師範の愛が重すぎる
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side 夢主
『あのー師範?いつまでそうしてるつもりなんですか?』
私、楓は現在進行形で師範である時透無一郎に抱き着かれている
「……僕が満足するまで」
そうポツリと呟いた師範
私は師範よりも背が高いのでちょうど私の胸元に彼の顔が……
こいつ、何してんだ
『師範、ちゃっかり私の胸に顔を埋めてるのは分かってるんですよ。とっとと離れやがれください』
すると師範は顔を上げて上目遣いでこちらを見てくる
その瞳はうるうるしていて……何だか子犬みたいだ
その顔でこの表情は反則だろう
恐らくほとんどの乙女はこの顔でやられる
でも、私は……
『っ、だからぁ、とっと離れろぉぉぉ!!!!私は今から任務なの!!』
私は馬鹿力で師範の腕を無理やり自分の体から引きはがす
慣れているので、彼に怪我をさせることはない
そう、私はこの状況にあまりにも慣れすぎているのだ
この日々が始まったのは、お館様からのお願いがきっかけだ……
──────
数か月前のある日、私はお館様に呼び出されていた
「やあ、楓……ところで柱に」
『っ!なりませんってばぁぁ!!』
私は思いっきりお館様のお言葉を遮る
いや、かなりの不敬なのは分かっている
でも、お館様は私の階級が甲になった日から、私を1月に一度呼び出しては柱にならないか誘ってくるんだよ?
頼むから私の気持ちも理解してほしい
ちなみに何故私が柱になりたくないのかというと、柱は怖いらしいから
私は怖い人が苦手なんだよ……
そう考えていると、お館様は言葉を続けた
「ああ、また今日も断られてしまったね。それにしても、楓はいつもそんなに元気なのかい?」
元気……?ああ、私が必死に断ったからか
『あはは……』
そう考えつつ、私は乾いた笑いを漏らす
困った時は笑ってごまかすのが良いよね!……多分
そうして私達の間には和やかな時間が流れていく
するとお館様は表情を変えて話し出した
「もちろん、楓に柱になってほしいという気持ちはあるけれど……今日は別のお願いがあって君を呼んだんだよ」
別のお願い……?一体、何だろう
私が首を傾げていると、お館様は穏やかな声色で言葉を続けた
「始まりの呼吸の剣士の子孫の面倒を見て欲しいんだ」
……ん?
始まりの呼吸とは何だろう
私が疑問を浮かべていると、お館様はその疑問を解消してくださった
「ああ、楓は始まりの呼吸について知らなかったんだったね。説明しよう」
そうしてお館様の口から紡ぎ出されたのは、衝撃の内容だった……
──────
お館様は分かりやすく説明してくださった
始まりの呼吸とは、言葉通り全ての呼吸の元となった呼吸らしい
全ての呼吸はその始まりの呼吸から派生しているようだ
私は思わず口をあんぐりと開けたくなった
……だって、そんな凄い呼吸を編み出した人の子孫だよ?
私みたいな一般隊士じゃなくて、それこそ柱の人とかが面倒を見た方が良いんじゃ……
そう考えていると、お館様の口からまたまた衝撃の内容が飛び出てくる
「ああ、実はその子はね、霞柱になったんだ」
は?霞柱ってことは……上官じゃないか!
私の顔が青ざめていく
どうして私が上官の面倒を!?
1人おろおろしている私
しかし、そんな私を見てもお館様はにこやかな表情のままだ
いや、私は本気で困ってるんですよ、お館様……
だって、柱って怖い人の集まりなんでしょ?(※違います)
私、怖い人の面倒なんて見られませんよ……
あ、泣きそう
ていうか私が使う呼吸は霞の呼吸だから、既に柱の席は埋まっているじゃないか!
面倒を見ると言ってもどうやってするのだろう……
私の頭の仲がこんがらがっていく
するとお館様はこう仰った
「ああ、そうだ。楓は頑なに柱になるのを断っているからね。無一郎……霞柱の継子になって、彼の屋敷で暮らしてほしい。それなら面倒が見られるし、(名前)は柱にならずに済むだろう?」
お館様のまさかの提案に私は膝から崩れ落ちそうになった
勿論、絶望してだよ!!
