い顔……」
「立場が逆転している気がするのだが」
「じゃあ最終手段を使わせてもらうけど、いいの?」
彼の顔を解放した後、威嚇するように両手を上げてみせる。
最終手段という名の物理攻撃——「くすぐり」だ。
手始めに、私はレイの脇腹に指を滑らせた。不意を突くことに成功したと思ったが、彼は一瞬身じろぎしただけで、顔色ひとつ変えない。
「そこは私の弱点ではない」
「それなら、あなたの体を隅々まで調べさせてもらうよ」
太腿、腰、脇の下……私はレイのあらゆる場所に「攻撃」を仕掛けたが、彼の表情が崩れることはなかった。
だけど、私は依然として余裕を保っていた。彼の耳が赤くなっていることに気づいていたからだ。
「『くすぐりに強いレイ先生』の弱点は一体どこにあるのかな?」
白々しい言葉と共に、首筋を指でくすぐる。レイの唇の隙間から、抑えきれなかった吐息が微かに漏れた。
勝利を確信した次の瞬間——いきなり腕を引っ張られ、私は彼の体の上に倒れ込んだ。
「ずるい!」
「反撃しないと誰が言った?」
レイの胸に手をついて起き上がり、彼を睨みつける。どの角度から「攻撃」されても防御できるよう、私は即座に臨戦態勢をとった。
ところが、彼の口から出てきたのは意外な言葉だった。
「……私はいつでも、ナマエと過ごす時間を楽しいと思っている」
思いもよらない反撃に、一瞬口ごもる。手のひらに伝わる心臓の鼓動が、彼が言ったことの全てを証明しているようだった。
もしかすると、不満があるように思わせてしまったのだろうか。からかいすぎたことを少し反省しながら、素直な気持ちを彼に伝える。
「知ってるよ。あなたがどんな顔をしてても好きだから、もっと色んな一面を見てみたくなっただけ。でも……」
鼓動が速くなったことに気づいて、私は笑いながらレイの胸に耳を押し当てた。想像していたよりも騒がしくて、とても可愛い。
「『大爆笑』の代わりに、今日はこれで見逃してあげる」
ソファの上でひとしきりじゃれ合った後、私はひとつの心残りに言及した。
「やっぱり、変顔をもっと練習しようかな?」
本人は否定していたが、あの時の彼は明らかに「爆笑」一歩手前の状態だった。頬をつぶしたり伸ばしたりして試行錯誤する私を見て、レイは苦笑を浮かべた。
「私の『大爆笑』を見るために練習すると言うのなら、おすすめしない」
「どうして? まさか、まだ自分が笑ったことを認めないつもり?」
これは私の名誉に関わる問題だ。尋問しようと身を乗り出し、彼の顔を見上げる。
「確かに笑ったが——厳密に言うと、あの時私が笑ったのは面白かったからではない」
私の頬を軽くつまんで、レイは笑った。
「可愛かったからだ」
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