ーードンドンドン

「メンチー！メンチー！」

バスルームを飛び出したリルが向かったのは試験官だったサトツ、ブハラ、メンチのいる試験官用の部屋。
ネテロはゴンとキルアとのボール遊びに興じているため、不在だった。

ガチャリと扉が開くと、サトツがガウン一枚のリルを見て、驚いた表情をした。

「リルさん…ですかな？どうしましたか？そんな格好で」

「メンチ、服、ちょーだい、する。」

「メンチ…ですか？」

サトツが部屋の中に振り返り、メンチを呼んだ。

「あ、あんた！そんな格好でなにしてるのよ？！ちょっ！入りなさい！」

ぐいっとリルの腕を引っ張り、部屋の中に入れる。
バタンと勢いよく扉が閉まる。

「で、そんな格好で何の用？！」

メンチが腰に手を当て、少し呆れたように用件を聞く。

「メンチ、服、ちょーだい！」

「はぁ？！」

リルの唐突な言葉にメンチの額に💢マークが浮かぶ。
その反応を見て、思い出したようにリルがボロ袋の中をゴソゴソと漁り、二次試験会場で見せたコモンドオオサンショウウオの干物を取り出した。

「メンチ、これ、好き。服、ちょーだい。」

この時価数千万Ｊの食材と服を交換してくれ。
そう捉えたメンチは怒り気味に言った。

「私は試験官なのよ？！そんな取引できるわけないでしょう？！」

「メンチ、試験、終わった。まだ、メンチ、試験、する？」

試験官としての自覚によってその取引は一度は却下された。が、メンチの試験はもう終わったのだから関係ないのではないか？というリルの疑問にメンチは揺らいだ。
美食ハンターとして、コモンドオオサンショウウオの干物は調理し、食してみたい一品でもあったからだ。
幸か不幸か今この部屋にネテロ会長の姿はない。
ニコニコとコモンドオオサンショウウオの干物を差し出すリルに、メンチははぁ〜っと深い溜息をつく。

「いいわ。でも！これは試験官としてではなく、いち美食ハンターとしての取引よ！！」

そうリルに言ったが、主にブハラとサトツに言っているようだった。
そのブハラはコモンドオオサンショウウオの干物の匂いによだれを垂らし、サトツは目を伏せ、何も聞いていないかの如く紅茶を啜っていた。