過去の遺物たち
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小鳥の鳴く音でリノは目を覚ます。
カーテンを開き、朝の陽ざしをたっぷりと浴びて小さく伸びをする。
窓を開けると、爽やかな風が部屋の中へと入り込んでくる。
新鮮な空気をたっぷりと吸い込み、リノは朝食を作るためにキッチンへと向かった。
ここに暮らすようになって何年になったか。
マフィアから離れて、自立した生活をするようになって、リノは細々と幸せに暮らしていた。
離れてすぐは本当に寂しかったが、それでも自分で決めたことだ。
毎日の生活にも慣れ、今ではこうして朝食も自分で作るようになった。
くつくつという鍋の音にトマトの匂い。
「よし、できた」
皿に盛ればイタリア版のおかゆの完成だ。。
トマトのさわやかなにおいにチーズがトロリととけている。
うんうんと満足そうに頷くと、リノはトレイに皿を乗せ廊下への扉を開けた。
スプーンと皿を乗せたトレイを運んだのは自室…ではなかった。
自室の扉の前を通り過ぎ、リノはそのまま玄関から外に出る。
郊外の丘の上にある小さな一軒家。
ここが、今のリノの家だ。
外に出ると、リノは家の横をぐるりと裏手へ回った。
器用に片手でトレイを持つと、鍵を開ける。
ギイイイっと重い音を立てて、扉を開くも室内は日の光が入っていないのか昼間だというのに真っ暗だ。
後ろ手に扉と鍵を閉め、壁についた電気のスイッチを入れる。
古めかしいオレンジ色の光がぽつぽつと廊下に灯る。
すると、部屋の奥からジャラリと鎖の音のようなものが聞こえてきた。
それを聞くとリノは満足そうに目を細め、そのまま部屋の中へと歩を進めた。
部屋の中には、一人の青年が生まれた姿のままベットに腰かけていた。
いや、青年という時期はとうに越してしまっているし、なにより腰かけているというだけではないが。
青年の足には枷の様なものがはまっており、枷につながった鎖はベットの足につながっている。
そして彼の腕には行動を阻害しない程度の手錠が、両の手にはまっている。
なにより、数年前までは顔に残っていたあどけなさはやつれた表情の中に隠れてしまっている。
「アル、おはよう」
「…おはよう、リノ」
アルゴはリノの姿を見ると、力のない笑顔で小さく笑った。
リノもアルゴの姿を見やると、近くのテーブルにトレイを置きアルの隣に腰かけた。
手錠をくいと引っ張るとアルゴの体は抵抗する力もなく、ぱたりとリノの方へと倒れ込んだ。
倒れ込んだ体を抱き留め、ゆっくりと背中をさするとリノはまた目を細める。
「アル、ある…ある」
肩にあまたを押し付けて、小さな声で、何度も何度もアルゴの名前を口にする。
遮るもののない首筋に唇を押し付けて舌を這わせると、ガブリと首に食いつく。
ぐっ、とうめく声もリノには小鳥の響きのように耳に届く。
「ねぇアル、アル。何か食べたいものとかある?」
首筋からスッと上へと頭を動かし、耳元で言葉を発する。
「ん…リノが、作ってくれるもので、十分だ」
「何でも言って、ね?僕が、僕がなんでも君にあげる。君の全てを埋めてあげる。
だから、ねぇ?アルは、アルだけは絶対に僕のそばからいなくならないでね?」
ね?とリノは、笑顔でそういった。
「…大丈夫だ。俺は、リノのそばから、離れない」
リノの眼を見つめ、アルゴはそう言ってほほ笑んだ。
「うん、うん。アル、大好きだよ」
アルゴの言葉を聞くと、リノは満足そうに笑い唇を重ねた。
「朝ご飯にしよう。おかゆを作ってきたんだ」
そう言って朝食の準備をし始めたリノの背中を見て、アルゴもまた小さく笑った。
その瞳には、アルゴのことすら、見えていないのだろう。
それでもいい。
自分が、新たに生をもらったあの日、リノに出会ったあの日から。
生きる意味をもう一度くれたこの青年のそばに、自分は一生いるのだと決めたのだ。
それがたとえ、真に救われた結末ではなくても。
二人は幸せだと、自身を持って言えるのだから。
― bad end ―
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リノがなんか心のストッパーが外れたというかこわれたというか、みたいな話。
