先頭を行く受験者達の目の前に果てしなく続く上り階段が現れた。
サトツが更にスピードを上げて登っていく。
すでに数百人の脱落者が出ていたが、リル達3人は未だ汗ひとつかかずにひょいひょいと階段を上っていく。


リル達3人が階段にさしかかろうとした時、キルアが食事の奢りを掛けての勝負を提案した。
それにゴンがのると、特に意味はわかっていなかったが、リルも参加した。

「よーい、ドン！」

2人が駆け出したのを見て、リルが少し遅れながら走り出した。

「俺のペースについて来れるなんてなかなかやるな。」
（ゴンもそうだけど、リルがついてこられてるなんて本当驚きだぜ。）

ちらりと横目でリルを見ると、その視線に気づいたのか、リルの口元が笑った。

「あ〜あ、拍子抜けだな。これじゃあハンター試験なんて楽勝かもな。」

「ねぇ、キルアはなんでハンターになろうと思ったの？」

「え？俺？別にハンターになんかなりたくねぇよ？ただ、最難関の試験で聞いたからどんなんだろうと思って受けただけ。ゴンは？なんでハンターなんか目指そうと思ったんだよ？」

ゴンが自身の父親、ジンのことを話し終わる時、長かった上り階段に終わりの光が見えた。

「お、あそこがゴールみたいだ！」

2人がスピードを上げて走り出した。
リルもそれを追うようにして走り出す。

「リル！早く！あそこに1番についた人が勝ちだよ！」

そう言ってゴンが階段の上の光を指差した。
その時、ゴンとキルアの横を疾風が吹き抜けた。
その疾風の正体はリル。
四つ足で獣のように走るリルを目で捕らえられたのは、先ほど追い越した先頭集団の中にいたヒソカと顔が針だらけの男、そしてゴールであろう階段の最上段で振り返ったサトツだけだった。


ズザザザーーー
砂埃が宙を舞い、サトツが振り返る。

「「ゴール！！」」

ゴンとキルアが同着し、どちらが早かったか言い争い、サトツに判定を聞くと、サトツはゆっくりと2人の前を指差した。

「私には彼女が1番にゴールしたように見えましたが？」

「え？？」

2人がサトツの指差した方に振り向くと、そこには犬がおすわりをしたような格好で佇むリルがいた。
2人はあっけにとられたような顔で呆然とリルを見ていた。


「えぇー！？リルすっごいね！俺全然見えなかったよ！？」

ゴンが素直にリルに賛辞を送る。
キルアは悔しさが滲んだような顔をしていた。
（俺にも全然見えなかった。なんなんだ、リルって…）

「リル、ゴール、1番！」

ピョンピョンと跳ねて喜ぶリルにゴンは駆け寄ってどうしてそんなに早く走れるのか聞いていた。
ポーカーフェイスがうりのサトツも驚いたように目を見開いている。

（今年は豊作ですね。）