いや、そもそも座っているからそんなことできないけど
あくまで例えね
……怖い人と同じ屋敷で暮らすのは厳しいけど……
私、組織で1番偉い人であるお館様のお願いを断り続けてる奴だからな……
ここは腹を括ろう
『……つちゅっ……ゴホン!謹んでお受けいたします』
うわ、最悪
謹んでを噛んじゃったよ……恥ずかしい
ちらりとお館様の様子を窺うと、穏やかないつも通りの笑みをたたえたままだ
それが余計に私の顔に熱を集める原因になった
今の私は羞恥心で埋め尽くされているだろう
くっ……これも全部怖い人のせいだ!(八つ当たり)
こうして私は印象最悪なまま、霞柱……師範に会うことになった
──────
現在、私は霞柱邸の目の前にいる
『うわ……広すぎ。お掃除大変そう』
これ、多分勝手に入っちゃ駄目なやつだよね
1人で考え込んでいると、誰かに後ろから声を掛けられた
「ねえ、そこの君……僕の屋敷の前で何してるの?」
私は反射的に後ろを向く
そこには長い黒髪と浅葱色の瞳を持つ整った顔立ちの人物がいた
え、まさか霞柱ってこの女の子?
あれ、でも僕って言ってるし……まさか男の子!?
びっくりした~
一瞬女の子かと思った……
というか、返事をしなければ
我に返った私は、早速言葉を返す
『霞柱様、初めまして。階級甲、鉄穴森楓と申します。お館様の命で、今日から霞柱様の継子になりました』
私の言葉を聞いた霞柱様は顎に手を添える
それから少しすると口を開いた
「ああ、思い出した。お館様が仰っていた子って君だったんだね。僕は時透無一郎。多分君のことはすぐ忘れるから、まあ好きなように過ごしてよ」
そう言い残すと、すたすたと歩いてどこかに行ってしまった
……は?
すぐ忘れる?
一体どういう事だろう
もしかして、私拒絶された?
その時私の中で何かが弾けた
……ムカつく!!
いくら柱だからって!!
私みたいな平隊士のことなんか覚える価値もないって!?(※言ってません)
悔しぃぃ
あの餓鬼を見返してやる!!
こうして過去の私は色々と勘違いして師範と仲良くなる(?)為に奮闘を始めたのだった
──────
霞柱にボロクソ言われてから、私は霞柱邸のお掃除をしている
(※言われてません)
私、こう見えても綺麗好きだからね!
それに家事も一通りできるし、これであいつを見返してやる!
私は台所の掃除もしようと思い、そこへ向かった
するとなんと、台所には大量の大根が……
『……え?なにこれ……良いじゃん!!』
私は明るい声色で呟く
そう、実は私は大根が大好き!
好きな食べ物は大根を使った料理全部という程大根が大好きなのだ
『今日は大根を使った料理をたくさん作るぞ~!!』
霞柱は好きにすれば良いって言ってたし、存分に暴れてやる!!
こうして私は台所の掃除を済ませた後、夕餉の支度に取り掛かった
──────
『うーん……ちょっと作りすぎちゃったかも?あはは……』
食卓には大量の大根料理が並んでいる
でも栄養は偏ってないし大丈夫なはずだ、うん
そう考えていると、霞柱が帰って来た
彼はこちらまでやって来ると、ポツリと呟く
「……これ、君が作ったの?」
『はい、そうですよ!師範』
一応継子なので師範と呼んでみる
霞柱……師範はまじまじと私が作った料理を見ている
「うん、良いと思うよ。さっさと食べよう」
あ、あの師範が……私を褒めた!?
