サイト収録・外伝


「お爺さん! 眼鏡、ベンチの下にありました!」

 タプタプ池に散歩にやってきた夏菜。

 近所に住んでる爺さんが眼鏡をなくして困っているところを見つけた夏菜が手当たり眼鏡を次第に探してみたところ、タプタプ池の東屋にあるベンチの下に転がっていたのを発見した。

「夏菜ちゃん、ありがとうねぇ」
「どういたしまして! それじゃあ、私はこれで!」

 夏菜はそう言って、爺さんのいる場所から離れた。

「今日も絶好調ね」

 妖怪パッドの画面を見ながら嬉しそうに笑う夏菜。

 なにせ、人助けをするだけで金が入ってくるのだから。以前までは事あるごとに「どうしてそうなる!?」とツッコんでいたが、もう慣れた俺は一々ツッコむようなこともしない。単純にツッコむことに疲れただけかもしれないが。

「あ、プラチナのこけし!」

 道端でプラチナのこけしを見つけて拾った夏菜。俺たちには見えないが、夏菜は道端に落ちている謎のキラキラなるものが認識できるらしい。

 夏菜はIの入っていたガシャ玉を開けた際に怪魔が見えるようになる煙を浴びせられ、その副作用として道端に落ちている謎のキラキラが見えるようになった。
 そのキラキラは「アイテム」と言うらしい。例えばこのプラチナのこけしは一個売ると六万円が手に入る。運がいい時は一回二十万円で売れるブラックこけしが落ちていることもある。

 これのせいで金の価値観がバグりそうになっていた。しかも道端に落ちているアイテムの存在に気付いているのは夏菜だけなので、他の人間が軽率に二十万を拾うことはない。
 かく言う俺もキラキラなんて見えねぇし、夏菜の手に握られるまではアイテムの存在を認知することもできない。

『……とりあえず、こけしは「持ち物」に入れとけ』
(は〜い)

 妖怪パッドの画面にこけしを乗せる。
 画面にこけしが吸い込まれていき、夏菜が妖怪パッドの『持ち物』を見てみると、こけしがきちんと持ち物の数にカウントされていることが確認できた。

「プラチナのこけしはこれで34個目?」
《はい。持ち物に入っているこけし類を全て換金した際の金額は──これくらいの金額になるかと》

 夏菜の視界を通して見た金額。
 没落したとはいえ鬼族の名家たる酒呑童子の一族の分家出身である俺にはそれなりの資産があったが……その俺でさえ微妙に戦慄するほどの金額であった、とだけ言っておこう。夏菜も白目を剥きそうになっていた。お前の稼いだ資産だろ。

 ◆◇◆

「今日はどのスキルをあげよっかなぁ〜」

 帰宅後、妖怪パッドの『ウォッチスキル』を使う夏菜。今日手に入れた経験値でスキルの解放をしている。
 ウォッチスキルで解放できるスキルは様々だ。
 料理、洗濯、家事炊事……待て、解放できるスキルが微妙に嫁入り前の女子が身につけるものばかりなんだが?

『I。なんで解放できるスキルに家事炊事があるんだ?』
《今時はメシウマ女子がモテるらしいので》
『いや変にメシマズになるよかマシかもしれないが……』
《よく見てくださいよ白髪。他にも解放できるスキルはありますよ、[[rb:ポータブルスキル > 社会でどこでもやっていける能力]]を始め人心掌握や扇動能力など》
『誰が白髪だこの野郎。つーかポータブルスキルはともかくなんで人心掌握とか先導能力関係のスキルがあるんだよ!?』
《私はマスターに適性のある能力をウォッチスキルに反映させているだけです。もちろんマスターが欲しいスキルがあるとおっしゃるのであれば喜んでウォッチスキルから解放できるスキルを増やしますとも、えぇ》
『お前は夏菜を革命家にでもしたいのか? つーか、それなら夏菜が運動できるようになるスキル解放しろよ!? 増やそうと思えば増やせるんだろ、そういうスキル!》
《やろうとしましたが無理でした》
『夏菜はIにも見放されるくらい運動神経がないのか!?』
《その通りです、マスターには天才的なほど運動能力がありません。私は一を百にでも億にでもする能力を持っていますが、恐らくマスターの場合の運動能力は生まれた時から0なんでしょうね。スキルを解放する云々以前の話なんですよ》

 ちなみにこの会話は夏菜には聞こえていない。
 Iが能力で俺たちの声が夏菜に届かないようにブロックしているらしい。万が一バレたら流石の夏菜もキレるだろうからな。

『……ん? なぁ、夏菜が新しく手に入れたいスキルがあったら、運動能力以外なら新しく解放できるスキルを増やせるんだよな?』
《できますよ。それがなんですか白髪》
『この際ツッコミは置いといてやる。例えば夏菜が────ってお前に願ったら、お前はその願いを実現できるスキルを解放してくれるってことか?』
《……そうですね。できますよ》
『とんだチート無機物じゃねぇか、お前……』
《マスターが私に命令しなければ新しくスキルを増やすこともできませんし、あくまでもスキルを行使するのはマスター自身です》
『だとしても、だろ』

 思わず深々とため息を吐いてしまった。

(茨、どうしたの? ため息なんか吐いちゃって)

 どうやら深々とため息を吐いた俺に気付いたらしい。

『なんでもねぇよ』
(またIちゃんと喧嘩してた?)
『してねぇよ』
《マスター、また白髪にいちゃもんつけられました》
『つけてねぇよ! ふざけんな無機物!?』
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