夜の心理テスト
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シャワーを浴びた後、レイは私の机に置いてあった本に目を留めた。
「……心理テスト?」
「友達に貸してもらったんだ。気になる?」
本を持ち上げ、顔の前で軽く振ってアピールする。彼は表情を緩めると、私の隣に腰を下ろした。
「どちらかといえば、お前が本を借りた理由の方に興味がある」
「もちろん、レイ先生の深層心理を解き明かすためだよ。あなたの心の奥底には、あなた自身も気づいてない『本当のレイ』が眠ってるかもしれないでしょ?」
今のは適当な建前で、ここからが本題だ。
「それに、これはただの心理テストじゃないよ——」
レイに本の表紙を見せながら、私はタイトルを読み上げた。
「『夜の』心理テストなの」
「……なるほど」
タイトルからも察しがつくように、恋愛テーマの心理テストが集められた本だ。おそらく、お酒の場で男女が盛り上がるために作られたのだろう。
私は本の陰から顔を出し、レイの反応をうかがった。
「えっと……一緒にやってくれる?」
「別に構わないが」
てっきり呆れられると思っていたので、彼がすんなり頷いたのは意外だった。彼は微かに口角を上げて、試すような目で私を見た。
「私も知らない『本当のレイ』を教えてくれるのだろう?」
たぶんレイは、久しぶりのお泊まりだから浮かれている。そして、それは私も同じだった。
「あなたの目の前に可愛いぬいぐるみがあります。どうする? A、部屋に飾る。B、誰かにプレゼントする。C、抱き締める」
「B」
レイの回答を聞いて、結果が書いてあるページをちらりと確認する。私は彼を「説得」するために、真剣な表情を作った。
「よく考えて。可愛い可愛いぬいぐるみだよ? 本当に他の人にあげちゃっていいの?」
私の気迫に押されたのか、レイは観念したように首を振った。
「……Cに変更する」
「このテストでは、あなたの恋人に対する愛情深さがわかります。Cを選んだあなたの愛情度は……百パーセント! このテスト当たってるね」
結果を読み上げた後、私は彼に向かって拍手を送った。ちなみにBの結果は「愛情度二十パーセント。熱しやすく冷めやすい浮気性タイプ」だ。
「今のは不正と言えるのではないか?」
「最後に答えを決めたのはあなただから、不正じゃないよ。……見たら駄目!」
レイが結果のページを覗き込もうとしたので、私は慌てて本を背中に隠した。これが「本当のレイ」だとしたら、たまったものではない。
私は誤魔化すように咳払いをして、彼の顔を見上げた。
「……それより、目の前にいる『可愛いぬいぐるみ』を抱き締めなくていいの?」
指先でレイの体をつつく。次の瞬間には、その手ごと彼の体温に包まれていた。
「これが狙いだったのだな」
耳元でレイが小さく笑う。私は背中に手を回し、心ゆくまで彼の腕の中を堪能した。
「確かにお前の言う通り、このぬいぐるみは可愛すぎてずっと抱き締めていたくなる」
「……わかってくれたならいいんだよ」
レイは一向に腕の力を緩めようとしなかった。薄い布越しに、心臓の脈打つ音が伝わってくる。何だか落ち着かなくなってきて、私は彼の背中を軽く叩いた。
「この体勢だと本が読めないから離れて」
「……ああ」
彼がしぶしぶといった様子で体を離す。私は平静を装いながら『夜の心理テスト』をパラパラとめくり、火照った頬に風を送った。
「これとか面白そうじゃない? 『あなたはどんなキスが好き?』ってやつ」
「とうとう真の目的を隠す気がなくなったな」
彼の指摘を聞き流し、私は問題文を音読した。このページにはご丁寧にイラストまでついている。
「A、おはようとおやすみのキス。B、見つめ合いながら、ロマンチックなキス。C、情熱的で……激しいキス」
思いのほか刺激の強い文面に面食らいつつも、何とか読み終えた。一足先に結果のページを見たが、どれが「本当のレイ」でも支障はなさそうだ。
果たして、レイはどの選択肢を選ぶのだろう。私はドキドキしながら彼が口を開くのを待った。
「……」
「そろそろ決まった?」
「今考えている」
「うん。……、まだ?」
ただの心理テストだから深く考える必要なんてないのに、レイは珍しく熟考していた。先ほど可愛いぬいぐるみの「譲渡」を即決した人と同一人物だとは到底思えない。
彼をからかうアイデアが一つ思い浮かび、私はそれをそのまま声に出した。
「まさか——全部好きだから選べない、なんて言い出すつもりじゃないよね?」
「……私のことをよく理解しているようだな」
「えっ?」
予想外の返答に、一瞬呆気に取られた。からかわれているのかと思ったが、彼の表情は至って真面目で、冗談を言っているようには見受けられない。
「えっと……」
じわじわと顔に熱が集まってくる。
「じゃあ、あなた専用の選択肢『D、レイは全部好き』を追加した方がいい?」
「そうしてくれ」
レイが真顔で頷く。笑いながら、私はページの余白に「D」の文字を指で書いた。
「これだと結果がわからないよ」
「……なら、この本は『本当のレイ』を知るのに適していないということだ」
本に添えていた私の手を、彼が優しく握り込む。「このテストでは、あなたの独占欲の強さがわかります」と書かれていた箇所が、二人分の影で隠れて見えなくなった。
「今後は、お前が身をもって『診断』するといい」
もう片方の手が私の頬に触れ、レイの顔がぐっと近づく。本が閉じられる光景を視界の端に捉えながら、私は目を閉じた。