人に向かってすぐ忘れるとか言ったと思ったら料理を褒めるとか、よく分からない人だな……
そう考えつつ、私と師範は一緒に食事を食べ始める
私はちらりと師範の方を一瞥する
彼は大根料理の中でも特にふろふき大根を美味しそうに頬張っている
その様子が気になった私は、私はとにかく師範を見つめ続けることにした
顔は整ってるんだから、喋らなければかっこいいのに……
なんて、私は失礼なことを考えながら視線を送り続けているが、師範はそんな私に気づかない程料理に夢中になっている
なんか、ちょっとかわいいかも
なんて思ったのは私の秘密だ
師範は私の料理を全て綺麗に食べてくれた
私が後片付けを終えると、師範から話があると言われる
一体どうしたのだろう
そう思っていると、師範に話しかけられる
「僕、人のことを覚えることができないんだ」
師範はポツリと語り出した
なるほど、だから忘れるかもしれないと私に言ったのか
そう考えると、胸の中にあった怒りと疑問は消えていった
「でもね……何故か君のことは忘れなかったんだ。何でだろうね?」
首を傾げながら私にそう尋ねる師範
確かにそれは気になるが……
『それよりも、私のことを覚えていられるっていうのが良いことじゃないですか!これからよろしくお願いしますね!』
すっかり師範に絆された過去の私は満面の笑みでこう答えた……
──────
ということがあり、私と師範の距離はどんどん縮まった
しかし、あまりにも距離が近すぎるので困りどころだ
師範の前ではつい私の素が出てしまう
……そう、私は所謂毒舌だ
思ったことを全部素直に言ってしまうので、周囲からは毒舌家と呼ばれることが多い
あれから師範の状態について、彼自身の口から詳しく聞くことになった
〝「僕、昔の記憶がないらしいんだ。まあ、思い出せたとしてもすぐ忘れるからどうでもいいけど」〟
その言葉を聞いた時、私は絶句した
自分よりも年下の、14歳の少年が背負うには悲しすぎる運命だ
身勝手だが、彼が望まなくとも、いつか全てを思い出してほしいと思った
お館様が師範の面倒を見て欲しいと私にお願いした理由は、彼の状態を思ってのことだったのかもしれない
それにしてもこの距離は困りものだが……
私は師範を引きはがした後、彼を無視して任務に向かう
でもね、師範
貴方とこうしてじゃれ合ってる時間も意外と楽しいんですよ
……なんて、貴方には絶対に言いませんけどね
『あのー師範?いつまでそうしてるつもりなんですか?』
私、楓は現在進行形で師範である時透無一郎に抱き着かれている
「……僕が満足するまで」
そうポツリと呟いた師範
私は師範よりも背が高いのでちょうど私の胸元に彼の顔が……
こいつ、何してんだ
『師範、ちゃっかり私の胸に顔を埋めてるのは分かってるんですよ。とっとと離れやがれください』
すると師範は顔を上げて上目遣いでこちらを見てくる
その瞳はうるうるしていて……何だか子犬みたいだ
その顔でこの表情は反則だろう
恐らくほとんどの乙女はこの顔でやられる
でも、私は……
『っ、だからぁ、とっと離れろぉぉぉ!!!!私は今から任務なの!!』
私は馬鹿力で師範の腕を無理やり自分の体から引きはがす
慣れているので、彼に怪我をさせることはない
そう、私はこの状況にあまりにも慣れすぎているのだ
この日々が始まったのは、お館様からのお願いがきっかけだ……
──────
数か月前のある日、私はお館様に呼び出されていた
「やあ、楓……ところで柱に」
『っ!なりませんってばぁぁ!!』
私は思いっきりお館様のお言葉を遮る
いや、かなりの不敬なのは分かっている
でも、お館様は私の階級が甲になった日から、私を1月に一度呼び出しては柱にならないか誘ってくるんだよ?
頼むから私の気持ちも理解してほしい
ちなみに何故私が柱になりたくないのかというと、柱は怖いらしいから
私は怖い人が苦手なんだよ……
そう考えていると、お館様は言葉を続けた
「ああ、また今日も断られてしまったね。それにしても、楓はいつもそんなに元気なのかい?」
元気……?ああ、私が必死に断ったからか
『あはは……』
そう考えつつ、私は乾いた笑いを漏らす
困った時は笑ってごまかすのが良いよね!……多分
そうして私達の間には和やかな時間が流れていく
するとお館様は表情を変えて話し出した
「もちろん、楓に柱になってほしいという気持ちはあるけれど……今日は別のお願いがあって君を呼んだんだよ」
別のお願い……?一体、何だろう
私が首を傾げていると、お館様は穏やかな声色で言葉を続けた
「始まりの呼吸の剣士の子孫の面倒を見て欲しいんだ」
……ん?
