サイト収録・外伝
「わ〜っ! ランドセルがいっぱいあるよ!」
今日は家族全員でさくらシーサイドモールに来ている。
次の春には私たち双子は小学校に入学する。人気メーカーのランドセルは基本的に夏休みが終わる頃には完売してしまうため、初夏入りしたタイミングでランドセル購入に来ていた。
ランドセルコーナーには色とりどりのランドセルが並んでおり、ナツメは目を輝かせながら辺りを見回している。一方で、私はランドセルではなくナツメのことを見ていた。
(今日もうちの妹はギャンかわ……!)
『ホントにブレないな、夏菜のシスコン魂』
《マスターはこういう御方ですから》
えぇい、喧しいわよアンタたち。シスコンで何が悪い。
「それじゃあ、どのランドセルにするか決めていこうか」
父さんの声で意識が現実に戻される。
改めて色とりどりのランドセルを見てみれば、前世の記憶を思い出している私でもワクワクしてしまう。
「ふたりはどんな色のランドセルがいい?」
「私は水色とか紫色のランドセルがいいかなぁ」
「私は赤かピンク!」
私たち双子はソックリだけど、好みは結構違っている。
私は寒色が好き、ナツメは暖色が好き。
似ているところもあるけれど、やはり好みはハッキリと違うので父さんも母さんも私たちを同一視せず個々として見てくれる。
(そういえば、前世のランドセルは茶色だったわね)
前世の私が使っていたランドセルは茶色だった。
元々前世の私は暗めの色を好んでいて、両親も「高学年になってからも使うんだから落ち着いた色がいい」と言っていたので茶色のランドセルを購入していた。
でも、意外と高学年になっても色は気にならない。
ただし卒業する頃には少々色褪せてくるので、そういったことを考慮した上で選ぶのがベストだろうか。
「夏菜、これはどう?」
母さんが陳列棚からランドセルを取って渡してくれる。
ラベンダーカラーのランドセル。
教科書も体操服も一気に詰め込めそうなサイズで使い勝手も良さそうなのだが、ポケットが少ないところが惜しいポイントだ。ただ母さんが選んだだけあってデザインはメチャクチャいい。
「これもいいけど……う〜ん」
「じゃあ、これはどうかな?」
父さんが陳列棚からランドセルを取ってくる。
ピンクとライトブルー、それぞれのランドセルがセットになっている。棚の店頭広告には「友達とお揃いに!」と書いてある。
ぶっちゃけ幼稚園時代にできた友達なんて将来的に連絡なんてほぼしなくなるだろうから、友達とお揃いで買ったとしても三年後ぐらいには「これ誰とお揃いで買ったんだっけ?」ってなる未来しか見えないけれど、私たちは友達じゃなくて双子だから問題ない。
「わ〜っ! かわいい!」
「確かにかわいい……」
「でも、他にもまだまだあるからな〜」
私たちが見ている陳列棚は、まだ一つ目。
ランドセルコーナーは何列も続いているため、もっと奥の方に行けば他のランドセルが売っているかもしれない。
「私、奥の方に売ってるランドセル見てくるね」
「ひとりで大丈夫?」
「大丈夫! それじゃ行ってくるね!」
◆◇◆
「ランドセル、良さそうなやつ見つからないな……」
ランドセルコーナーの一番奥。
最後の陳列棚まで来たものの、私のお眼鏡にかなうランドセルは終ぞ見つけることができなかった。
「なぁ、夏菜。このランドセル、どうだ?」
諦めて戻ろうとした、その時。
茨木童子が私の影から飛び出していきなり実体化したと思えば、なんとセットのランドセルを携えて立っていた。
そのランドセルは私たち双子が好みそうなデザイン。
試しに見てみれば機能性バツグンなのにそれほど重量もなく、カラーは私の好きなライトブルーとナツメの好きなピンク。もうこれ以上ないってくらいビビッとくるランドセルだった。
「何これ超いいじゃん!」
《白髪にしてはセンスがいいですね》
「誰が白髪だ無機物」
「ねぇ茨、どこでランドセル見つけたの?」
「ん? さっき陳列棚の上の方に置いてあるのに気付いてな。セット商品な上に機能性重視だからあまり売れねぇと思ってたんだろ。それを偶然俺が見つけたってわけだ」
「あぁ、陳列棚の上の方なら私じゃ気付けないわ……」
「そういうことだ。ほら、受け取りな」
茨木童子からランドセルを受け取る。
再び茨木童子が私の中に戻っていくのを確認してから、父さんたちのいる場所に戻っていった。
「おかえり、夏菜……って、ランドセル!?」
案の定、ランドセルを携えていたので驚かれた。
「凄く素敵なランドセル見つけたの!」
「そのランドセルかわい〜い!」
「だよね! ちょっと背負ってみない?」
それぞれ、お互いの好きな色のランドセルを背負う。
思ったよりもこのランドセルは私たちにフィットしていて、ナツメもこのランドセルがよっぽど気に入ったのか「これにする!」とランドセルを掲げながらその場でピョンピョン跳ねている。
もちろん、私とてこのランドセルにするつもりでいる。
「それじゃあ、決まりだね」
父さんがランドセルを会計に持っていく。
ナツメは「おねえちゃんとおそろい!」と嬉しそうにしている、もちろん私もメチャクチャ嬉しい。
「お待たせ。はい、ふたりのランドセルだよ」
会計を終えた父さんが私たちにランドセルを持たせた。
「どう? おねえさんみたい?」
「うん。とってもかわいいよ、素敵なお姉さんみたい」
「もう夏菜たちも小学生かぁ……」
「あっという間ねぇ。ちょっと前までは……あらっ?」
「「うちの娘たち、昔からそれほど変わってない?」」
ランドセルを背負ったナツメに夢中になっていた私は父さんと母さんの会話を聞いていなかったのだが、近くで会話を聞いていた茨木童子とIちゃんは揃って吹き出していた、とだけ言っておこう。