なにも知らない君たち(黄瀬長編)
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「笠松くん、いる?」
先輩らしき女の人が緊張した様子で体育館の入り口に立っている。
なんか見た事ある人だなと思ったけど、正解は出てこなさそうだった。
「キャプテンなら部室に行ったとこっスけど、まぁ5分もあれば戻ってくると思うっスよ」
「あぁ、そう…ここでちょっとじゃあ待ってるかな」
俺が女子に話しかけると大体相手は赤面したり、浮き足立ったり、しどろもどろになったりされるのでこの気のない返事は久々な感じで逆に新鮮だった。
「なんか伝言とかなら伝えとくっスよ」
「この間の部長会、欠席だったから資料渡しに来たんだけど、…まぁ5分くらいだったら直接渡すよ、顔も、見て行きたいし、さ。」
さっきの素っ気ない返事とはうってかわり、先輩は顔を赤くしてしどろもどろにそう言った。
あっ思い出した。この人陸部の部長の須山先輩だ。
というか俺に興味ない感じだったのはそういう事ね。
キャプテンもなかなか隅に置けないっスね。
「先輩って陸部の須山先輩っスか?」
「え?あ、うん。そうだけど」
「俺、今年入った海常バスケ部大型ルーキー黄瀬涼太っス、以後お見知りおきを」
「そうなの?ま、頑張って」
結構決め顔で言ってみたんスけどね、まるで効いてないっスね…
というかそろそろ
「おい!黄瀬ぇ!!サボってんじゃねぇ!!!」
「笠松先輩痛いっスよぉ、サボりじゃなくて先輩のお客さんと話してただけなのに」
「お客さん?」
「あ、か、笠松くん!こ、これこの間の部長会の資料、です。」
「おっ須山!わりぃな先週のやつだろ?練習試合で出れなかったからな。なんか決まったこととかあったか?」
「と、特にはないよ。いつも通りな感じだったかな、…でも練習場所の調整とかは各々でこれから連絡取り合ってやれって、言ってたよ」
「それこそ学校側に決めてもらった方がラクなんだけどな…というか須山の連絡先聞いとこうと思ってたんだった、今携帯あるか?」
「えぇ!!あ、うん!も、持ってるけど!えっと、じゃ、じゃあ私も笠松くんの連絡先聞いても、いいのかな?!」
「当たり前だろ、片方だけ知ってても連絡取れないだろうが、じゃあ俺から入力っすから貸してくれるか?」
須山先輩めちゃテンパってるスね…分かりやす…
てか笠松先輩が女子相手にあんなにスムーズに話してること初めて見たな、いつもめちゃくちゃ動揺してるのに。なんでだろ。
「これで登録完了だな。今年はウチも絶対全国制覇するから須山も連覇期待してるぜ!」
「あ、ありがとう。私もバスケ部応援してる。お互い頑張ろうね。うん、絶対勝とう!」
「オウ!!」
わぁ…後ろ姿からもめちゃくちゃ嬉しそうっスね須山先輩。キャプテンにベタ惚れじゃないっスか。てか俺との態度の差激しすぎじゃないっスか。なんか勝手にフラレちゃった気分っス。
「てか、笠松先輩。須山先輩は女子なのになんでちゃんと喋れるんスか?」
「お前は先輩に向かってどんだけ失礼なこと聞いてんのか分かってんのか!ったく!
まぁ、でもアイツは特別だからな、実際」
「特別?彼女さんスか?」
「バーカ、アイツは陸上短距離インターハイ優勝の高校生最速スプリンターだぞ。えげつない量の練習を毎日こなしてたった1人でウチの陸上部の名前を全国に知らしめやがった。お前の周りに群がってる女子みたいに浮ついて色事に現を抜かすようなタマじゃねぇよ。」
いや、めっちゃ恋する女子でしたけど!そういう風にしか見えませんでしたけど!むしろそんな凄い人だったんスか!あの人!
「笠松先輩はどう思ってるんスか?須山先輩のこと」
「同じスポーツマンとして尊敬してるな!」
「そうっスか…」
完全に女子として見られてないっスね…須山先輩。あんなに好き好きオーラ出しまくってるのにあれじゃ出し損スね。
あんなに分かりやすくて可愛い人なのに…かわいそ。
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