サイト収録・外伝
⚠️注意⚠️
・自殺に関する内容を含んでいます。
物心ついた時から、水無月葵は空虚だった。
いつも空っぽな感情だけが自身を支配していた。
視界に広がるのは常に冷たい白黒の世界だけで、人々の心を揺さぶるようなアニメやゲームでさえも葵の心を揺さぶるに値しないものだった。
そんな葵の人生を変えたのが──先輩こと愛。
愛と出会った瞬間に葵の中の何かが変わった。
世界が華やかに色付き、心が揺さぶられ……しかし、それは恋情というものからはかけ離れたものだった。
崇拝。
おそらく、この言葉が最も似合っているだろう。
それくらい葵は愛のことを想っていた。
あの人が生きている、ただそれだけのことで葵は幸せだった。
愛を追って同じ高校に入った。
愛を追って同じ大学に入った。
愛を追って同じ会社に入った。
葵の中には、いつも愛がいた。
なのに。彼女は、亡くなった──。
死因は一酸化炭素中毒による中毒死。
火に巻かれ苦しみながら亡くなるよりはよっぽどマシな死に方だったのかもしれない。しかし、葵は愛が亡くなったことを受け入れられずにいた。
愛が亡くなった直接の原因となったガス爆発。
給湯室のガスパイプに引火して爆発が起きた時──あの時、爆風で吹き飛ばされた愛の手を掴んでいれば、瓦礫の向こう側で亡くなることはなかったのに。
(……もしも、本当に神や仏がいるのなら……)
どうか、先輩が冥土で幸せになれるよう。
それよりも先輩が妖怪ウォッチの世界に転生させてやってくれ、って願った方が先輩は喜ぶか……なんてことを考えながら、葵が墓の前で静かに手を合わせた──その時。
『あなたは、もう一度出会いたいかしら?」
脳内に届いたのは──天使とも悪魔とも取れる囁き。
葵は願った。
この世にもう先輩はいない。
だから生まれ変わって、先輩のように……自身の何もかも全てを捧げてもいいと思えるような人に、もう一度巡り会いたいと思ってしまった。
そこにいる先輩が先輩じゃなくたっていい。
ただ、この心の空虚さを満たす相手が欲しいのだ。
忠誠を捧げたい。そう思える人と、また出会いたい。
「先輩」
深夜、先輩の墓参りの帰り道。
火災跡から規制線が消えていたのをいいことに、瓦礫の山を登ってちょうどいい場所まで向かった葵は狂った笑みを浮かべていた。
愛の遺体は未だに見つかっていない。
まだ、この瓦礫の下にいるのだろうか。
「今、会いに行きますからね」
だから来世では死なないでくださいね──。
夜空に月はない。
もう二度と月は見れないだろう。
けれどあなたに会えるなら、月が見れなくなったって構わない。
だから、今度こそ生きてください。
あなたが生きていれさえすれば、私は。
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