第1章 決意と旅立ち
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
藤宮さんに抱きしめてもらっているうちに少しずつ落ち着いてきた
涙もおさまっていく
『……すみません、お見苦しいところをお見せしました……急に泣き出して驚ろかせてしまいましたね』
私が謝罪を口にすると
「いいえ、良いのよ。涙が出てきたのは何か事情があるのでしょう?……もし良かったら、聞かせてもらえるかしら」
藤宮さんの瞳を見る
曇りのない、真摯な目だった
『……分かりました、お話します』
──────
私は数日前自分の身に起きたことを説明する
前世の記憶があることは伏せたがそれ以外はすべて話した
『私はそういった形で家族を亡くしたばかりなので、伯母の話題に過敏になっていたのかもしれません』
私は自分を責めていた
しかしこの命は両親が守ってくれたもの
それなのに自分で自分を追い詰めるのは両親の侮辱と同じだ
私は両親が命を懸けて守り抜いてくれた自分の人生を精一杯生き抜こうと考えていた
だが、そう決意しても私の心の中には罪悪感があって、無意識のうちに自分を攻撃していたのだ
伯母も他者の幸せを守る為に行動し、命を落とした
藤宮さんの話を聞いている内に両親と伯母が私の中で重なったのだろう
「……そうだったの。だから1人で……」
私の背中に回っている藤宮さんの腕の力が強くなる
「楓ちゃん……他人に何か言われても嬉しくはないでしょうけど、これだけは言わせて。貴女は、何も悪くないのよ」
〝何も悪くない〟
たった一言
それでもこれはただの慰めではない
きっと私が心の何処かで欲しがっていた言葉だ
『……ありがとう、ございますっ……』
私はまた泣き出してしまい藤宮さんにひたすらお礼を言う事しかできなかった
そんな私の背中を藤宮さんは無言でさすってくれていた……
──────
それから少し時間が経ち、ようやく涙がおさまった
『その……色々とありがとうございました』
先程からお礼を言ってばかりだ
「いえ、落ち着いたようで良かったわ。けれど、ご両親を亡くしたばかりで大変なことも多いでしょう。良かったら私と一緒にこの家で暮らさない?」
藤宮さんと一緒に暮らす……
「大丈夫よ。夕餉の時も言ったけれど私、お金には余裕があるの。貴女はまだ子供だし、大人の庇護下を受けた方が良いでしょう」
それはその通りだ
便利屋のようなことをしてもお小遣い稼ぎくらいにしかならないかもしれない
それでも……
『申し訳ありません。ありがたいお話ですが、お断りさせていただきます』
私は藤宮さんの提案を断った
「……理由を聞いても良いかしら?」
それは当然だ
悪意があるわけではない、純粋な厚意からの提案
それを断るという事はそれなりの理由があるからだ
『私は幸運なことに鬼殺の才に恵まれているようです。私はこの力を生かしてやりたいことがあるのです。両親にも誓いました。ですので、普通の子供として生きるのは諦めています。せっかくのご厚意を無下にしてしまい、申し訳ありません』
正座をした状態で頭を下げる
『…………』
理由を言い終えてから、頭を上げる
その後少しの間沈黙が続いた
その沈黙を破ったのは……
『「えっと……/そう……」』
2人同時だった
『あ、すみません。何かお話しようとされていましたよね』
まさか2人同時に声を上げるとは
私は藤宮さんの言葉を待つ
「ええ。じゃあ、私が先に話すわね」
そう言うと、藤宮さんは言葉を続ける
「私はそれが楓ちゃんの意志ならば、尊重するわ。けれど鬼殺の道は辛く、苦しい。それを承知の上だというのならば、私から言うことは何もないわ」
藤宮さんの言葉は正しい
私とて、鬼殺の才が少しあるからといってそれに胡坐をかくつもりはない
厳しい道であることは重々承知だ
『はい。全て覚悟の上です』
そう返事をすると、藤宮さんは少し眉を下げて微笑んだ
「楓ちゃんは、強いわね……分かったわ。でも、援助だけはさせて頂戴。貴女はまだ子供なのよ。大人の助けが必要な時期なの。急いで大人になる必要はないのよ」
そう私に言った藤宮さんの瞳には涙がにじんでいた
本気で私の心配をしてくれていることがよく分かる
