小話メモ
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「僕は、兄さんの全てがほしいんです」
身体が床に沈みこまないように壁に預けた背でバランスを取る。床に投げ出された指の先は、けだるさで関節一つも動かすことができない。空っぽになった注射器を放り投げ、ジールはゆっくりと近づいてくる。兄弟で、同じ血が流れていてここまで違う者か。と、そこまで考えて、容姿そのものこそ違えど性格や雰囲気は似ていると感じられたし、何より人当たりの良さの中に闇と、悲しさを残す緑色の瞳はそっくりだった。は、と荒い息に交じり微かな笑い声が零れ落ちる。神経の張りつめた目の前の緑色は、それを聞き逃してはくれなかったようだ。
「…………随分、余裕そうなんですね」
「……馬鹿、か。余裕なわけ、ねぇだろ…………」
空になったジールの左手がガルのシャツの襟首を掴む。力任せに引き寄せた腕に今の自分では抗うことができないとガルは力のない瞳でジールのことを見つめていた。
「兄さんの心”そのもの”を手に入れても、兄さんの目が僕に向くことはない…………いつだって、あの視線は貴方が手に入れてしまう」
忌々しい、吐き捨てるようにつぶやいた声が羨ましいと聞こえた気がして、また笑いそうになるのをかみ殺した。それが伝わったのか、ジールは一瞬恨めしそうな瞳をガルに向けた後口角をゆっくりと歪ませた。
「だから、考えたのです。貴方が兄さんから与えられたものをいま、ここで、僕が触れてしまえば、兄さんからの愛に間接的にでも触れられる、と」
細い、真っ白な指がガルの口元をゆっくりと滑る。人差し指が唇の輪郭をなぞり、親指の腹がかさついた口唇に押し付けられる。うっとりと口元を見つめる瞳に、ガル自身の姿は映っていないのだろう。こんばんは夕飯を作ると言っていたのに、食べに行けなくなったなと、そんな関係もないことばかりが思い浮かんでしまった。
身体が床に沈みこまないように壁に預けた背でバランスを取る。床に投げ出された指の先は、けだるさで関節一つも動かすことができない。空っぽになった注射器を放り投げ、ジールはゆっくりと近づいてくる。兄弟で、同じ血が流れていてここまで違う者か。と、そこまで考えて、容姿そのものこそ違えど性格や雰囲気は似ていると感じられたし、何より人当たりの良さの中に闇と、悲しさを残す緑色の瞳はそっくりだった。は、と荒い息に交じり微かな笑い声が零れ落ちる。神経の張りつめた目の前の緑色は、それを聞き逃してはくれなかったようだ。
「…………随分、余裕そうなんですね」
「……馬鹿、か。余裕なわけ、ねぇだろ…………」
空になったジールの左手がガルのシャツの襟首を掴む。力任せに引き寄せた腕に今の自分では抗うことができないとガルは力のない瞳でジールのことを見つめていた。
「兄さんの心”そのもの”を手に入れても、兄さんの目が僕に向くことはない…………いつだって、あの視線は貴方が手に入れてしまう」
忌々しい、吐き捨てるようにつぶやいた声が羨ましいと聞こえた気がして、また笑いそうになるのをかみ殺した。それが伝わったのか、ジールは一瞬恨めしそうな瞳をガルに向けた後口角をゆっくりと歪ませた。
「だから、考えたのです。貴方が兄さんから与えられたものをいま、ここで、僕が触れてしまえば、兄さんからの愛に間接的にでも触れられる、と」
細い、真っ白な指がガルの口元をゆっくりと滑る。人差し指が唇の輪郭をなぞり、親指の腹がかさついた口唇に押し付けられる。うっとりと口元を見つめる瞳に、ガル自身の姿は映っていないのだろう。こんばんは夕飯を作ると言っていたのに、食べに行けなくなったなと、そんな関係もないことばかりが思い浮かんでしまった。