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緑間夫婦の習慣のお話




(定期持った、アレとコレと·····ボールペンメモ帳財布にヘアゴム·····あとお弁当も持った。よし大丈夫なはず。)

リビングで鞄の中の持ち物チェックをしてから玄関へ続く廊下のドアを静かに開け閉めする。

今日はついに1年で1番忙しいあの案件の当日だ。始発前に自宅前にタクシーを呼び、帰りもタクシーという地獄のハードワークデー·····。

(行く前から帰りたい··········)

重い足取りで靴を履き、ケースから鍵を取り出すと背後から不穏な気配。

「···············忘れ物があるのではないか?」
「ひッ!し、真ちゃん。起きてたの?」

振り返ると旦那さまが不服そうに眉間に皺を寄せながら立っていた。

「真ちゃん今日貴重なお休みでしょ?寝ててよかったのに。」
「急患やら何やらでこういう時間に起きるのは慣れている。何ら問題ないのだよ。·····そんな事より忘れていることがあるのではないか?」

持ち物はさっきちゃんとチェックして問題なかった。忘れ物はないはずだけど·····。

「さっきちゃんと見たから大丈夫だよ?私なにか忘れちゃってた·····?」

真ちゃんは呆れ顔で大きく溜息をつく。

「全く、毎日している事をどうしたら忘れられるのだよ。」

そう言って真ちゃんは両手で私の顔を掴んでゆっくり顔を寄せていつものようにキスを落とした。

(そ、そういう事·····か)

私の両頬を掴んだその手が離れた時には真ちゃんはもう満足そうな顔で眉間の皺もすっかり消えていた。

「朝早くから大変だが頑張ってくるのだよ。後、どんなに遅くなっても帰る時は絶対連絡するのだよ。」

この感じだとおかえりのちゅーもバッチリするつもり満々のようだ。
自分が遅い時は寝ていて構わないとか言う癖にこの人は本当にそういうとこがある。


「気をつけて行ってくるのだよ。」



憂鬱な気分はいつの間にかどこかへ消えて、なんだか力が湧いてきた。

(1日頑張って、真っ直ぐ家に帰ろ。)

仕事は確かに大変だけど、こんなに手厚いサポートがあるから正直いくらでも頑張れる気がする。


(いつもありがと、真ちゃん)


左手の指輪の宝石は今でも初めて見た時と変わらない輝きで、夜明けの街の灯りを優しく映しとっていた。




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