第1章 決意と旅立ち
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「俺、大家族の末っ子だったんだ」
伊織さんはポツリと語りだした
「俺には生まれた時から前世の記憶があったんだけど、俺の記憶は知識だけだった。対人関係の記憶や、前世の自分のことは一切覚えていなかったんだ」
つまり、知識はあっても心は普通の子供だったということか
私とは少し違うようだ
「……普通の子供なのに訳が分からないことを話し出すものだから、相当気味悪かっただろうな」
そう自嘲気味に言うと、ふっと笑った
そんな……
ここまで聞けば分かる
伊織さんは……
「俺は、捨てられたよ。真冬の凍えそうなくらい寒い日にね」
私は下唇を噛む
この時代、子供の人権はあまり重視されていない
前世の感覚では子供を捨てるなど、最低最悪の行為だと世間からも認識される
しかしこの時代はそうでもないのだ
「あの時の俺はさ、いつか親が迎えに来てくれると思ってたんだ。そんな訳ないのにな。そこを師匠……父さんに拾われたんだ」
親に捨てられる……
伊織さんの前世の感覚がどのようなものかは分からない
それでも当時の伊織さんからしたら、相当辛いものだっただろう
「そんな俺だからさ、人の言葉には敏感なんだ。その言葉が嘘かどうかくらい分かる。それに楓さんは嘘を吐かないだろ?って、会ってすぐの俺が言うのも変か……」
あはは、と乾いた笑い声を漏らし、人差し指を頬に添えて困り顔をしている
本当に、私の周りには何でこんなに……
一筋の涙が頬を伝った
それを機に涙がどんどん溢れてくる
「伊織……女の子を泣かせたのか……?」
暗く、低い声が聞こえる
殺気が凄い
瑞樹さんの声だ
「えぇっ!?ごめんなさい、楓さん。生意気なことを言ってしまった。どうか忘れてほし……」
伊織さんは謝罪しようとしたが、私が最後まで言わせなかった
『忘れませんっ!……忘れたくなんてないっ……』
そう自分で言うと、ますます涙が溢れてくる
それでも私の気分は心地良い
嬉しかったのだ、きっと
私の全てを受け止めてくれる人がいることが
『伊織さん、ありがとう、ありがとう……私を信じてくれてありがとう……』
私はひたすらお礼を呟く
そんな私の様子を見て、瑞樹さんの殺気はおさまった
視界がぼやけて見えないが、微笑んでくれている気がする
伊織さんも同じだ
……本当に、私の周りには優しい人ばかりだ
しばらくすると、涙はおさまってきた
……それにしても、会ったばかりの人の目の前で泣いてしまうのは2回目だ
藤宮さんのところで泣いた時よりも落ち着くまで時間がかかってしまった
非常に申し訳ない
『お見苦しい姿をお見せして申し訳ありません……』
瑞樹さんと伊織さんに謝罪する
しかしお2人は気にしていないようだ
「泣いた方がすっきりするから、泣きたい分だけ泣けば良い。その分、きっと笑顔になれる日がまた来るから」
伊織さんは私に優しい言葉をかけてくれた
「伊織の言う通りだ。涙は我慢しない方が良い。それに……今の楓ちゃんは記憶を取り戻したことにより精神が不安定になっているようだ」
精神が不安定……旅を始めてまだ数か月ほどだ
確かに記憶が戻ってからは日が浅い
医師である瑞樹さんが私の状態を見てそう言うのだから、ほぼ間違いないだろう
「記憶を途中で取り戻した転生者は精神が不安定になることが多いんだ。診察と治療をおすすめするよ。少しの間、うちに滞在すると良い」
確かに、精神が不安定なままでは旅にも影響が出る
それに私は心身共に健やかな状態でいたい
『分かりました……よろしくお願いします』
そう返事をすると、瑞樹さんは立ち上がった
「じゃあ、診察の準備をしてくるよ。伊織は……そうだな、待っている間暇だろうし、楓ちゃんとお話すると良い!」
にこやかな表情でそう言うと、物凄い勢いで書斎から出ていった
何だか嵐みたいだったな……
そう考えていると、伊織さんに話しかけられた
「そうだ、俺の前世の話でもしようか?楓さんの話だけ聞くのは平等じゃないしな」
確かに、伊織さんの前世の話は気になる
『じゃあ、お願いしようかな……』
勝手に自分と同じ世界から来たのかもしれないと考えていたが、全く違うところから来ていたりして
そう考えていると、伊織さんは話を始めた
「俺は地球っていう星の日本っていう国に住んでて……多分、楓さんと同じ世界だと思うよ」
!驚いた
まさか、本当に同郷だったとは
「俺自身は……年齢が上がるにつれて医者をしていたことは思い出したけど、それ以外は覚えてないかな」
前世の自分の顔、名前、年齢も知らないということだろう
私は何となくではあるが覚えている
前世の自分を知らないというのは、一体どんな感覚なのだろうか
「だから、前世の俺と今世の俺は別人かな」
そうボソリと呟いた
別人なのか……
私は、どちらかというと2つの人格が混ざっているような感覚だ
やはり転生者ごとに違いがあるのだろう
