「ほう…」

ヒゲを撫でながらネテロがリルの行動に感心している横で、メンチ達試験官は呆気にとられていた。


「あれ？！リルいつの間に卵取ってきたの？！谷底に飛び込んだ時はいなかったのに！」

岸壁をよじ登ってきたゴン達が口々に聞く。


「もらった。」

「はぁ？誰にだよ？！」

「アレ。」

上空で旋回しているクモワシを指差しながら、ニコニコとリルが答えるが、ゴン以外の3人はまだ信じられない様子だった。
それを見ていたヒソカは口元を隠しながら、クツクツと喉を鳴らして笑っていた。

（あぁ、それが君の能力なのかな？❤️操作系？でも、水見式では特質系か強化系❤️うーん、ますます興味をそそられるなぁ…❤️）

ヒソカの溢れ出る妖しいオーラに気がついていたのは、ネテロ含む試験官達だけだった。




大なべで受験者達がゆで卵を茹でていると、ブハラの反応により引き上げ時がバレて卵を取ってこれた受験者43名が合格となった。

「さぁ！食べてみて！」

メンチがゆで卵となったクモワシの卵を食すように勧める。
リルも他の受験者の真似をしながら、ぎこちない手つきでゆで卵の殻をむいていく。
つるんとしたゆで卵からは湯気が立ち上っている。
恐る恐るリルが一口囓ってみる。


「〜〜〜っ！！！」

プリプリの白身に濃厚な黄身。
鶏のそれとは比べものにならない美味しさに、リルは感動し、ふるふると震えている。
リルの目がシトリンのような黄色に輝いていたのは誰も知らない。

「うめぇ〜！」

「すごい！美味しいね！！」

「オイシイ！オイシイ！！」

美味しい以外にこの感動を表現する言葉を知らないリルは、オイシイを繰り返した。
あぐあぐと口いっぱいに頬張り、それでもオイシイオイシイと、連呼していた。
ごくんと口いっぱいに頬張っていた卵を飲み込むと、リルの前に一口だけ囓った跡がある卵が差し出された。

「あげるよ❤️食べかけで悪いけど♣️」

「ヒソカ、食べない？オイシイ、ない？」

「美味しかったよ❤️だからリルにあげる❤️」

差し出された卵を受け取ると、リルは嬉しそうにガツガツと食べだした。
それを見てヒソカが微笑む。
あっという間に卵を食べ終えると、ヒソカにお礼を言った。
ヒソカはその口元の卵のかけらを摘むとパクリと食べた。

「合格した人はあの飛行船に乗るみたいだ♦️ボク達も行こうか♦️」

コクリとリルが頷くと2人はハンター協会の飛行船に乗り込もうと、フラップを上がる。
ふと、リルの足が止まる。
じーっと飛行船に書いてあるハンター協会のマークを見つめている。
どこかで見たことあるような、そんな既視感がリルにはあった。
何処でだっただろうかと、リルが首を傾げ思い出そうとしている時、ヒソカからの早くおいで❤️の声に思い出すのを諦め、足早に飛行船に乗り込んだ。