始まりの呼吸とは何だろう
私が疑問を浮かべていると、お館様はその疑問を解消してくださった
「ああ、楓は始まりの呼吸について知らなかったんだったね。説明しよう」
そうしてお館様の口から紡ぎ出されたのは、衝撃の内容だった……
──────
お館様は分かりやすく説明してくださった
始まりの呼吸とは、言葉通り全ての呼吸の元となった呼吸らしい
全ての呼吸はその始まりの呼吸から派生しているようだ
私は思わず口をあんぐりと開けたくなった
……だって、そんな凄い呼吸を編み出した人の子孫だよ?
私みたいな一般隊士じゃなくて、それこそ柱の人とかが面倒を見た方が良いんじゃ……
そう考えていると、お館様の口からまたまた衝撃の内容が飛び出てくる
「ああ、実はその子はね、霞柱になったんだ」
は?霞柱ってことは……上官じゃないか!
私の顔が青ざめていく
どうして私が上官の面倒を!?
1人おろおろしている私
しかし、そんな私を見てもお館様はにこやかな表情のままだ
いや、私は本気で困ってるんですよ、お館様……
だって、柱って怖い人の集まりなんでしょ?(※違います)
私、怖い人の面倒なんて見られませんよ……
あ、泣きそう
ていうか私が使う呼吸は霞の呼吸だから、既に柱の席は埋まっているじゃないか!
面倒を見ると言ってもどうやってするのだろう……
私の頭の仲がこんがらがっていく
するとお館様はこう仰った
「ああ、そうだ。楓は頑なに柱になるのを断っているからね。無一郎……霞柱の継子になって、彼の屋敷で暮らしてほしい。それなら面倒が見られるし、(名前)は柱にならずに済むだろう?」
お館様のまさかの提案に私は膝から崩れ落ちそうになった
勿論、絶望してだよ!!
いや、そもそも座っているからそんなことできないけど
あくまで例えね
……怖い人と同じ屋敷で暮らすのは厳しいけど……
私、組織で1番偉い人であるお館様のお願いを断り続けてる奴だからな……
ここは腹を括ろう
『……つちゅっ……ゴホン!謹んでお受けいたします』
うわ、最悪
謹んでを噛んじゃったよ……恥ずかしい
ちらりとお館様の様子を窺うと、穏やかないつも通りの笑みをたたえたままだ
それが余計に私の顔に熱を集める原因になった
今の私は羞恥心で埋め尽くされているだろう
くっ……これも全部怖い人のせいだ!(八つ当たり)
こうして私は印象最悪なまま、霞柱……師範に会うことになった
──────
現在、私は霞柱邸の目の前にいる
『うわ……広すぎ。お掃除大変そう』
これ、多分勝手に入っちゃ駄目なやつだよね
1人で考え込んでいると、誰かに後ろから声を掛けられた
「ねえ、そこの君……僕の屋敷の前で何してるの?」
私は反射的に後ろを向く
そこには長い黒髪と浅葱色の瞳を持つ整った顔立ちの人物がいた
え、まさか霞柱ってこの女の子?
あれ、でも僕って言ってるし……まさか男の子!?
びっくりした~
一瞬女の子かと思った……
というか、返事をしなければ
我に返った私は、早速言葉を返す
『霞柱様、初めまして。階級甲、鉄穴森楓と申します。お館様の命で、今日から霞柱様の継子になりました』
私の言葉を聞いた霞柱様は顎に手を添える
それから少しすると口を開いた
「ああ、思い出した。お館様が仰っていた子って君だったんだね。僕は時透無一郎。多分君のことはすぐ忘れるから、まあ好きなように過ごしてよ」
そう言い残すと、すたすたと歩いてどこかに行ってしまった
……は?
すぐ忘れる?
一体どういう事だろう
もしかして、私拒絶された?