「そして、さっき楓さんが話していた、この世界が創作物の世界だという話だけど……」
私の肩がびくりと跳ね上がる
伊織さんはポツリと語りだした
「俺には生まれた時から前世の記憶があったんだけど、俺の記憶は知識だけだった。対人関係の記憶や、前世の自分のことは一切覚えていなかったんだ」
つまり、知識はあっても心は普通の子供だったということか
私とは少し違うようだ
「……普通の子供なのに訳が分からないことを話し出すものだから、相当気味悪かっただろうな」
そう自嘲気味に言うと、ふっと笑った
そんな……
ここまで聞けば分かる
伊織さんは……
「俺は、捨てられたよ。真冬の凍えそうなくらい寒い日にね」
私は下唇を噛む
この時代、子供の人権はあまり重視されていない
前世の感覚では子供を捨てるなど、最低最悪の行為だと世間からも認識される
しかしこの時代はそうでもないのだ
「あの時の俺はさ、いつか親が迎えに来てくれると思ってたんだ。そんな訳ないのにな。そこを師匠……父さんに拾われたんだ」
親に捨てられる……
伊織さんの前世の感覚がどのようなものかは分からない
それでも当時の伊織さんからしたら、相当辛いものだっただろう
「そんな俺だからさ、人の言葉には敏感なんだ。その言葉が嘘かどうかくらい分かる。それに楓さんは嘘を吐かないだろ?って、会ってすぐの俺が言うのも変か……」
あはは、と乾いた笑い声を漏らし、人差し指を頬に添えて困り顔をしている
本当に、私の周りには何でこんなに……
一筋の涙が頬を伝った
それを機に涙がどんどん溢れてくる
「伊織……女の子を泣かせたのか……?」
暗く、低い声が聞こえる
殺気が凄い
瑞樹さんの声だ
「えぇっ!?ごめんなさい、楓さん。生意気なことを言ってしまった。どうか忘れてほし……」
伊織さんは謝罪しようとしたが、私が最後まで言わせなかった
『忘れませんっ!……忘れたくなんてないっ……』
そう自分で言うと、ますます涙が溢れてくる
それでも私の気分は心地良い
嬉しかったのだ、きっと
私の全てを受け止めてくれる人がいることが
『伊織さん、ありがとう、ありがとう……私を信じてくれてありがとう……』
私はひたすらお礼を呟く
そんな私の様子を見て、瑞樹さんの殺気はおさまった
視界がぼやけて見えないが、微笑んでくれている気がする
伊織さんも同じだ
……本当に、私の周りには優しい人ばかりだ
しばらくすると、涙はおさまってきた
……それにしても、会ったばかりの人の目の前で泣いてしまうのは2回目だ
藤宮さんのところで泣いた時よりも落ち着くまで時間がかかってしまった
非常に申し訳ない
『お見苦しい姿をお見せして申し訳ありません……』
瑞樹さんと伊織さんに謝罪する
しかしお2人は気にしていないようだ
「泣いた方がすっきりするから、泣きたい分だけ泣けば良い。その分、きっと笑顔になれる日がまた来るから」
伊織さんは私に優しい言葉をかけてくれた
「伊織の言う通りだ。涙は我慢しない方が良い。それに……今の楓ちゃんは記憶を取り戻したことにより精神が不安定になっているようだ」
精神が不安定……旅を始めてまだ数か月ほどだ
確かに記憶が戻ってからは日が浅い
医師である瑞樹さんが私の状態を見てそう言うのだから、ほぼ間違いないだろう
「記憶を途中で取り戻した転生者は精神が不安定になることが多いんだ。診察と治療をおすすめするよ。少しの間、うちに滞在すると良い」
確かに、精神が不安定なままでは旅にも影響が出る
それに私は心身共に健やかな状態でいたい
『分かりました……よろしくお願いします』
そう返事をすると、瑞樹さんは立ち上がった
「じゃあ、診察の準備をしてくるよ。伊織は……そうだな、待っている間暇だろうし、楓ちゃんとお話すると良い!」
にこやかな表情でそう言うと、物凄い勢いで書斎から出ていった
何だか嵐みたいだったな……
そう考えていると、伊織さんに話しかけられた
「そうだ、俺の前世の話でもしようか?楓さんの話だけ聞くのは平等じゃないしな」
確かに、伊織さんの前世の話は気になる
『じゃあ、お願いしようかな……』
勝手に自分と同じ世界から来たのかもしれないと考えていたが、全く違うところから来ていたりして
そう考えていると、伊織さんは話を始めた
「俺は地球っていう星の日本っていう国に住んでて……多分、楓さんと同じ世界だと思うよ」
!驚いた
まさか、本当に同郷だったとは
「俺自身は……年齢が上がるにつれて医者をしていたことは思い出したけど、それ以外は覚えてないかな」
前世の自分の顔、名前、年齢も知らないということだろう
私は何となくではあるが覚えている
前世の自分を知らないというのは、一体どんな感覚なのだろうか
「だから、前世の俺と今世の俺は別人かな」
そうボソリと呟いた
別人なのか……
私は、どちらかというと2つの人格が混ざっているような感覚だ
やはり転生者ごとに違いがあるのだろう
「そして、さっき楓さんが話していた、この世界が創作物の世界だという話だけど……」
私の肩がびくりと跳ね上がる
14/14ページ