鉄壁


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人生は、常に何事も順風満帆に進むとは限らない。時には上手くいかずに躓いてしまう事や挫折してしまう事、想定外の出来事も突然起こりうるものだ。
そしてそれは、長い人生において大して支障のないものだったりするし、はたまたその後の生活を一変させてしまうものであったりもする。
どちらになるかは起こってみなければ分からない。無論、心するべきは後者の方だ。

例えば、大事なものを自らの過失で喪ってしまった時。
これは自分にとって人生の大きな分岐点だったと言えるだろう。この時に愛するものを失くす悲しみを知り、同時に新たな命の誕生に立ち会う事の喜びをも手に入れた。
どちらも忘れられない、忘れる事など出来ない大切な記憶だ。

例えば、剣の腕を上げたいのになかなか上達しなかった時。
幼い頃から愛用し続けた槍を、かつての恩人から譲り受けた大刀へと持ち替えた直後。槍と剣ではもちろん勝手が違うし、ましてや自分の背丈にも届こうかというそれを使いこなすまでには長い歳月を要した。慣れない頃は騎士団の仲間の足を良く引っ張っていたものだ。

例えば、上司の一人娘が無許可でこっそり自分の戦況視察について来てしまった時。
仕事においては一切私情を挟まない冷静な上司だが、自身の娘の事となると話は別だ。もし愛する娘に何かあったらただでは済まないだろう。騎士団に戻ったら始末書の一枚や二枚は余裕で書かされるに違いない。この戦争が終わった後の事を考えると、非常に胃が痛む。


──そんな風に数々の苦難や逆境を何とか乗り越えてきたフッチだが、今、また新たに予想外の出来事と向かい合う羽目になってしまった。

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