「……心理テスト?」
「友達に貸してもらったんだ。気になる?」
本を持ち上げ、顔の前で軽く振ってアピールする。彼は表情を緩めると、私の隣に腰を下ろした。
「どちらかといえば、お前が本を借りた理由の方に興味がある」
「もちろん、レイ先生の深層心理を解き明かすためだよ。あなたの心の奥底には、あなた自身も気づいてない『本当のレイ』が眠ってるかもしれないでしょ?」
今のは適当な建前で、ここからが本題だ。
「それに、これはただの心理テストじゃないよ——」
レイに本の表紙を見せながら、私はタイトルを読み上げた。
「『夜の』心理テストなの」
「……なるほど」
タイトルからも察しがつくように、恋愛テーマの心理テストが集められた本だ。おそらく、お酒の場で男女が盛り上がるために作られたのだろう。
私は本の陰から顔を出し、レイの反応をうかがった。
「えっと……一緒にやってくれる?」
「別に構わないが」
てっきり呆れられると思っていたので、彼がすんなり頷いたのは意外だった。彼は微かに口角を上げて、試すような目で私を見た。
「私も知らない『本当のレイ』を教えてくれるのだろう?」
たぶんレイは、久しぶりのお泊まりだから浮かれている。そして、それは私も同じだった。
「あなたの目の前に可愛いぬいぐるみがあります。どうする? A、部屋に飾る。B、誰かにプレゼントする。C、抱き締める」
「B」
レイの回答を聞いて、結果が書いてあるページをちらりと確認する。私は彼を「説得」するために、真剣な表情を作った。
「よく考えて。可愛い可愛いぬいぐるみだよ? 本当に他の人にあげちゃっていいの?」
私の気迫に押されたのか、レイは観念したように首を振った。
「……Cに変更する」
「このテストでは、あなたの恋人に対する愛情深さがわかります。Cを選んだあなたの愛情度は……百パーセント! このテスト当たってるね」
結果を読み上げた後、私は彼に向かって拍手を送った。ちなみにBの結果は「愛情度二十パーセント。熱しやすく冷めやすい浮気性タイプ」だ。
「今のは不正と言えるのではないか?」
「最後に答えを決めたのはあなただから、不正じゃないよ。……見たら駄目!」
レイが結果のページを覗き込もうとしたので、私は慌てて本を背中に隠した。これが「本当のレイ」だとしたら、たまったものではない。
私は誤魔化すように咳払いをして、彼の顔を見上げた。
「……それより、目の前にいる『可愛いぬいぐるみ』を抱き締めなくていいの?」
指先でレイの体をつつく。次の瞬間には、その手ごと彼の体温に包まれていた。
「これが狙いだったのだな」
耳元でレイが小さく笑う。私は背中に手を回し、心ゆくまで彼の腕の中を堪能した。
「確かにお前の言う通り、このぬいぐるみは可愛すぎてずっと抱き締めていたくなる」
「……わかってくれたならいいんだよ」
レイは一向に腕の力を緩めようとしなかった。薄い布越しに、心臓の脈打つ音が伝わってくる。何だか落ち着かなくなってきて、私は彼の背中を軽く叩いた。
「この体勢だと本が読めないから離れて」
「……ああ」
彼がしぶしぶといった様子で体を離す。私は平静を装いながら『夜の心理テスト』をパラパラとめくり、火照った頬に風を送った。
「これとか面白そうじゃない? 『あなたはどんなキスが好き?』ってやつ」
「とうとう真の目的を隠す気がなくなったな」
彼の指摘を聞き流し、私は問題文を音読した。このページにはご丁寧にイラストまでついている。
「A、おはようとおやすみのキス。B、見つめ合いながら、ロマンチックなキス。C、情熱的で……激しいキス」
思いのほか刺激の強い文面に面食らいつつも、何とか読み終えた。一足先に結果のページを見たが、どれが「本当のレイ」でも支障はなさそうだ。
果たして、レイはどの選択肢を選ぶのだろう。私はドキドキしながら彼が口を開くのを待った。
「……」
「そろそろ決まった?」
「今考えている」
「うん。……、まだ?」
ただの心理テストだから深く考える必要なんてないのに、レイは珍しく熟考していた。先ほど可愛いぬいぐるみの「譲渡」を即決した人と同一人物だとは到底思えない。
彼をからかうアイデアが一つ思い浮かび、私はそれをそのまま声に出した。
「まさか——全部好きだから選べない、なんて言い出すつもりじゃないよね?」
「……私のことをよく理解しているようだな」
「えっ?」
予想外の返答に、一瞬呆気に取られた。からかわれているのかと思ったが、彼の表情は至って真面目で、冗談を言っているようには見受けられない。
「えっと……」
じわじわと顔に熱が集まってくる。
「じゃあ、あなた専用の選択肢『D、レイは全部好き』を追加した方がいい?」
「そうしてくれ」
レイが真顔で頷く。笑いながら、私はページの余白に「D」の文字を指で書いた。
「これだと結果がわからないよ」
「……なら、この本は『本当のレイ』を知るのに適していないということだ」
本に添えていた私の手を、彼が優しく握り込む。「このテストでは、あなたの独占欲の強さがわかります」と書かれていた箇所が、二人分の影で隠れて見えなくなった。
「今後は、お前が身をもって『診断』するといい」
もう片方の手が私の頬に触れ、レイの顔がぐっと近づく。本が閉じられる光景を視界の端に捉えながら、私は目を閉じた。
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