『はい……ありがとうございます』
私の口角は自然と上がり、笑顔になる
両親を亡くしてから心からの笑顔を浮かべたのは、今日が初めてだ
「素敵な笑顔ね……そう言えば、何か話そうとしていたわよね。今から聞かせてくれる?」
藤宮さんはそう呟く
確かに私は話をしようとして、たまたま藤宮さんと被った
しかし話そうとしたことは鬼殺の道へ進む自分の決意だったので、もう既に話し終えている
何を話そうか考えていると、ふと思い出す
そうだ、私が藤宮さんのお名前を褒めた時、彼女は笑っていた
その理由を聞こうか
『既に話したいことは先程言えたので、あまり関係ないですが……』
私はそう前置きし、質問をする
すると藤宮さんは一瞬きょとんとした表情を浮かべたが、すぐに話してくれた
「ああ、それはね……貴女の伯母様である千絵ちゃんも私に同じことを言ったからよ〝『素敵なお名前ね!可憐な雰囲気の貴女にぴったりだわ』〟ってね……それで楓ちゃんと千絵ちゃんが重なったからよ」
『そうだったんですか……』
私は納得した
あの時の藤宮さんは何かを懐かしむような瞳をしていたから……
きっと私を通して伯母が見えたのだろう
その後は藤宮さんと談笑をしている内に時間が経った
私は寝る支度をし、すぐに眠りへと誘われた
──────
既に身支度を整え、朝餉を済ませた
私はまた鬼殺の旅に戻る
『昨日は本当にありがとうございました』
私がそう藤宮さんにお礼を言うと彼女は柔らかな笑顔を返してくれた
「こちらこそ。楓ちゃん、ご武運を。いつでもここに戻ってきて良いからね。歓迎するわ」
そして藤宮さんは私を抱きしめてくれた
『っ、はい!ありがとうございます』
いつもよりも明るい声が出た
ああ、人のぬくもりは、こんなにも……
『では、行ってきます』
最後にそう返し、私は藤宮さんの家を出る
彼女はずっと手を振ってくれているので、私も振り返す
両親を亡くした翌日も、新たな決意と共に家を出た
それでもあの時は重苦しい気分で、泣き叫びたかった
そうしないと壊れてしまいそうで
それでも私は泣けなかった
誓ったから
私達のような人を少しでも減らすことを
なのに今はこんなにも気持ちが軽い
不思議だ
晴れやかな気分で私は歩く速度を速めた
涙もおさまっていく
『……すみません、お見苦しいところをお見せしました……急に泣き出して驚ろかせてしまいましたね』
私が謝罪を口にすると
「いいえ、良いのよ。涙が出てきたのは何か事情があるのでしょう?……もし良かったら、聞かせてもらえるかしら」
藤宮さんの瞳を見る
曇りのない、真摯な目だった
『……分かりました、お話します』
──────
私は数日前自分の身に起きたことを説明する
前世の記憶があることは伏せたがそれ以外はすべて話した
『私はそういった形で家族を亡くしたばかりなので、伯母の話題に過敏になっていたのかもしれません』
私は自分を責めていた
しかしこの命は両親が守ってくれたもの
それなのに自分で自分を追い詰めるのは両親の侮辱と同じだ
私は両親が命を懸けて守り抜いてくれた自分の人生を精一杯生き抜こうと考えていた
だが、そう決意しても私の心の中には罪悪感があって、無意識のうちに自分を攻撃していたのだ
伯母も他者の幸せを守る為に行動し、命を落とした
藤宮さんの話を聞いている内に両親と伯母が私の中で重なったのだろう
「……そうだったの。だから1人で……」
私の背中に回っている藤宮さんの腕の力が強くなる
「楓ちゃん……他人に何か言われても嬉しくはないでしょうけど、これだけは言わせて。貴女は、何も悪くないのよ」
〝何も悪くない〟
たった一言
それでもこれはただの慰めではない
きっと私が心の何処かで欲しがっていた言葉だ
『……ありがとう、ございますっ……』
私はまた泣き出してしまい藤宮さんにひたすらお礼を言う事しかできなかった
そんな私の背中を藤宮さんは無言でさすってくれていた……
──────
それから少し時間が経ち、ようやく涙がおさまった
『その……色々とありがとうございました』
先程からお礼を言ってばかりだ
「いえ、落ち着いたようで良かったわ。けれど、ご両親を亡くしたばかりで大変なことも多いでしょう。良かったら私と一緒にこの家で暮らさない?」
