「あ〜っ！やっっと一息つけるぜぇ〜」

メンチから次の三次試験会場には明朝の8時に着くと説明を受けて、受験者達は各々自由に行動して良しとなっていた。

「リル！キルア！ご飯食べに行こうよ！その後飛行船の中探検しよ！」

ゴンがキルアとリルを誘うと、2人は同意して食堂へ向かった。

「リルのご飯は俺とキルアの奢りね！」

「ちぇっ、まぁ、約束だしな。」

一次試験の勝負の報酬。
リルは特に意味はわかっていなかったが、ニコニコといい匂いのする食堂へと足を進めた。


「リル、どれにする？」

そう聞かれても、リルには何が何だかわからない。文字も読めないリルはメニュー表の前で固まってしまった。

「オイシイ…」

「あ、そっか！じゃあ一通り全部食べよう！」

言葉がわからないということは文字も読めないのだとゴンが悟った。
片っ端から注文し、3人の前にはこれでもか！というほどの料理が並んだ。

「「いっただきまーす！！」」

ゴンとキルアが両手を合わせているのを見て、リルも真似して両手を合わせた。

「イタダキマス！」

ガツガツと3人が目の前の料理を食べ出すと、リルは目を輝かせた。
初めて食べる調理された食べ物。
長い間森の中で生活し、捕食してきたものは全て生のままだったリルにとって、それは怒涛の衝撃の連続だった。


「オイシイ！コレ何？！」

「これはチャーハン！」

「コレは？！」

「それはスパゲティ！」

「コレは？！コレは？！」

「それはパフェ！」

「コレは？！」

「ん〜なんかの肉！！」

「オイシイ！オイシイ！」

リルが目を輝かせながらゴンにコレは何か、アレは何かと聞く。
夢中で食べているリルを横目に見るキルア。
フンと鼻を鳴らし、少し自慢げに言った。

「俺の家ならもっと美味いのでてくるぜ？」

「キルアの家ってどんなの？」

ゴンが焼きそばを頬張りながら聞く。

「俺の家？暗殺一家。」

「え？家族全員？？」

「はは、そんなこと聞いたやつお前が初めてだよ！そう。家族全員。でも、俺はあんまりしたくないんだよね。ほら、親に敷かれたレールっての？そうゆうの嫌なんだよね。」

親に決められた殺しはしたくない。
そう語ったキルア。


「あんふぁふいっふぁ？」

口いっぱいに魚料理を頬張っているのか、口から魚の尻尾を出したままリルが聞いた。

「暗殺一家ってのはえーっと、なんて説明すればいいんだ？殺しを生業に…ん〜、お金をもらって人を殺してる家族ってこと。」

「コロシ？カゾク？」

「だーーっ！めんどくせぇ！」

リルの質問責めにキルアが頭をガリガリとかく。
言葉の意味の説明がこんなにめんどくさいものだとは思わなかったようだ。


レオリオとクラピカと対峙した時に他の受験生が殺されてたでしょ？と、ゴンが言うとリルは頷いた。

「家族ってのは…親とか兄弟とか…あーっ！説明むずい！もう行こうぜ！」

家族についての説明を諦め、飛行船の探検に行こうとキルアが促す。
ゴンは食べ始める前と同様、手を合わせてごちそうさまでしたと言った。

「ゴチソウサマデシタ。」

リルもゴンに続いて手を合わせる。
3人が食堂を出たところで、異様なオーラに触れた。