「ヒソカ…？」

少女が壁にもたれかかるようにして座っているヒソカに話しかけた。

「おや？さっきのおチビちゃんじゃないか。僕に何か用かな？♣️」

「ヒソカ、話す。」

ヒソカと自分を交互に指差す少女。

「もしかして、僕とお喋りしたいのかい？♦️」

他人を寄せ付けない禍々しいオーラ、奇抜なメイクにファッション。
そんな自分に話しかけてきた少女にほんの少しだけ興味の湧いたヒソカ。

ジッと少女の纏っているオーラを見てみると、淀みなく全身を包み込んでいるオーラだが、大分ムラがある。
大きなスライムみたいに少女の周りを漂っているオーラ。洗練されている様子はない。
ただ、その量は彼女の生命力の強さと、この先の成長を期待するものではあった。


「いいよ❤️お喋りしようか❤️」

にんまりと妖しい笑みを浮かべながら、ヒソカは少女の頭のてっぺんからつま先まで舐め回すように見つめた。

「喋る。ない。」

「おや？お喋りしたくないのかい？♠️」

少女は喋るのが得意でないと言いたかったのだが、カタコトの言葉では真意が伝わらなかった。
ブンブンと少女が首を振ると、少し考えた後、ヒソカが少女の真意を汲み取った。

「ああ、言葉が分からないのか♣️」

コクリと少女が頷く。

「じゃあ、君の名前でも聞こうかな♠️」

「ナマエ…？」

少女は首を傾げた。

「おや、名前も分からないのかい？♣️じゃあ、なんて呼ばれてたんだい？♠️」

「オチビチャン。オジョウチャン。」

（ん〜♠️そういう意味じゃないんだけどなぁ…☠️）

少女が迷うことなく答えると、そのトンチンカンな答えにヒソカはポリポリと頬をかいた。

「じゃあ、僕が名前をつけてあげる❤️君の名前はリルね❤️これはおチビちゃんて意味♦️」

「リル…？リル！リル！」


初めて自分につけられた名前。
それにリルは喜ぶように何度も反芻した。


「リルは何処から来たのかな？♣️随分と汚れてるけど、もしかして流星街？♠️」

「リュウセイガイ？」

またしてもリルは首を傾げる。
ヒソカはリルの格好に知り合いの出身を感じた。
世界中のゴミが集まる場所。流星街。

「世界中のゴミが集まる場所さ♠️」

「チガウ。ゴミない。」

フルフルと首を振り、リルはおもむろに腰に下げているボロ袋に手を入れ、白い小石を取り出した。
そして床にガリガリと絵を描き出した。

「これある場所。」


リルが描いたのは木や植物。
お世辞にも上手とは言えないその絵。
ふ〜ん…とあまり興味はなさそうにヒソカが答える。

「何処かの森かな♣️この絵だけじゃよく分からないけど♠️まあ、いいや♠️じゃあ、リルは念は使える？」

「ネン？」

しゃがみ込み、小石を持った手を止めリルが顔を上げた時、男がリルにぶつかった。
その衝撃でゴロゴロと転がるリル。
特に痛がる様子もなく、すぐに立ち上がる。

「あ？なんだ、この小汚ねぇガキは。」

胸に58のナンバープレートを付けた男はリルを一瞥すると汚物でも見るような目で睨んだ。
この男はこの後すぐにリルにぶつかったことを後悔する。

「ぎゃあああああ！お、オ、オレのぉぉウデがぁぁぁああ！」

「あ〜ら不思議❤️腕が消えちゃった♠️タネも仕掛けもございません♣️人にぶつかったら謝らなきゃね♠️」