リノは心が壊れたら逆にたくさん笑ってくれそう。
カーテンを開き、朝の陽ざしをたっぷりと浴びて小さく伸びをする。
窓を開けると、爽やかな風が部屋の中へと入り込んでくる。
新鮮な空気をたっぷりと吸い込み、リノは朝食を作るためにキッチンへと向かった。
ここに暮らすようになって何年になったか。
マフィアから離れて、自立した生活をするようになって、リノは細々と幸せに暮らしていた。
離れてすぐは本当に寂しかったが、それでも自分で決めたことだ。
毎日の生活にも慣れ、今ではこうして朝食も自分で作るようになった。
くつくつという鍋の音にトマトの匂い。
「よし、できた」
皿に盛ればイタリア版のおかゆの完成だ。。
トマトのさわやかなにおいにチーズがトロリととけている。
うんうんと満足そうに頷くと、リノはトレイに皿を乗せ廊下への扉を開けた。
スプーンと皿を乗せたトレイを運んだのは自室…ではなかった。
自室の扉の前を通り過ぎ、リノはそのまま玄関から外に出る。
郊外の丘の上にある小さな一軒家。
ここが、今のリノの家だ。
外に出ると、リノは家の横をぐるりと裏手へ回った。
器用に片手でトレイを持つと、鍵を開ける。
ギイイイっと重い音を立てて、扉を開くも室内は日の光が入っていないのか昼間だというのに真っ暗だ。
後ろ手に扉と鍵を閉め、壁についた電気のスイッチを入れる。
古めかしいオレンジ色の光がぽつぽつと廊下に灯る。
すると、部屋の奥からジャラリと鎖の音のようなものが聞こえてきた。
それを聞くとリノは満足そうに目を細め、そのまま部屋の中へと歩を進めた。
部屋の中には、一人の青年が生まれた姿のままベットに腰かけていた。
いや、青年という時期はとうに越してしまっているし、なにより腰かけているというだけではないが。
青年の足には枷の様なものがはまっており、枷につながった鎖はベットの足につながっている。
そして彼の腕には行動を阻害しない程度の手錠が、両の手にはまっている。
なにより、数年前までは顔に残っていたあどけなさはやつれた表情の中に隠れてしまっている。
「アル、おはよう」
「…おはよう、リノ」
アルゴはリノの姿を見ると、力のない笑顔で小さく笑った。
リノもアルゴの姿を見やると、近くのテーブルにトレイを置きアルの隣に腰かけた。
手錠をくいと引っ張るとアルゴの体は抵抗する力もなく、ぱたりとリノの方へと倒れ込んだ。
倒れ込んだ体を抱き留め、ゆっくりと背中をさするとリノはまた目を細める。
「アル、ある…ある」
肩にあまたを押し付けて、小さな声で、何度も何度もアルゴの名前を口にする。
遮るもののない首筋に唇を押し付けて舌を這わせると、ガブリと首に食いつく。
ぐっ、とうめく声もリノには小鳥の響きのように耳に届く。
「ねぇアル、アル。何か食べたいものとかある?」
首筋からスッと上へと頭を動かし、耳元で言葉を発する。
「ん…リノが、作ってくれるもので、十分だ」
「何でも言って、ね?僕が、僕がなんでも君にあげる。君の全てを埋めてあげる。
だから、ねぇ?アルは、アルだけは絶対に僕のそばからいなくならないでね?」
ね?とリノは、笑顔でそういった。
「…大丈夫だ。俺は、リノのそばから、離れない」
リノの眼を見つめ、アルゴはそう言ってほほ笑んだ。
「うん、うん。アル、大好きだよ」
アルゴの言葉を聞くと、リノは満足そうに笑い唇を重ねた。
「朝ご飯にしよう。おかゆを作ってきたんだ」
そう言って朝食の準備をし始めたリノの背中を見て、アルゴもまた小さく笑った。
その瞳には、アルゴのことすら、見えていないのだろう。
それでもいい。
自分が、新たに生をもらったあの日、リノに出会ったあの日から。
生きる意味をもう一度くれたこの青年のそばに、自分は一生いるのだと決めたのだ。
それがたとえ、真に救われた結末ではなくても。
二人は幸せだと、自身を持って言えるのだから。
― bad end ―
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リノがなんか心のストッパーが外れたというかこわれたというか、みたいな話。
リノは心が壊れたら逆にたくさん笑ってくれそう。
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