サトツからワイシャツを貰い、ご機嫌で廊下を歩くリルの前に2人の男が歩いていた。
その男と男の間に見知った顔が見えた。

「おい！人にぶつかっておいてシカトかよ！」

男達とキルアがすれ違う時、キルアが男達にぶつかった。
男達がキルアに掴みかかろうとした瞬間、音もなく2人の男が床に崩れ落ちた。
床には真っ赤な血が広がっていく。

「キルアー！」

「！…リル」

2人の男を殺した場面をリルに見られ、キルアはバツが悪そうに苦笑いしながら、手を挙げた。

「キルア、何、してる？」

床の血の海に沈んでいる2人の男ををチラリと見てから視線をキルアに合わせ聞いた。

「ちょっと絡んできたからさ、ヤっちゃった…」

「ヤっちゃった？」

「殺したってこと。」

「食べる、ない？」

「は？まだ腹減ってるのか？」

人間社会から断絶された生活をしていたリルにとって、命とは食べるものだった。
食べないならば命を奪うことはない。
が、それは獣の感覚に近いもの。
肉食獣は余程のことがない限り同族での共食いはしない。
しかし、人間は宗教、思想の違い、金、名誉、自己顕示欲、様々な理由で殺し合う。
リルがそれを理解するのはもっと先の話。
そして、そんなリルをキルアが理解するのはもっともっと先の話。


「ていうか、リル、服どうしたんだ？それにその髪…」

「フク、サトツ、貰う。髪、ヒソカ、シャワー」

「げっ！ヒソカとシャワー浴びたのか？！」

「ヒソカ、ない。リル、だけ？」

一緒に入ったわけではないことがわかると、キルアの引き攣った顔は元に戻った。
ふと、リルの足元に視線をやると、何も履いていない。

「つーか、なんか履くもん持ってねーの？」

「リル、持ってない。」

「じゃあ、俺のズボン貸してやるからそこで待ってろよ。」

そう言い、親指で窓のそばにある椅子を指差した。大人しくリルが腰掛けるのを見て、キルアは自身の荷物が置いてある部屋へと急いだ。