藤宮さんと一緒に暮らす……
「大丈夫よ。夕餉の時も言ったけれど私、お金には余裕があるの。貴女はまだ子供だし、大人の庇護下を受けた方が良いでしょう」
それはその通りだ
便利屋のようなことをしてもお小遣い稼ぎくらいにしかならないかもしれない
それでも……
『申し訳ありません。ありがたいお話ですが、お断りさせていただきます』
私は藤宮さんの提案を断った
「……理由を聞いても良いかしら?」
それは当然だ
悪意があるわけではない、純粋な厚意からの提案
それを断るという事はそれなりの理由があるからだ
『私は幸運なことに鬼殺の才に恵まれているようです。私はこの力を生かしてやりたいことがあるのです。両親にも誓いました。ですので、普通の子供として生きるのは諦めています。せっかくのご厚意を無下にしてしまい、申し訳ありません』
正座をした状態で頭を下げる
『…………』
理由を言い終えてから、頭を上げる
その後少しの間沈黙が続いた
その沈黙を破ったのは……
『「えっと……/そう……」』
2人同時だった
『あ、すみません。何かお話しようとされていましたよね』
まさか2人同時に声を上げるとは
私は藤宮さんの言葉を待つ
「ええ。じゃあ、私が先に話すわね」
そう言うと、藤宮さんは言葉を続ける
「私はそれが楓ちゃんの意志ならば、尊重するわ。けれど鬼殺の道は辛く、苦しい。それを承知の上だというのならば、私から言うことは何もないわ」
藤宮さんの言葉は正しい
私とて、鬼殺の才が少しあるからといってそれに胡坐をかくつもりはない
厳しい道であることは重々承知だ
『はい。全て覚悟の上です』
そう返事をすると、藤宮さんは少し眉を下げて微笑んだ
「楓ちゃんは、強いわね……分かったわ。でも、援助だけはさせて頂戴。貴女はまだ子供なのよ。大人の助けが必要な時期なの。急いで大人になる必要はないのよ」
そう私に言った藤宮さんの瞳には涙がにじんでいた
本気で私の心配をしてくれていることがよく分かる
『はい……ありがとうございます』
私の口角は自然と上がり、笑顔になる
両親を亡くしてから心からの笑顔を浮かべたのは、今日が初めてだ
「素敵な笑顔ね……そう言えば、何か話そうとしていたわよね。今から聞かせてくれる?」
藤宮さんはそう呟く
確かに私は話をしようとして、たまたま藤宮さんと被った
しかし話そうとしたことは鬼殺の道へ進む自分の決意だったので、もう既に話し終えている
何を話そうか考えていると、ふと思い出す
そうだ、私が藤宮さんのお名前を褒めた時、彼女は笑っていた
その理由を聞こうか
『既に話したいことは先程言えたので、あまり関係ないですが……』
私はそう前置きし、質問をする
すると藤宮さんは一瞬きょとんとした表情を浮かべたが、すぐに話してくれた
「ああ、それはね……貴女の伯母様である千絵ちゃんも私に同じことを言ったからよ〝『素敵なお名前ね!可憐な雰囲気の貴女にぴったりだわ』〟ってね……それで楓ちゃんと千絵ちゃんが重なったからよ」
『そうだったんですか……』
私は納得した
あの時の藤宮さんは何かを懐かしむような瞳をしていたから……
きっと私を通して伯母が見えたのだろう
その後は藤宮さんと談笑をしている内に時間が経った
私は寝る支度をし、すぐに眠りへと誘われた
──────
既に身支度を整え、朝餉を済ませた
私はまた鬼殺の旅に戻る
『昨日は本当にありがとうございました』
私がそう藤宮さんにお礼を言うと彼女は柔らかな笑顔を返してくれた
「こちらこそ。楓ちゃん、ご武運を。いつでもここに戻ってきて良いからね。歓迎するわ」
そして藤宮さんは私を抱きしめてくれた
『っ、はい!ありがとうございます』
いつもよりも明るい声が出た
ああ、人のぬくもりは、こんなにも……
『では、行ってきます』
最後にそう返し、私は藤宮さんの家を出る
彼女はずっと手を振ってくれているので、私も振り返す
両親を亡くした翌日も、新たな決意と共に家を出た
それでもあの時は重苦しい気分で、泣き叫びたかった
そうしないと壊れてしまいそうで
それでも私は泣けなかった
誓ったから
私達のような人を少しでも減らすことを
なのに今はこんなにも気持ちが軽い
不思議だ
晴れやかな気分で私は歩く速度を速めた