その時私の中で何かが弾けた
……ムカつく!!
いくら柱だからって!!
私みたいな平隊士のことなんか覚える価値もないって!?(※言ってません)
悔しぃぃ
あの餓鬼を見返してやる!!
こうして過去の私は色々と勘違いして師範と仲良くなる(?)為に奮闘を始めたのだった
──────
霞柱にボロクソ言われてから、私は霞柱邸のお掃除をしている
(※言われてません)
私、こう見えても綺麗好きだからね!
それに家事も一通りできるし、これであいつを見返してやる!
私は台所の掃除もしようと思い、そこへ向かった
するとなんと、台所には大量の大根が……
『……え?なにこれ……良いじゃん!!』
私は明るい声色で呟く
そう、実は私は大根が大好き!
好きな食べ物は大根を使った料理全部という程大根が大好きなのだ
『今日は大根を使った料理をたくさん作るぞ~!!』
霞柱は好きにすれば良いって言ってたし、存分に暴れてやる!!
こうして私は台所の掃除を済ませた後、夕餉の支度に取り掛かった
──────
『うーん……ちょっと作りすぎちゃったかも?あはは……』
食卓には大量の大根料理が並んでいる
でも栄養は偏ってないし大丈夫なはずだ、うん
そう考えていると、霞柱が帰って来た
彼はこちらまでやって来ると、ポツリと呟く
「……これ、君が作ったの?」
『はい、そうですよ!師範』
一応継子なので師範と呼んでみる
霞柱……師範はまじまじと私が作った料理を見ている
「うん、良いと思うよ。さっさと食べよう」
あ、あの師範が……私を褒めた!?
人に向かってすぐ忘れるとか言ったと思ったら料理を褒めるとか、よく分からない人だな……
そう考えつつ、私と師範は一緒に食事を食べ始める
私はちらりと師範の方を一瞥する
彼は大根料理の中でも特にふろふき大根を美味しそうに頬張っている
その様子が気になった私は、私はとにかく師範を見つめ続けることにした
顔は整ってるんだから、喋らなければかっこいいのに……
なんて、私は失礼なことを考えながら視線を送り続けているが、師範はそんな私に気づかない程料理に夢中になっている
なんか、ちょっとかわいいかも
なんて思ったのは私の秘密だ
師範は私の料理を全て綺麗に食べてくれた
私が後片付けを終えると、師範から話があると言われる
一体どうしたのだろう
そう思っていると、師範に話しかけられる
「僕、人のことを覚えることができないんだ」
師範はポツリと語り出した
なるほど、だから忘れるかもしれないと私に言ったのか
そう考えると、胸の中にあった怒りと疑問は消えていった
「でもね……何故か君のことは忘れなかったんだ。何でだろうね?」
首を傾げながら私にそう尋ねる師範
確かにそれは気になるが……
『それよりも、私のことを覚えていられるっていうのが良いことじゃないですか!これからよろしくお願いしますね!』
すっかり師範に絆された過去の私は満面の笑みでこう答えた……
──────
ということがあり、私と師範の距離はどんどん縮まった
しかし、あまりにも距離が近すぎるので困りどころだ
師範の前ではつい私の素が出てしまう
……そう、私は所謂毒舌だ
思ったことを全部素直に言ってしまうので、周囲からは毒舌家と呼ばれることが多い
あれから師範の状態について、彼自身の口から詳しく聞くことになった
〝「僕、昔の記憶がないらしいんだ。まあ、思い出せたとしてもすぐ忘れるからどうでもいいけど」〟
その言葉を聞いた時、私は絶句した
自分よりも年下の、14歳の少年が背負うには悲しすぎる運命だ
身勝手だが、彼が望まなくとも、いつか全てを思い出してほしいと思った
お館様が師範の面倒を見て欲しいと私にお願いした理由は、彼の状態を思ってのことだったのかもしれない
それにしてもこの距離は困りものだが……
私は師範を引きはがした後、彼を無視して任務に向かう
でもね、師範
貴方とこうしてじゃれ合ってる時間も意外と楽しいんですよ
……なんて、貴方には絶対に言いませんけどね
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